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「リディア様、また図書室ですか? 少しは社交会にも顔を出されたらいかがです?」
侍女のマルグリットが、呆れたようにため息をついた。朝食を終えたばかりなのに、私の手にはもう何冊かの魔導書が抱えられている。もちろん、行き先は学院の図書室だ。
「いいのよ、マルグリット。私には、本がお友達だから」
そう言って笑ってみせたけれど、自分でもその言葉が少し寂しく響くのが分かった。魔法学院に入学してもう三年。私はずっと、地味な存在として隅っこで息をひそめるように暮らしてきた。
私の家は、代々続く由緒正しい貴族の家系だ。けれど、これといった功績を上げた者もなく、ひっそりと暮らしている。両親は私に期待していたはずだ。魔法学院に入れば、きっと素晴らしい才能を開花させるだろうと。でも、現実は違った。
私の魔力は、ごくごく平均以下。周りの子たちが、キラキラと色とりどりの魔法を繰り出す中で、私は地味な光しか放てない。まるで、曇り空の日に咲く、小さな雑草みたいに。
「あら、リディア様じゃない。また魔導書をそんなに抱えて。根暗な子ねえ」
聞こえてきたのは、少し意地の悪い声。振り返ると、そこには学院でも一際目立つ存在、セシリア様がいた。彼女はくるくると巻かれた金髪に、太陽の光を浴びたような美しいドレスをまとっている。その隣には、いつも彼女の取り巻きが数人いて、クスクスと笑い合っている。
セシリア様は、私とは正反対だ。魔力も高いし、容姿も華やか。何より、性格が明るくて、周りのみんなを惹きつける力がある。そんな彼女が私を見る目は、いつもどこか見下すような色が混じっていた。
「わたくしは、図書館で調べたいことがあったので」
精一杯、平静を装って答える。でも、心臓はドクドクと音を立てていた。いつものことながら、彼女たちに絡まれると、なぜか体がすくんでしまう。
「ふうん。でも、いくら本を読んだって、リディア様の魔力が増えるわけじゃないでしょう? 残念ねえ、アルベルト様もきっとがっかりしているわ」
セシリア様の言葉に、私の心臓がギュッと締め付けられた。アルベルト様。私の婚約者。そして、この学院で一番の天才魔導士。彼の名前を出されると、胸の奥がズキズキと痛む。
セシリア様は、私が何も言い返せないのを確認すると、満足そうにフフッと笑って、取り巻きを連れて去っていった。その背中を見送りながら、私はまたため息をついた。
マルグリットが心配そうに私の顔を覗き込む。
「リディア様……」
「大丈夫よ、マルグリット。慣れているから」
そうは言ったものの、やっぱり慣れない。毎日のように向けられる冷たい視線や、聞こえてくるひそひそ話。私はまるで、透明人間みたいだ。ここにいるのに、誰も私を見ていない。私に期待していない。
図書室に着くと、いつものように一番奥の、誰にも見つからないような席に座った。ずらりと並んだ分厚い魔導書の中から、一番古くて埃っぽいものを手に取る。難しい数式や、見たこともない紋章がびっしりと書き込まれたページをめくる。ここにいる間だけは、私は誰にも邪魔されずに、自分だけの世界に浸れる。
でも、どんなに本を読んでも、私の魔力は上がらない。基本的な魔法は使えるけれど、それ以上はまるで壁があるみたいだ。他の子たちが軽々と使いこなすような、派手な攻撃魔法も、複雑な防御魔法も、私には難しかった。
私は本当に、貴族の令嬢として生まれてきた意味があるのだろうか? このまま、何の役にも立たないまま、一生を終えるのだろうか? そんな不安が、いつも私の心の奥底にあった。
特に、アルベルト様の隣にいると、その不安は一層大きくなった。
アルベルト様は、本当に「天才」という言葉がぴったりな人だった。銀色の髪はまるで月の光を浴びたように輝き、深い青色の瞳は星空のように神秘的だ。そして、何よりも彼の魔力は、この学院で群を抜いて高かった。彼はまだ若いのに、すでに多くの魔導士たちが目標とする存在だった。
私たちは、幼い頃から婚約者として決められていた。けれど、彼が成長するにつれて、私たち二人の間には、どんどん距離ができていった。
彼が私を見る目は、いつもどこか冷たかった。まるで、私という存在が、彼の視界に入ることさえも嫌がっているかのように。
そして、その日。
いつものように、私は図書室にこもっていた。すると、不意に、彼の声が聞こえた。
「リディア・エヴァンス」
その声は、氷のように冷たく、私の背筋を凍らせた。振り返ると、そこにいたのは、いつも通りの完璧な姿のアルベルト様だった。彼の顔には、いつものように感情が読み取れない。
「アルベルト様……」
私は慌てて立ち上がり、頭を下げた。彼が私に話しかけてくること自体が珍しかったから、何事かと心臓がドキドキと音を立てていた。
「君に伝えたいことがある」
彼はまっすぐ私を見つめた。その瞳には、何の感情も宿っていなかった。
「はい」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。何か嫌な予感がした。
「私は、君との婚約を破棄したい」
その言葉は、まるで雷鳴のように私の頭に響き渡った。一瞬、何を言われたのか理解できなかった。婚約破棄? 私とアルベルト様が?
