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王都を救った英雄を称える祝宴が、王城の大広間で開かれることになりました。
かつて私が、惨めに婚約破棄を言い渡されたあの夜会とは、何もかもが違っていました。
今日の私は、ライアンさんが贈ってくれた、彼の瞳と同じ紺碧色のドレスを纏っています。
鏡の中に映る自分を見て、私は少しだけ驚きました。
かつての暗い、怯えたような表情は消え、背筋を伸ばして微笑む一人の女性がそこにいたからです。
ライアンさんが用意してくれた専属の侍女さんたちが、私の髪を丁寧に編み込み、薬草の香りがする小さな白い花を飾ってくれました。
「……準備はいいか、セレナ。今日の主役は、誰が何と言おうと君だ。自信を持って、俺の隣にいてほしい」
正装に身を包んだライアンさんが、優しく私の手を取りました。
彼の逞しい腕にエスコートされ、扉が開いた瞬間、会場中の視線が私たちに集まりました。
それは蔑みでも嘲笑でもなく、純粋な称賛と、驚きに満ちた眼差しでした。
「見て、あの美しい方が、あの奇跡の薬草を見つけた聖女様よ……!」
「隣にいるライアン卿との、なんてお似合いなこと。まるで絵画から抜け出してきたみたいだわ」
人々のささやき声を聞きながら、私は静かに歩を進めました。
かつて私を無視した貴族たちが、今はこぞって頭を下げ、私に媚びるような笑みを向けてきます。
そんな人ごみを抜けた先で、一人の男が立ち尽くしていました。
ボロボロの正装。目の下には酷いクマ。
かつての輝きを失い、惨めに震えているのは、アレクさまでした。
彼は、私の姿を見るなり、周囲の目も気にせず駆け寄ってきました。
「セ、セレナ! セレナじゃないか! ああ、なんてことだ、君はこんなに美しかったのか。……いや、最初から俺は分かっていたんだ! 君の持つ秘めた才能も、その優しさも! あの夜会でのことは、何かの間違いだったんだよ!」
アレクさまの声は、震えて裏返っていました。
彼は私の手をつかもうとしましたが、ライアンさんが一歩前に出て、鋭い視線でそれを遮りました。
アレクさまは怯えながらも、なおも必死に私に訴えかけます。
「セレナ、聞いてくれ。俺は今、とても困っているんだ。領地は荒れ果て、疫病の対応で私財も底をついてしまった。……でも、君が俺の妻に戻ってくれれば、すべては解決する! 君の薬草の力と、俺の家柄があれば、以前よりもっと素晴らしい地位が手に入るはずだ。頼む、あの婚約破棄は取り消そう。やり直そうじゃないか!」
あまりにも身勝手で、醜い言葉。
私は彼をじっと見つめました。
以前の私なら、彼の怒鳴り声に震えて謝っていたかもしれません。
でも、今の私の心には、さざ波一つ立ちませんでした。
私は深く、静かにため息をつきました。
「アレクさま。……お顔を上げてください。私、あなたに一つだけ言いたいことがあるんです」
私はライアンさんの腕からそっと離れ、アレクさまの目の前に立ちました。
彼は期待に満ちた目で私を見つめ返します。
「私はあの日、あなたに『枯れた花』だと言われ、公爵家からも捨てられました。あの時の私は、確かに死んだも同然でした。……でも、あなたが捨ててくれたおかげで、私はライアンさんに出会い、自分が本当に大切にしたいものを見つけることができたんです」
私は微笑みました。慈悲を込めて、けれど心からの拒絶を込めて。
「今の私があるのは、あなたが私を捨ててくれたおかげです。だから、そのことについては感謝しています。……でも、アレクさま。あなたが今さら何を言っても、私の心はもう、あなたには一滴も残っていないんです。私を愛し、必要としてくれたのは、あなたが『無能』と切り捨てた私の力ごと受け入れてくれた、ライアンさんだけですから」
