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火曜日。
市井兄と迷走。
しおりを挟むけど・・・
健介たっての希望なら母校の制服を着てホテルでディナー位なら・・・。
・・・。
いや、どう考えてもダメだ。
社会的にもメンタル的にもダメだ。
誰かに見られたらキツい、ドコロじゃない。
死ぬ。
主に俺のメンタルが死ぬ。
・・・でも、体格は高校卒業当時とそう変わってないから、家で昔の高校の制服着る位ならしてもいいかも・・・。
・・・あ。
しまった。
そもそも、高校の制服は卒業時に速攻で捨てたんで制服が無い。
クローゼット狭くなるし、健介メモリー保管場所が狭くなるから要らん。と判断したんだった。
でも健介が期待してるって言うなら・・・。
誰かに借りる・・?
新調する・・?
いやいや、あり得ん、あり得ん。
落ち着け俺。
必要ない、必要ないぞ。
そもそも何で生徒会副会長役を俺がしないといけないんだ?
健介が好きなのは俺だろ?
何で二次元に寄せないといけないんだ。
自分の思考の酩酊具合にイライラしていると、微笑みを浮かべた唐所長と目が合った。
アンタの微笑み、怖いんですよ。
「ねぇ、市井くん。
弟くんは、確かに乙女ゲームが好きなんだと思うけど、“登場人物が好き”は違うと思うよ?」
「はい・・・?
いや、でも告白プレゼンテーションで弟に聞き取った時に
『僕の好きなのは~、このキャラ~!この王子様がいい~!』って薦めてくれたんですよ。
本当、恋人の俺が居るってのに・・・。」
「そうじゃ無くて、うーん。
つまりね、弟くんの“王子様”は君だよ、多分ね。
私は、ゲームの王子様に君を重ねて居るように感じたよ。
まるで“王子様の君”を知ってるみたいだって思った。
王族に親戚でも居て、王子様経験でもあるの??」
「んな訳無いでしょうが。
むしろどうやったら経験出来るんですか、ソレ。」
「ふふ、そうだね。
じゃあ、王子の君に会いたい、かな。」
「・・・検討してみます。」
俺が健介の王子様??
嫉妬では無い。
嫉妬ではないが、健介が好きだと言った王子様をちらっと調べた事はある。
王子様は、豪華な生徒会室のソファで薔薇背負って優雅に紅茶を飲んでいた。
・・・俺の高校生活にそんな黒歴史は無い。コーヒーの方が好きだ。
小学生の健介に、高校生の俺は薔薇背負って茶を飲む王子様に見えていた・・・?えぇ?
そして、その王子様になれと唐所長は言っている。え゛ぇ゛?
目眩がしだした。
「市井くんは社会人、弟くんは高校生。
日中は研究と学校でずっと別々だ。
君には出張だってあるから、弟くん寂しいのかもね?」
唐所長のフォローがツライ。
頻回な出張に関して言えば、亮太くん溺愛案件で行きたがらない唐所長のせいですけどね。
・・・それなら出張減してくれればいいのに、と思わなくもないが、唐所長が、いい笑顔だったので出張の件はそっとしとこう。
「ね?可愛い奥さんなんでしょ?
してあげなよ、“王子様”。
弟くんきっと喜ぶよ?」
ディナーに招待してくれる唐所長の勧めだし、健介が喜ぶなら、と、クラクラする頭で唐所長の案に乗っかることにした。
決して唐所長の圧力が怖かったからでは無い。
始業に合わせて研究の準備に取りかかる。
・・・取り合えず、仕事しよう。
忘れかけていた、タンコブにアイシングをした。
※唐所長は、自分も“乙女ゲームの王子様キャラ”に大分振り回されたので、振り回され仲間、或いは道連れが欲しい。(切実に)
応援ありがとうございます!
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