「な……なぜ、ですか……?」
絞り出すように声を出した。喉がカラカラに乾いていた。
「なぜ、だと? 簡単なことだ。君は、私には釣り合わない。魔力もなければ、美貌もない。私の隣に立つにふさわしい、何一つ持ち合わせていない」
アルベルト様の言葉は、私の心をナイフで切り裂くように鋭かった。魔力がないこと、美貌がないこと。私が一番気にしていたことを、彼は臆面もなく突きつけてきた。
「私は……私は、努力します。もっと、もっと……」
震える声で懇願した。けれど、彼の表情は変わらなかった。
「いくら努力したところで、君の魔力が私に追いつくことはない。君の平凡な容姿が、私を彩ることもない。私は、もっと優れた存在を隣に置きたいのだ」
彼の瞳に映る私は、確かに平凡で、何の取り柄もない、取るに足らない存在だった。彼の言葉は、私の心を深く深く傷つけた。私の存在自体を否定されたような気がした。
「そんな……」
私は言葉を失った。何も言い返せなかった。彼の言葉が、あまりにも正論のように聞こえて、反論する術を知らなかった。
「わかったら、さっさとこの学院から出て行け。君のような凡庸な者が、私の婚約者であったという事実が、私にとっての汚点だ」
彼はそう言い放つと、何の未練もなく、私に背を向けた。彼の足音が遠ざかっていく。私はその場に立ち尽くし、ただただ震えることしかできなかった。
その日から、私の学院生活は、さらに地獄のようになった。アルベルト様との婚約破棄の噂は、あっという間に学院中に広まった。今まで以上に、私を見る生徒たちの目は冷たくなった。同情の視線も、軽蔑の視線も、私にとっては同じくらい辛かった。
マルグリットは、私のことを心配してくれた。
「リディア様、本当にこのまま学院を出て行かれるのですか? お父様やお母様も、きっと……」
「いいのよ、マルグリット。もう、ここにいる意味なんてないもの」
私はそう答えた。両親には、まだ婚約破棄のことは伝えていない。きっと、私が学院を退学することになれば、ひどく落胆するだろう。でも、もう私には、ここに留まる理由が見つからなかった。
アルベルト様の言葉が、ずっと頭の中で繰り返される。「君は、私には釣り合わない。魔力もなければ、美貌もない。」
私は本当に、価値のない人間なのだろうか? 誰にも必要とされない、取るに足らない存在なのだろうか?
そんなことを考えていると、胸が締め付けられて、呼吸が苦しくなる。学院の校舎を見上げると、その巨大な建物が、まるで私を閉じ込める牢獄のように見えた。
私はここから、出て行く。どこへ行くのかも、何をするのかも、まだ決まっていないけれど。でも、ここではないどこかへ。
この学院を去ることが、私の唯一の希望だった。
学院を去る日、私は誰にも見送られることなく、たった一人で馬車に乗り込んだ。きらびやかな校舎が、次第に小さくなっていく。
窓の外の景色は、だんだんと見慣れないものに変わっていった。
馬車に揺られながら、私はぼんやりと過去を振り返った。アルベルト様との出会いは、まだ私が幼かった頃だった。彼はいつも眩しい存在で、私は彼の影に隠れるように生きてきた。彼が私に興味を示すことは一度もなく、話しかけることさえ稀だった。私たちは、ただ「婚約者」という名前で繋がれているだけの関係だった。
それでも、私はどこかで期待していたのかもしれない。いつか、彼が私を見てくれる日が来るのではないかと。私の地味な努力に、気づいてくれる日が来るのではないかと。けれど、そんな期待は、彼の冷たい言葉によってあっけなく打ち砕かれた。
私が向かったのは、遥か北の山奥にある、とある魔物研究所だった。学院の掲示板に、たまたま研究助手を募集する小さな貼り紙を見つけたのだ。何の気なしに連絡してみたところ、意外にもすぐに採用が決まった。私のような魔力のない人間でも、地味な研究ならできるかもしれない。そう思ったのだ。
侍女のマルグリットが、呆れたようにため息をついた。朝食を終えたばかりなのに、私の手にはもう何冊かの魔導書が抱えられている。もちろん、行き先は学院の図書室だ。
「いいのよ、マルグリット。私には、本がお友達だから」
そう言って笑ってみせたけれど、自分でもその言葉が少し寂しく響くのが分かった。魔法学院に入学してもう三年。私はずっと、地味な存在として隅っこで息をひそめるように暮らしてきた。
私の家は、代々続く由緒正しい貴族の家系だ。けれど、これといった功績を上げた者もなく、ひっそりと暮らしている。両親は私に期待していたはずだ。魔法学院に入れば、きっと素晴らしい才能を開花させるだろうと。でも、現実は違った。
