僕の恋、兄の愛。4

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水曜日昼休み。

市井兄と待ち合わせ。

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◆◆ ◆水曜日 17時過ぎ◆ ◆◆


「市井くん、子供達を待たせちゃ可哀想だし、今日はもう片付けようか。」
と唐所長に声を掛けられて顔を上げると、もう17時を過ぎていた。

集中して作業を進めたお陰で、明日からは次の工程に進めそうだ。

片付けつつ明日の準備を、とモダモダやっていると唐所長に研究室から追い出された。

「弟なら少しくらい待たせても大丈夫ですよ。」

「時間にルーズな男は嫌われるよ。」

笑顔付きマジコワだ、何故。

そうか、亮太くん溺愛案件!

亮太くんを待たせるなんて言語道断か・・・スイマセン。

その後、唐所長は早々に研究室を施錠した。

唐所長と並んでロッカールームで着替える。

「市井くん、今日・・・それ?」

昼に届いたタキシードいしょうをロッカーから取り出すと唐所長にツッコまれた。

「はい。迷ったんですが王道にしました。」

今日の服装、張り切りすぎだと自分でも気付いている。

健介の事を考えて、“王子様感”が分かり易い、と、タキシードこれにした。

今までの反省を踏まえ、鏡で出来上がりの確認をする。

髪型もこんなもんなんだろう。多分。

そう、唐所長の『亮太くん溺愛案件』のお礼で貰ったのが、このだ。

何で亮太くん溺愛案件のお礼が『タキシード出番無さそうな礼服』なんだよ、と俺も思った。

でも、系列グループのスタッフに「この度は、急な唐所長不在ロストへの市井さんのフォロー、誠にありがとうございました。スタッフ全員で一生懸命選びました!」とか言われたら・・・。

貰わざるを得ないでしょうが。

うん。きっと今日ディナーの為に神様が授けてくれたんだろう。・・・と思ってメンタルダメージを減ら・・・した。

「いや・・・うん。似合ってるよ。」

「ホテルまではビジネスコート着ていくので大丈夫ですよ。」

この格好タキシードで、平日の夕方に街を歩くと確実に目立つ。

唐所長の言わない優しさがツラい。

だが問題ない、その為のビジネスコートだ。

寒症で長めの丈を買っておいてよかった。

「良か・・・それはいいアイディアだね。
弟くん、きっと喜ぶよ。」

“良かった”って言いました?とツッコみたくなったが、まず終業後にロッカールームからタキシードの超張り切った俺が出て来たら、社内でも異常事態だ。

周りの反応が分からなくもないし、俺も恥ずかしい。

取り合えず、弟が喜ぶであろう未来を考えて逃避しとこう。

ロビーで子供達高校生組を待つ。

「兄さん!お待たせ!」

「お帰り、健介。」

「父さん、仕事お疲れ様。」

「亮太も勉強お疲れさま。」

こうして、全員集合し、夕ご飯の待つ帝王ホテルへと向かおうとすると、唐所長から

『夕ご飯を食べに行く、の大人2人との子供2人。
服だけ見れば、保護者の方が張り切ってるみたいでちょっと照れるね。
明日も仕事だし、ちょっと控えめにラボを出ようか。』

と言う話になり、少し回り道になるがラボの裏口からの退社となった。

健介には熱烈なファンストーカーが居るから、コッソリ退社にはすかさず賛成した。











※健介のストーカーは漏れなく市井兄から過激なお仕置きをされます。
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