僕の恋、兄の愛。4

文字の大きさ
上 下
4 / 36
火曜日。

市井兄と迷走。

しおりを挟む

けど・・・

健介たっての希望なら母校の制服を着てホテルでディナー位なら・・・。

・・・。

いや、どう考えてもダメだ。
社会的にもメンタル的にもダメだ。

誰かに見られたらキツい、ドコロじゃない。
死ぬ。
主に俺のメンタルが死ぬ。

・・・でも、体格は高校卒業当時とそう変わってないから、家で昔の高校の制服着る位ならしてもいいかも・・・。

・・・あ。

しまった。

そもそも、高校の制服は卒業時に速攻で捨てたんで制服が無い。

クローゼット狭くなるし、健介メモリー保管場所が狭くなるから要らん。と判断したんだった。

でも健介が期待してるって言うなら・・・。
誰かに借りる・・?
新調する・・?

いやいや、あり得ん、あり得ん。
落ち着け俺。
必要ない、必要ないぞ。

そもそも何で生徒会副会長おうじさま役を俺がしないといけないんだ?
健介が好きなのは俺だろ?
何で二次元に寄せないといけないんだ。

自分の思考の酩酊具合にイライラしていると、微笑みを浮かべた唐所長と目が合った。
アンタの微笑み、怖いんですよ。

「ねぇ、市井くん。
弟くんは、確かに乙女ゲームが好きなんだと思うけど、“登場人物が好き”は違うと思うよ?」

「はい・・・?
いや、でも告白プレゼンテーションで弟に聞き取った時に
『僕の好きなのは~、このキャラ~!この王子様がいい~!』って薦めてくれたんですよ。
本当、恋人の俺が居るってのに・・・。」

「そうじゃ無くて、うーん。
つまりね、弟くんの“王子様”は君だよ、多分ね。
私は、ゲームの王子様に君を重ねて居るように感じたよ。
まるで“王子様の君”を知ってるみたいだって思った。
王族に親戚でも居て、王子様経験でもあるの??」

「んな訳無いでしょうが。
むしろどうやったら経験出来るんですか、ソレ。」

「ふふ、そうだね。
じゃあ、王子の君に会いたい、かな。」

「・・・検討してみます。」

俺が健介の王子様??

嫉妬では無い。
嫉妬ではないが、健介が好きだと言った王子様ふくかいちょうをちらっと調べた事はある。

王子様ふくかいちょうは、豪華な生徒会室のソファで薔薇背負って優雅に紅茶を飲んでいた。

・・・俺の高校生活かこにそんな黒歴史は無い。コーヒーの方が好きだ。

小学生の健介に、高校生の俺は薔薇背負って茶を飲む王子様に見えていた・・・?えぇ?

そして、その王子様になれと唐所長は言っている。え゛ぇ゛?

目眩がしだした。

「市井くんは社会人、弟くんは高校生。
日中は研究しごとと学校でずっと別々だ。
君には出張だってあるから、弟くん寂しいのかもね?」

唐所長のフォローがツライ。

頻回な出張に関して言えば、亮太くん溺愛案件で行きたがらない唐所長じょうしのせいですけどね。

・・・それなら出張減してくれればいいのに、と思わなくもないが、唐所長が、いい笑顔マジコワだったので出張の件はそっとしとこう。

「ね?可愛い奥さんなんでしょ?
してあげなよ、“王子様”。
弟くんきっと喜ぶよ?」

ディナーに招待してくれる唐所長の勧めだし、健介が喜ぶなら、と、クラクラする頭で唐所長の案に乗っかることにした。

決して唐所長の圧力が怖かったからでは無い。

始業に合わせて研究の準備に取りかかる。

・・・取り合えず、仕事しよう。

忘れかけていた、タンコブにアイシングをした。










※唐所長は、自分も“乙女ゲームの王子様キャラ”に大分振り回されたので、振り回され仲間、或いは道連れが欲しい。(切実に)

    
しおりを挟む

処理中です...