私の魔力は、ごくごく平均以下。周りの子たちが、キラキラと色とりどりの魔法を繰り出す中で、私は地味な光しか放てない。まるで、曇り空の日に咲く、小さな雑草みたいに。
「あら、リディア様じゃない。また魔導書をそんなに抱えて。根暗な子ねえ」
聞こえてきたのは、少し意地の悪い声。振り返ると、そこには学院でも一際目立つ存在、セシリア様がいた。彼女はくるくると巻かれた金髪に、太陽の光を浴びたような美しいドレスをまとっている。その隣には、いつも彼女の取り巻きが数人いて、クスクスと笑い合っている。
セシリア様は、私とは正反対だ。魔力も高いし、容姿も華やか。何より、性格が明るくて、周りのみんなを惹きつける力がある。そんな彼女が私を見る目は、いつもどこか見下すような色が混じっていた。
「わたくしは、図書館で調べたいことがあったので」
精一杯、平静を装って答える。でも、心臓はドクドクと音を立てていた。いつものことながら、彼女たちに絡まれると、なぜか体がすくんでしまう。
「ふうん。でも、いくら本を読んだって、リディア様の魔力が増えるわけじゃないでしょう? 残念ねえ、アルベルト様もきっとがっかりしているわ」
セシリア様の言葉に、私の心臓がギュッと締め付けられた。アルベルト様。私の婚約者。そして、この学院で一番の天才魔導士。彼の名前を出されると、胸の奥がズキズキと痛む。
セシリア様は、私が何も言い返せないのを確認すると、満足そうにフフッと笑って、取り巻きを連れて去っていった。その背中を見送りながら、私はまたため息をついた。
マルグリットが心配そうに私の顔を覗き込む。
「リディア様……」
「大丈夫よ、マルグリット。慣れているから」
そうは言ったものの、やっぱり慣れない。毎日のように向けられる冷たい視線や、聞こえてくるひそひそ話。私はまるで、透明人間みたいだ。ここにいるのに、誰も私を見ていない。私に期待していない。
図書室に着くと、いつものように一番奥の、誰にも見つからないような席に座った。ずらりと並んだ分厚い魔導書の中から、一番古くて埃っぽいものを手に取る。難しい数式や、見たこともない紋章がびっしりと書き込まれたページをめくる。ここにいる間だけは、私は誰にも邪魔されずに、自分だけの世界に浸れる。
でも、どんなに本を読んでも、私の魔力は上がらない。基本的な魔法は使えるけれど、それ以上はまるで壁があるみたいだ。他の子たちが軽々と使いこなすような、派手な攻撃魔法も、複雑な防御魔法も、私には難しかった。
私は本当に、貴族の令嬢として生まれてきた意味があるのだろうか? このまま、何の役にも立たないまま、一生を終えるのだろうか? そんな不安が、いつも私の心の奥底にあった。
特に、アルベルト様の隣にいると、その不安は一層大きくなった。
アルベルト様は、本当に「天才」という言葉がぴったりな人だった。銀色の髪はまるで月の光を浴びたように輝き、深い青色の瞳は星空のように神秘的だ。そして、何よりも彼の魔力は、この学院で群を抜いて高かった。彼はまだ若いのに、すでに多くの魔導士たちが目標とする存在だった。
私たちは、幼い頃から婚約者として決められていた。けれど、彼が成長するにつれて、私たち二人の間には、どんどん距離ができていった。
彼が私を見る目は、いつもどこか冷たかった。まるで、私という存在が、彼の視界に入ることさえも嫌がっているかのように。
そして、その日。
いつものように、私は図書室にこもっていた。すると、不意に、彼の声が聞こえた。
「リディア・エヴァンス」
その声は、氷のように冷たく、私の背筋を凍らせた。振り返ると、そこにいたのは、いつも通りの完璧な姿のアルベルト様だった。彼の顔には、いつものように感情が読み取れない。
「アルベルト様……」
私は慌てて立ち上がり、頭を下げた。彼が私に話しかけてくること自体が珍しかったから、何事かと心臓がドキドキと音を立てていた。
「君に伝えたいことがある」
彼はまっすぐ私を見つめた。その瞳には、何の感情も宿っていなかった。
「はい」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。何か嫌な予感がした。
「私は、君との婚約を破棄したい」
その言葉は、まるで雷鳴のように私の頭に響き渡った。一瞬、何を言われたのか理解できなかった。婚約破棄? 私とアルベルト様が?
