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水曜日昼休み。
市井兄と待ち合わせ。
しおりを挟む◆◆ ◆水曜日 17時過ぎ◆ ◆◆
「市井くん、子供達を待たせちゃ可哀想だし、今日はもう片付けようか。」
と唐所長に声を掛けられて顔を上げると、もう17時を過ぎていた。
集中して作業を進めたお陰で、明日からは次の工程に進めそうだ。
片付けつつ明日の準備を、とモダモダやっていると唐所長に研究室から追い出された。
「弟なら少しくらい待たせても大丈夫ですよ。」
「時間にルーズな男は嫌われるよ。」
笑顔付きだ、何故。
そうか、亮太くん溺愛案件!
亮太くんを待たせるなんて言語道断か・・・スイマセン。
その後、唐所長は早々に研究室を施錠した。
唐所長と並んでロッカールームで着替える。
「市井くん、今日・・・それ?」
昼に届いたタキシードをロッカーから取り出すと唐所長にツッコまれた。
「はい。迷ったんですが王道にしました。」
今日の服装、張り切りすぎだと自分でも気付いている。
健介の事を考えて、“王子様感”が分かり易い、と、タキシードにした。
今までの反省を踏まえ、鏡で出来上がりの確認をする。
髪型もこんなもんなんだろう。多分。
そう、唐所長の『亮太くん溺愛案件』のお礼で貰ったのが、このタキシードだ。
何で亮太くん溺愛案件のお礼が『タキシード』なんだよ、と俺も思った。
でも、系列グループのスタッフに「この度は、急な唐所長不在への市井さんのフォロー、誠にありがとうございました。スタッフ全員で一生懸命選びました!」とか言われたら・・・。
貰わざるを得ないでしょうが。
うん。きっと今日の為に神様が授けてくれたんだろう。・・・と思ってメンタルダメージを減ら・・・した。
「いや・・・うん。似合ってるよ。」
「ホテルまではビジネスコート着ていくので大丈夫ですよ。」
この格好で、平日の夕方に街を歩くと確実に目立つ。
唐所長の言わない優しさがツラい。
だが問題ない、その為のビジネスコートだ。
寒症で長めの丈を買っておいてよかった。
「良か・・・それはいいアイディアだね。
弟くん、きっと喜ぶよ。」
“良かった”って言いました?とツッコみたくなったが、まず終業後にロッカールームからタキシードの俺が出て来たら、社内でも異常事態だ。
周りの反応が分からなくもないし、俺も恥ずかしい。
取り合えず、弟が喜ぶであろう未来を考えて逃避しとこう。
ロビーで子供達を待つ。
「兄さん!お待たせ!」
「お帰り、健介。」
「父さん、仕事お疲れ様。」
「亮太も勉強お疲れさま。」
こうして、全員集合し、夕ご飯の待つ帝王ホテルへと向かおうとすると、唐所長から
『夕ご飯を食べに行く、正装の大人2人と学生服の子供2人。
服だけ見れば、保護者の方が張り切ってるみたいでちょっと照れるね。
明日も仕事だし、ちょっと控えめにラボを出ようか。』
と言う話になり、少し回り道になるがラボの裏口からの退社となった。
健介には熱烈なファンが居るから、コッソリ退社にはすかさず賛成した。
※健介のストーカーは漏れなく市井兄から過激なお仕置きをされます。
応援ありがとうございます!
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