アレクさまの顔から、さあっと血の気が引いていくのが分かりました。
彼はがたがたと震えながら、絞り出すような声で言いました。
「そ、そんなはずはない……! 君は俺を愛していたはずだ! 他に誰が、お前のような地味な女を……」
「それはもう、過去のお話ですわ、アレクさま」
その時、ライアンさんが冷徹な声で言葉を被せました。
「アレク・バートン。お前の見苦しい言い訳はそこまでだ。……俺は、お前が領地の復旧費を横領し、私腹を肥やしていた証拠をすべて掴んでいる。さらに、疫病で苦しむ民を見捨てて自分だけ王都に逃げ込んだ罪もな。……衛兵! この男を連れて行け」
「な、なんだと!? 放せ! 俺は辺境伯の跡取りだぞ! こんなことが許されると思っているのか!」
アレクさまは叫び、暴れましたが、屈強な衛兵たちに両脇を抱えられ、引きずられていきました。
彼は会場を出る間際まで、私に向かって「セレナ! 助けてくれ! セレナ!」と叫び続けていました。
その声は虚しく広間に響き、やがて扉の向こうへと消えていきました。
会場には、しんと静まり返った後、誰からともなく拍手が沸き起こりました。
因果応報。自業自得。
自分勝手に人を傷つけた男の、あまりにも惨めな結末でした。
---
騒がしい王都での出来事から、数ヶ月が経ちました。
私は今、ライアンさんの領地にある、新しい薬草園に立っています。
あのボロボロの別荘ではありません。
ライアンさんが私のために用意してくれた、陽光がたっぷりと降り注ぐ、世界で一番贅沢な薬草園です。
「セレナ、あまり無理をするなよ。昨日も夜遅くまで、新しい特効薬の調合をしていたんだろう?」
後ろから、ライアンさんの温かい声が聞こえてきました。
振り返ると、彼は仕事の合間を縫って、私に会いに来てくれたようでした。
彼は私の手を取り、指先にそっとキスをしました。
「ライアンさん。……ふふ、大丈夫ですよ。この子たちが元気に育っているのを見ると、疲れなんて吹き飛んでしまうんです。それに、王都の病院に送る分も、もうすぐ完成しそうです」
私は、彼の胸にそっと頭を預けました。
かつての私は、自分の居場所なんてどこにもないと思っていました。
誰かに必要とされることも、誰かを心から愛することも、自分には縁のないことだと諦めていました。
でも、今は違います。
朝起きて、大切な人と朝食を食べ、愛する薬草たちの世話をする。
病に苦しむ人々のために自分の知識を使い、誰かの「ありがとう」に触れる。
そんな当たり前の、けれど何よりも幸せな毎日が、ここにはありました。
「セレナ。……来月の結婚式の準備、順調だそうだ。君が選んだドレス、きっと世界で一番似合うだろうな」
「ライアンさんたら、まだ一ヶ月も先ですよ? でも……楽しみですね。私、今までで一番幸せです」
私たちは、見渡す限りの緑と花々に囲まれて、静かに寄り添い合いました。
一方で、私の視界の先——遥か遠くの丘の上には、灰色の石造りの建物が見えます。
それは、罪を犯した貴族たちが送られる、辺境の更生施設。
アレクさまは今、あそこの狭い独房で過ごしているはずです。
彼は毎日、小さな窓から、この美しい薬草園を眺めているといいます。
自分が捨てた「影」が、今や誰からも愛される「太陽」となって輝いている姿を。
二度と手に入らない幸せを、ただ眺めることしかできない地獄。
それが、彼に与えられた永遠の罰でした。
私は一度だけ、その建物の方を向いて、小さく微笑みました。
あの日、あなたが私を捨ててくれたから。
あの日、私を泥の中に突き落としてくれたから。
私は本当の自分を見つけることができ、そして、最愛の騎士さまに出会うことができた。
「さようなら、アレクさま。どうぞ、あなたの愛した『見栄え』だけの世界で、いつまでも後悔していてください」
私はもう、二度とあちらを振り返ることはありません。
