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水曜日ディナー本番。
市井兄と葛藤という名の現実逃避。
しおりを挟むディナールームを出て歩き出す。
あては無いので、和室前で立ち止まり縁側に腰掛けた。
深呼吸して和室を見ると、デカい鶴と亀の置物が昔の黒電話に添えて設置してある。
斬新なファンタスティック ジャパンの演出だ。
和室の隅っこギュウギュウじゃねぇか。
よくよく見ると高価そうな壺や皿も飾られている。
本当に何でもあるなココ・・・。
これだけ色々あるんだし、健介にぴったりの指輪、落ちてないかな。
ため息を吐いて眉間を揉む。
戻ってこい俺!
現実逃避してる場合じゃない!
もし仮にココに指輪が落ちていたとしても、どうせ俺は拾わない。
健介の生活用品でさえ、吟味したオーダーメイドしか渡さない俺だ。
ハイブランドの指輪が落ちていたとしても、人の使っていた物を健介に渡すなんて考えられないだろうが。
それより、どうする、俺。
このままでは健介を悲しませてしまうぞ。
どうする・・・。
・・・。
・・・。
・・・それはそうとして。
何でまた健介は、“今日プロポーズされる。”なんて思ったんだ?
そもそも唐所長が招待してくれたディナーなのに。
健介には、一昨日の月曜に
「唐所長が、俺達をホテルのディナーに誘ってくれたんだ。
『急なんだけど、明後日の夜に行かない?
亮太も家事の息抜きに行く予定だから弟くんもどう?』って。
(途中割愛)
唐所長いわく、『夜景の見える部屋で、2人だけのロマンチックディナー』なんだって、健。
いい大人が『ロマンチック』って。
ちょっと面白かったよ。」
と伝えた。
つまり『亮太くん達と夕ご飯食べに行かない?』と提案したんだぞ?
健介だって「りょーちんファミリーとのご飯会いいよね~♪」って言ってた。
プロポーズの予感は一体何処から・・・?
まぁ、でも希望的予感があって、そのタイミングで俺がタキシードで現れりゃ、「予感が確信に!」・・・なのか?
何で俺、今日に限ってタキシードなんか選んだんだ。
・・・唐所長に王子やれって言われたからだったわ。
俺、王子キャラ超張り切ってたわ。
え?
・・・王子様キャラのせいでややこしくなったんじゃ・・・?
もしかして徹夜で王子の猛勉強&猛練習、必要なかった?
・・・いい大人が乙女ゲームの資料を必死に読み込んで王子様習得して・・・俺・・・何やってたんだ・・・。
・・・。
・・・・・・待て、今はそれじゃない。
盛大に現実逃避してどうする。
今は凹む時でも、悩む時でも無い。
終わったことよりこれからの事だ。
・・・これからって・・・。
・・・。
取り合えず最優先課題は何か、を考えるべきだ。
そうだ、まず、まずは・・・どれだ?(混乱)
そうだ、そう、そうだな。(大混乱)
まずは急に降って湧いた『指輪とプロポーズ』をどう切り抜けるか、だな。
・・・プロポーズはどうにかなるんじゃないか?
シチュエーション的には“夜景が綺麗な個室でのディナー中”なんだし、俺はタキシードで王子様演出中だ。
でも、指輪は無い。
どうしよう。
健介の眼差しは『指輪、ゲットだぜ!』だったぞ。
無いもんは出せん、どうしよう・・・。
期待に溢れた健介を泣かせちゃうかも。
ドウしよう・・・。
・・・ドウシヨウ・・・。
・・・胃が痛・・・。
「アレ?市井くん?」
“ドウシヨウ”がゲシュタルト崩壊しそうになった所で知ってる声が聞こえた。
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