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2年2学期
23話: 文化祭、騎士と邪竜の共同演目 ⑤
しおりを挟む2日ある文化祭の日程のうち1日目である校内開催日当日。俺達の出る魔法演舞は午後の演目だから、午前の今、俺は1人で校内を散策していた。
今日はうちの学生しかいないから、混み具合もそこまでなくて、気になっている出店があるなら今日回ったほうが楽に見れる。
クロードとルカは演舞の最終調整があるとのことで、今日いっぱいは文化祭を回れないらしい。俺は明日の空き時間に2人におすすめできるよう色んな出店を覗いて歩く。特にルカは初めての参加だし、何か一つでもルカの興味をひけるものを見つけられたらいいな。
本当はカイを誘おうかなと思ったんだけど、サボってるのか今日は見つからなかったんだよね。
文化祭用に飾り付けられた校内は今日は学生だけというある種の気楽さもあって、各出し物の客引きも今日は内輪向けの緩いものだ。これが明日の外部客向けになるとどこの勧誘もかなり激しくなるからこの緩さも嵐の前の静けさという感じがして趣がある。
俺は目についた出し物の勧誘に片っ端から乗って、なかなかに充実した文化祭を過ごす。でもやっぱり1人だと何をしてても少し物足りない。何か面白いものを見た時や、美味しいものを食べた時、誰かと一緒に話したり盛り上がれた方が楽しいよね。
◇
「フレンのところは何やるの?」
「うちの組は喫茶店で、手伝ってる文化祭委員会の方は魔法演舞!午後から校庭で披露するから見に来てね!」
「あ!もしかしてクロード先輩出るやつ?クラスで話題になってたから絶対見ようと思ってた!!」
軽食を買った出店で知り合いから声をかけられたので俺は宣伝も兼ねて返事をする。ポスターとかで告知はしてたけど、噂になってるのを知って少し驚いた。まあ確かに毎日校庭で派手な魔法を使った練習してたし目立ってたのかも。クロードは有名人だし、その効果もあるみたいだ。
「フレンも出るの?」
「あ……それは後からのお楽しみって事で、それじゃ!」
ポスターには絶対写りたくないって拒否したから、俺が姫役をするのは知られてないみたいだった。いずれわかっちゃう事だけど深く聞かれると少し恥ずかしいので俺は適当に誤魔化してその場を後にする。
少し離れたところで、買った軽食を食べながらこの後の文化祭観光ルートを考えつつ、俺は午後までの時間を潰した。
◇
「え?衣装に不備……?」
そろそろ演舞の開始時間なので、校庭に向かった俺は、渋い顔をしたガネマルからこの悪いニュースの説明を受けた。
「実は先程衣装をクローゼットから取り出す時に引っ掛けてしまって、今まで全速力で修正してたんだが今日の演目には間に合いそうにないんだ……」
「え……じゃあ演舞はどうするの?」
せっかくの準備が無駄になるなんて勿体なさすぎる。俺は青ざめながらガネマルの顔を見つめた。
「姫が出てくる前までで今日の部は終わらせる。一応そこでも区切れるようにはなっているからそうするしかない」
しょんぼりとした様子で答えるガネマルに俺は同情する。あれだけ張り切って準備してたのにリハーサルとはいえ万全の出し物ができないのはきっとかなり堪えるだろうから。
「明日には絶対間に合わせるから、今日は関係者席で見学していってくれ」
ガネマルの言葉に甘えて俺は関係者席に座ることにする。女装するのは恥ずかしいけれどこんな形で着ないで済むことになったのは全然嬉しくはない。どうか明日はなんのトラブルもありませんように。そう願いながら俺は魔法演舞の開始を待った。
◇
リハーサルとはいえ、魔法演舞の完成度はとても高かった。
ルカの魔法は本当に、今まで見た魔法の中で1番繊細なのに豪快な迫力があって、練習で何回も見たはずなのに一瞬も目が離せない。クロードの剣技も、本来は戦うための動きだということがわかってるのに、まるで流麗なダンスの様に振るわれる剣先の動きに目を奪われる。その圧巻の演舞に釘付けになっていたらあっという間に時間が過ぎていた。練習中は結構尺があると思っていたのに本当に一瞬に感じたのはそれだけ迫力と感動があるからだろう。
誇張抜きに、2人とも本当に凄かった。それに
「クロード先輩かっこよすぎ……本当に伝説の騎士様みたい……」
「あの一年の子凄過ぎない?あんな魔法見たことない」
これは俺の贔屓目ではなく、誰が見ても素晴らしいものだってことが満席の観客席とその歓声から伝わってくる。今日俺は出られなかったけど、こんな風に皆が絶賛してくれるのを間近で見れたのはいい事だったかもしれない。後でガネマルにこの事を教えてあげよう。きっとすごく喜ぶよね。それに今日披露した場面まででこんなに評判になったから明日全編通してやったら今日よりもっと盛り上がるんじゃないかな。
不幸なトラブルで万全の状態でリハーサルができなかったことは残念だけど、その分明日はもっと凄いものがお披露目できると考えるとさっきまでの萎んでいた気持ちが上向いてワクワクしてくる。俺はただ立ってるだけの役ではあるんだけど、明日は今日の分まで精一杯頑張ろうと、誰にも見えない客席の端で1人拳を握ったのだった。
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