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続編1:水面に緩ふ華の間章。
10 閹人。※
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………
端正な唇が近づいてきて、己の小さな唇を近づけた。口吻をして、口を開ける。小さな舌が向こうの口内にすっと入っていく。
こうして、幼い妻はいつもより積極的な口づけを交わした。
「ねえ、わが君……わが君はどうしたらとろとろになりますか?」
潤んだ瞳にもどかしいものを宿して、幼い妻は夫君を仰ぎ見た。軽い肢体が柔らかい褥に皺を寄せていた。濡れたような黒髪が柔らかな象牙色の敷布の上に散らばる。
中心の小さな顔は雪花石膏のような白さで、頬は薄紅に色づいている。
華火は寝衣をまとった姿で、布を解いて纏足に軽く啄むように口吻をしたところだった。そのまま、白く柔らかい足を揉み拉いていく。
「とろとろに?可愛い奥方様は僕をとろとろにしたいの?」
「ひゃ……だって、わが君はいつも私をとろとろになさるだけで、ご自分は眺めているだけだから」
華火は足先から手を滑らせていき、覆い被さるような体勢になる。彼は滑らかな背に手を入れ、華奢な裸体を褥から少し浮かせると胸に押しつけるように抱き締めた。もう一度、身体の蕩けていくような口付けを交わした。
「本当に可愛い子だねぇ」
華火がにこやかな笑顔で幼子にするように頭を撫でてくる。
「ちょっわが君」
「うーん、そういうことなら、玉蓉ちゃんが蕩けてから気を繫いでみるかい」
「気を……?」
幼妻は肩に頭を乗せて、呟くようにこぼした。
「そう、感覚を共有するんだよ」
夫君は囁くように耳元で告げた。そのまま耳を舐めて、流れる黒髪を掛けてやる。
降ろされた玉蓉は何だか納得のいかない様子を見せた。自ら起き上がり、華火のもとに這っていくと、艶やかな光沢をおびた白絹の細帯を見つめた。
前合わせの寝衣を固定している。腰回りから垂れたその余りを小さなお手々で掴み、ちょびっと引くと結び目がずれた。彼女は指で挟んだ端を口で食み、一気に引っ張った。ぱらっと細帯が褥に落ちる。手前が開いた。
「ちょっと、玉蓉ちゃん?」
華火が困惑の入り混じる声をあげる。ほんの少し焦燥が混じっていることが物珍しかった。
「わが君、脱いで……いえ、為されるがままでいて下さい、私のように」
彼女は後ろから着物を引っ張った。華火は癖で脱がせやすいように腕を動かしてしまった。現れた白く輝くような背中に玉蓉は抱き着いた。忍びやかな笑い声がこぼれる。幼い少女に似合わぬ色香が微かに滲みでた。
「わが君、抱き心地良いですね」
「ええ?そりゃあ、がたいのいい男よりは良いかも知れないけど……」
「お肌がきめ細かくてしっとりで、触り心地良いです」
幼い妻は彼の背にふっくらとした頬を押しつけると目を伏せて居心地良さそうにした。
名残惜しそうに背から離れ、手前に回ると玉蓉は華火の股間をしげしげと見つめた。
「私のとはちょっと違いますね」
彼女は触れるか触れないかの距離で指を伝わせる。産毛がさわさわとした。
「わが君、触れて良いですか?」
玉蓉は華火を伺うように見上げた。
好奇心と劣情の入り混じった、許可を求める眼差し。小さな白い指はあとちょっとの際で止まっている。
「どうぞ……」
玉蓉は目を眇めて、人さし指でちょんと触れた。そして、穴の縁をなぞる。
「へぇ…ここに入れれば良いのですね」
「玉蓉ちゃん、女人の秘処と同じように考えてない?駄目だから」
玉蓉は困惑したように華火を見上げた。
「なら、どうすれば良いのですか?」
そう言われると言葉に詰まった。どう?どうって、えっーと枕の子達はどうしていたっけ?たしか、そう。
「あっわが君、その顔は心当たりがありますね」
「いや、僕は詳しくないから。今日は止めて置こう?知識なしにするのは危険な行為だから」
「……残念です」
華火は人さし指で円を描くようにして、肌にへばりつくように残った名残を示す。
そのまま片手で筒を作り、揶揄うようにすっと上に上げて見せた。
「ここにね、正常な男性は陰茎が生えているんだよ」
「どういうものなのですか?」
「玉蓉ちゃんって、そういう知識はないんだ」
「お姉様のお話しは具体的なことは分かりませんでしたから」
「そっか。まあ、それもそうだよね。幻鬼、図と僕の宝を持ってきて」
帷が少し開き、巻子と小箱が差し出された。
玉蓉は最近になって気づいた。幻鬼はどうやら虚空から物を取り出せる。普通に持ってくることの方が多いので中々気づけなかった。
華火は巻子をするすると開いた。本紙一面に人体の解剖図が描かれている。全身図の男と女。各臓器……男性器の図まで来るとぴたりと止まる。華火はその一部を指で指した。
「これが陰茎」
玉蓉は少し面食らった様子を見せた。
「男性ってこんなの生えているんですか。なんか凄いですね。付け根の膨らんだところは何ですか?」
「それは陰嚢だね。子胤を造るところだよ。陰茎には排尿と射精の機能がある。射精は子胤を出すことだ」
さらに断面図を玉蓉に見せる。
「陰茎には管が通っていて、陰嚢で造られた子胤がここを通って発射される。おしっこもこの管から出ていく」
今度は自分の股座を指した。
「この穴はその名残だね。僕は陰嚢ないから排泄にしか使わないけど…………僕の宝も見てみるかい」
彼女はこくりと頷いた。
幾重にも透かしの重なった合金の小箱。蓋に車輪のような細工がついていた。華火がくるくる回すと、透彫から覗く精緻な歯車が動きだす。
しばらくして、蓋の一部が浮き上がった。華火は丸い蓋を取り外す。丸い蓋のような部品の側面には、櫛のような細かい切れ込みが入っていた。
彼はそれを、小箱の底に挿入した。
水晶の円柱が浮き上がってきた。水晶の栓でしっかりと密封されている。
薄い黄色の液体に浸され、幼児の男性器が保管されていた。
ばらばらになっていた箱が手品のように元に戻される。
玉蓉は、華火を見上げた。一拍して言う。
「わが君、裸ですね」
茶化しているようで、少し緊張した声。
「そうだねぇ、玉蓉ちゃんに脱がされちゃったし」
華火はつとめて暢気に言った。
「ねえ……」と玉蓉の声が潜められる。劣情を滲ませた、幼い少女の眼差し。
「今後、睦み合うときは、わが君も裸になってくれますか?」
柔らかい身体が密着してくる。
「いいよ」
許可を得た玉蓉は、嬉しそうにその腰に抱き着き、そこに口吻を落とした。
多分。初めての口づけだ。
わが君にされたように、ここに玉蓉の痕を、赤く散らそうか。
そう思うとぞくりとした。
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