私の前には、大好きな薬草の香りと、大切な人の温もりがあるから。
青い空の下、銀色の薬草たちが、祝福するように風に揺れています。
枯れた花は、今、かつてないほど鮮やかに、力強く、この場所で咲き誇っているのでした。
かつて私が、惨めに婚約破棄を言い渡されたあの夜会とは、何もかもが違っていました。
今日の私は、ライアンさんが贈ってくれた、彼の瞳と同じ紺碧色のドレスを纏っています。
鏡の中に映る自分を見て、私は少しだけ驚きました。
かつての暗い、怯えたような表情は消え、背筋を伸ばして微笑む一人の女性がそこにいたからです。
ライアンさんが用意してくれた専属の侍女さんたちが、私の髪を丁寧に編み込み、薬草の香りがする小さな白い花を飾ってくれました。
「……準備はいいか、セレナ。今日の主役は、誰が何と言おうと君だ。自信を持って、俺の隣にいてほしい」
正装に身を包んだライアンさんが、優しく私の手を取りました。
彼の逞しい腕にエスコートされ、扉が開いた瞬間、会場中の視線が私たちに集まりました。
それは蔑みでも嘲笑でもなく、純粋な称賛と、驚きに満ちた眼差しでした。
「見て、あの美しい方が、あの奇跡の薬草を見つけた聖女様よ……!」
「隣にいるライアン卿との、なんてお似合いなこと。まるで絵画から抜け出してきたみたいだわ」
人々のささやき声を聞きながら、私は静かに歩を進めました。
かつて私を無視した貴族たちが、今はこぞって頭を下げ、私に媚びるような笑みを向けてきます。
そんな人ごみを抜けた先で、一人の男が立ち尽くしていました。
ボロボロの正装。目の下には酷いクマ。
かつての輝きを失い、惨めに震えているのは、アレクさまでした。
彼は、私の姿を見るなり、周囲の目も気にせず駆け寄ってきました。
「セ、セレナ! セレナじゃないか! ああ、なんてことだ、君はこんなに美しかったのか。……いや、最初から俺は分かっていたんだ! 君の持つ秘めた才能も、その優しさも! あの夜会でのことは、何かの間違いだったんだよ!」
アレクさまの声は、震えて裏返っていました。
彼は私の手をつかもうとしましたが、ライアンさんが一歩前に出て、鋭い視線でそれを遮りました。
アレクさまは怯えながらも、なおも必死に私に訴えかけます。
「セレナ、聞いてくれ。俺は今、とても困っているんだ。領地は荒れ果て、疫病の対応で私財も底をついてしまった。……でも、君が俺の妻に戻ってくれれば、すべては解決する! 君の薬草の力と、俺の家柄があれば、以前よりもっと素晴らしい地位が手に入るはずだ。頼む、あの婚約破棄は取り消そう。やり直そうじゃないか!」
あまりにも身勝手で、醜い言葉。
私は彼をじっと見つめました。
以前の私なら、彼の怒鳴り声に震えて謝っていたかもしれません。
でも、今の私の心には、さざ波一つ立ちませんでした。
私は深く、静かにため息をつきました。
「アレクさま。……お顔を上げてください。私、あなたに一つだけ言いたいことがあるんです」
私はライアンさんの腕からそっと離れ、アレクさまの目の前に立ちました。
彼は期待に満ちた目で私を見つめ返します。
「私はあの日、あなたに『枯れた花』だと言われ、公爵家からも捨てられました。あの時の私は、確かに死んだも同然でした。……でも、あなたが捨ててくれたおかげで、私はライアンさんに出会い、自分が本当に大切にしたいものを見つけることができたんです」
私は微笑みました。慈悲を込めて、けれど心からの拒絶を込めて。
「今の私があるのは、あなたが私を捨ててくれたおかげです。だから、そのことについては感謝しています。……でも、アレクさま。あなたが今さら何を言っても、私の心はもう、あなたには一滴も残っていないんです。私を愛し、必要としてくれたのは、あなたが『無能』と切り捨てた私の力ごと受け入れてくれた、ライアンさんだけですから」
