迅速な婚約破棄、迅速な復讐、迅速な…

小砂青

文字の大きさ
1 / 6

迅速な決断

しおりを挟む
「すまないアデル……お前を通してデイジーと会ううち、私は──」
「惚れてうっかりベットに連れ込んでしまったわけですね、わかります」

もじもじと話を引き伸ばす婚約者に、私、アデル・ワイズは一周回って冷静な頭で無理やり結論へと誘導した。

クズのお気持ちなんてどうでもいい。婚約者と親友デイジーが裸で一緒に寝ていて、こっちは気が狂いそうなのである。

婚約者…キーランはゆらゆら目を泳がせたあと、諦めたように頭を縦に振った。そして再びどうでもいい話をちんたらと話し出した。

「あ、ああそうだよ!でもそれは君に手が出せないからでっ」
「そういうのいいので、離縁の手続きを進めさせてもらってもいいでしょうか。あいにく突然のことなので書類が手元にありませんので、後日またそちらに伺いますね」

さっきまで私と普通に話していたにも関わらず普通にその婚約者と寝たデイジーの言い分に興味はあるが、クズの逆ギレなんて聞いているだけで耳が腐る。

デイジーはこの期に及んで被害者のような顔で涙目で私を見上げていて、思わずどうにかしたくなったけれど、ぐっと我慢してその場を立ち去った。

手を出してはいけない。
私はあくまで悲劇のヒロインでなくちゃ。

そうじゃなきゃ迅速に別れられない。

それに、私の復讐はもう終わっているのだから───



私、アデル・ワイズはしがない男爵家の三女である。

4歳の時、母が贔屓にしているオルテンシア商会の後継息子であるキーランと婚約した。

オルテンシア商会は主に子供向け雑貨や母親向け用品など、親子をターゲットにした商品を開発している商会で、数年前のベビーブームによって知る人ぞ知る大企業へ成長した。

キーランとは3歳の時に出会った。

「すきだ!ひとめぼれした!ぼくとこんやくしてくれ!」

人前だろうが気にせず一目惚れしたと騒いでは、休みのたびに押しかけてきたので、なんだかんだ絆されてしまい、1年後に婚約した。

私たちは仲が良かったと思う。時間があれば一緒に遊んで、遠出や食事にも何度も行って、ついには同じ学校に進学した。

時がたち、周りから冷やかされることもなくなった頃、15歳の時に転校してきたのがデイジーだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物語は続かない

mios
恋愛
「ローズ・マリーゴールド公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!」 懐かしい名前を聞きました。彼が叫ぶその名を持つ人物は既に別の名前を持っています。 役者が欠けているのに、物語が続くなんてことがあるのでしょうか?

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

王子の好きなのは別の人

mios
恋愛
王子の婚約者に対しての婚約破棄の場面で呆然とする伯爵令嬢。 あれ?王子の新しい婚約者って私ではない?

あの気持ち悪い贈り物は貴方でしたの?

mios
恋愛
私は今見知らぬ男性に謝られている。 貴方の愛には、答えられないと。 ええと、貴方のことを存じ上げないのですが、初めましてですよね?

おめでとうございます!今年の主役は貴女です!

mios
恋愛
巷で、話題の真実の愛を囁く彼女をテーマに啓発映像を撮ろうと奮闘する生徒会役員の話。 10話で完結

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

優柔不断も大概になさいませ

mios
恋愛
優柔不断の殿下を支えてきた公爵令嬢マリアは、殿下から、断罪され、国外追放を言い渡される。

処理中です...