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side正義(父)
息子の体調不良と市井くんの苦悩。
イタリアンディナーの翌朝、亮太の家事はいつも通り完璧で、朝食も美味しかった。
だがずっと上の空で、挨拶や会話も生返事だった。
小百合さんネタでつついたら、遅ればせながら亮太に反抗期が来た・・・のか?
そう思いながら私は研究所へと出社した。
研究室に入ると、市井くんが待ち構えていた。
「おはようございます。唐所長。
始業前に申し訳ないのですが、ちょっとお話があります。」
「うん?おはよう、市井くん。
どうしたの、怖い顔して。
何か不正でも見つけた?」
「昨日!退社時間だからって本社さんとのミーティング、放りだして途中で帰ったでしょう!
あの後、本社さん!研究室に居座って面倒くさかったんですからね!
超!超面倒くさかったんですから!!」
「・・・朝から元気だね。」
始業前のこの時間に、このテンション。
凄いよ市井くん。
若さかな。
「本社スタッフが居るときは空気読んで残業しろとか、そんな事言いませんから、帰るなら帰るって先方にお伝えしてから退社して下さい!」
・・・市井くん、何で涙目なんだろう。
「市井くんには帰るって伝えたじゃないか。」
眼精疲労?
研究のしすぎだね。
「俺に言っても仕方ないでしょう!」
「研究以外は面倒でね。
何で研究以外の仕事をしないといけないんだ。
社内外の顧客対応なんて受付か営業の仕事でしょう?
何で私がしないといけないの?」
「営業担当のお客様が来たら、営業職が対応してるじゃないですか。
VIPや本社の視察への対応は所長の仕事です。
唐所長が、この研究所の責任者なんですから!
自覚持って下さい!!」
耳が痛い。正論だ。
市井くんは誤魔化されてくれないな。
そんなこんなでやり取りしていると、言いたいことを言ったからなのか、市井くんにやや冷静さが戻ってきたようだ。
「そうだ。市井くん、私の代わりに所長しない?
推薦したげるよ?」
私より、市井くんの方が所長職に向いてると思うんだ。
「遠慮します。
俺、研究職を天職と思っていますので。」
出世欲無いなぁ。
最近の子って管理職嫌がるよね。
私も嫌だけど。
「・・・収入増えるよ?」
私は管理職手当て無くとも生活に支障は出ないし。
「給料は今で十分頂いています。
管理職とか・・・増える責任がデカすぎて、割に合いませんよ。」
私も管理業務面倒くさいし、そう思う。
「えぇー。市井くんお願いー。」
反論の余地なしだと分かっていても、ちょっと粘ってみる。
まぁ、本社との契約の際、亮太最優先の勤務形態にする条件が、“ 所長職就任 ” だったから代わらせてくれるかは定かでは無いがね。
「可愛く言っても駄目です、全く。
そう言えば昨日どうでした?」
市井くんに断られてしまった。
相変わらず優秀だね、君。
「ん?」
「亮太くんと外食だったんだしょ?
亮太くん喜んでましたか?
どこ行ったんですか?」
「ああ。そこのイタリアンだよ。
たまにランチ行ってるでしょ。」
「・・・意外と近くに居たんですね。」
「ん?うん。
亮太、ペペロンチーノが好きでね。
あそこ大盛りだか・・・
RRRRR
「内線、受付からですね。
そう言えば昨日の本社さん、今日も来るそうですよ。」
RRRRR
「そう、仕方ないな。私が出るよ。」
本社スタッフは私を本社(富山県)へ引っ張りたいようだ。
私は亮太最優先だから東京を離れるのは不可能だと言っているのに。
実現不可能な話を何度も聞く事ほどつまらない物はない。
相手にしたくないが、電話は鳴り止まない。
仕方なく受話器に手を伸ばす。
「はい、第一研究室、唐です。」
『唐所長、外線5番でお電話です。
息子さんの高校の教員様、だそうです。』
高校の教員からの連絡は、亮太が体調不良で休んでいる、と言う物だった。
「あれ、・・・ん?
あの、唐所長、弟から亮太くんの事で俺のスマホにメッセージが来ていまして・・・・」
市井弟くんからも、亮太の事を心配する旨の連絡が市井くんのスマホに来ていた。
つまり、弟くんは“私が研究所に居て、亮太は家で独りだと、知っている。”と言うことだ。
亮太から弟くんへ体調不良の連絡は、弟くんが登校した後だったのだろう。
だから弟くんは、私の出社後の体調変化だと気付いた。
・・・私に連絡が無いところを見ると、単なるサボリかも知れないが、亮太に限って・・・・
どちらにも差し障りない返事をしてから、すぐに帰宅の準備をする。
「市井くん、急用を思い付いたから帰るね。」
「え゛っ、やっぱり帰るんですか?」
本社スタッフなど知ったことか、帰ろう。
すぐに研究所を後にした。
「唐所長ー!本社さん来ましたよー!!」
後ろから何か聞こえた。
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