アレクさまの顔から、さあっと血の気が引いていくのが分かりました。
彼はがたがたと震えながら、絞り出すような声で言いました。
「そ、そんなはずはない……! 君は俺を愛していたはずだ! 他に誰が、お前のような地味な女を……」
「それはもう、過去のお話ですわ、アレクさま」
その時、ライアンさんが冷徹な声で言葉を被せました。
「アレク・バートン。お前の見苦しい言い訳はそこまでだ。……俺は、お前が領地の復旧費を横領し、私腹を肥やしていた証拠をすべて掴んでいる。さらに、疫病で苦しむ民を見捨てて自分だけ王都に逃げ込んだ罪もな。……衛兵! この男を連れて行け」
「な、なんだと!? 放せ! 俺は辺境伯の跡取りだぞ! こんなことが許されると思っているのか!」
アレクさまは叫び、暴れましたが、屈強な衛兵たちに両脇を抱えられ、引きずられていきました。
彼は会場を出る間際まで、私に向かって「セレナ! 助けてくれ! セレナ!」と叫び続けていました。
その声は虚しく広間に響き、やがて扉の向こうへと消えていきました。
会場には、しんと静まり返った後、誰からともなく拍手が沸き起こりました。
因果応報。自業自得。
自分勝手に人を傷つけた男の、あまりにも惨めな結末でした。
---
騒がしい王都での出来事から、数ヶ月が経ちました。
私は今、ライアンさんの領地にある、新しい薬草園に立っています。
あのボロボロの別荘ではありません。
ライアンさんが私のために用意してくれた、陽光がたっぷりと降り注ぐ、世界で一番贅沢な薬草園です。
「セレナ、あまり無理をするなよ。昨日も夜遅くまで、新しい特効薬の調合をしていたんだろう?」
後ろから、ライアンさんの温かい声が聞こえてきました。
振り返ると、彼は仕事の合間を縫って、私に会いに来てくれたようでした。
彼は私の手を取り、指先にそっとキスをしました。
「ライアンさん。……ふふ、大丈夫ですよ。この子たちが元気に育っているのを見ると、疲れなんて吹き飛んでしまうんです。それに、王都の病院に送る分も、もうすぐ完成しそうです」
私は、彼の胸にそっと頭を預けました。
かつての私は、自分の居場所なんてどこにもないと思っていました。
誰かに必要とされることも、誰かを心から愛することも、自分には縁のないことだと諦めていました。
でも、今は違います。
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「ライアンさんたら、まだ一ヶ月も先ですよ? でも……楽しみですね。私、今までで一番幸せです」
私たちは、見渡す限りの緑と花々に囲まれて、静かに寄り添い合いました。
一方で、私の視界の先——遥か遠くの丘の上には、灰色の石造りの建物が見えます。
それは、罪を犯した貴族たちが送られる、辺境の更生施設。
アレクさまは今、あそこの狭い独房で過ごしているはずです。
彼は毎日、小さな窓から、この美しい薬草園を眺めているといいます。
自分が捨てた「影」が、今や誰からも愛される「太陽」となって輝いている姿を。
二度と手に入らない幸せを、ただ眺めることしかできない地獄。
それが、彼に与えられた永遠の罰でした。
私は一度だけ、その建物の方を向いて、小さく微笑みました。
あの日、あなたが私を捨ててくれたから。
あの日、私を泥の中に突き落としてくれたから。
私は本当の自分を見つけることができ、そして、最愛の騎士さまに出会うことができた。
「さようなら、アレクさま。どうぞ、あなたの愛した『見栄え』だけの世界で、いつまでも後悔していてください」
私はもう、二度とあちらを振り返ることはありません。
私の前には、大好きな薬草の香りと、大切な人の温もりがあるから。
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