「な……なぜ、ですか……?」
絞り出すように声を出した。喉がカラカラに乾いていた。
「なぜ、だと? 簡単なことだ。君は、私には釣り合わない。魔力もなければ、美貌もない。私の隣に立つにふさわしい、何一つ持ち合わせていない」
アルベルト様の言葉は、私の心をナイフで切り裂くように鋭かった。魔力がないこと、美貌がないこと。私が一番気にしていたことを、彼は臆面もなく突きつけてきた。
「私は……私は、努力します。もっと、もっと……」
震える声で懇願した。けれど、彼の表情は変わらなかった。
「いくら努力したところで、君の魔力が私に追いつくことはない。君の平凡な容姿が、私を彩ることもない。私は、もっと優れた存在を隣に置きたいのだ」
彼の瞳に映る私は、確かに平凡で、何の取り柄もない、取るに足らない存在だった。彼の言葉は、私の心を深く深く傷つけた。私の存在自体を否定されたような気がした。
「そんな……」
私は言葉を失った。何も言い返せなかった。彼の言葉が、あまりにも正論のように聞こえて、反論する術を知らなかった。
「わかったら、さっさとこの学院から出て行け。君のような凡庸な者が、私の婚約者であったという事実が、私にとっての汚点だ」
彼はそう言い放つと、何の未練もなく、私に背を向けた。彼の足音が遠ざかっていく。私はその場に立ち尽くし、ただただ震えることしかできなかった。
その日から、私の学院生活は、さらに地獄のようになった。アルベルト様との婚約破棄の噂は、あっという間に学院中に広まった。今まで以上に、私を見る生徒たちの目は冷たくなった。同情の視線も、軽蔑の視線も、私にとっては同じくらい辛かった。
マルグリットは、私のことを心配してくれた。
「リディア様、本当にこのまま学院を出て行かれるのですか? お父様やお母様も、きっと……」
「いいのよ、マルグリット。もう、ここにいる意味なんてないもの」
私はそう答えた。両親には、まだ婚約破棄のことは伝えていない。きっと、私が学院を退学することになれば、ひどく落胆するだろう。でも、もう私には、ここに留まる理由が見つからなかった。
アルベルト様の言葉が、ずっと頭の中で繰り返される。「君は、私には釣り合わない。魔力もなければ、美貌もない。」
私は本当に、価値のない人間なのだろうか? 誰にも必要とされない、取るに足らない存在なのだろうか?
そんなことを考えていると、胸が締め付けられて、呼吸が苦しくなる。学院の校舎を見上げると、その巨大な建物が、まるで私を閉じ込める牢獄のように見えた。
私はここから、出て行く。どこへ行くのかも、何をするのかも、まだ決まっていないけれど。でも、ここではないどこかへ。
この学院を去ることが、私の唯一の希望だった。
学院を去る日、私は誰にも見送られることなく、たった一人で馬車に乗り込んだ。きらびやかな校舎が、次第に小さくなっていく。
窓の外の景色は、だんだんと見慣れないものに変わっていった。
馬車に揺られながら、私はぼんやりと過去を振り返った。アルベルト様との出会いは、まだ私が幼かった頃だった。彼はいつも眩しい存在で、私は彼の影に隠れるように生きてきた。彼が私に興味を示すことは一度もなく、話しかけることさえ稀だった。私たちは、ただ「婚約者」という名前で繋がれているだけの関係だった。
それでも、私はどこかで期待していたのかもしれない。いつか、彼が私を見てくれる日が来るのではないかと。私の地味な努力に、気づいてくれる日が来るのではないかと。けれど、そんな期待は、彼の冷たい言葉によってあっけなく打ち砕かれた。
私が向かったのは、遥か北の山奥にある、とある魔物研究所だった。学院の掲示板に、たまたま研究助手を募集する小さな貼り紙を見つけたのだ。何の気なしに連絡してみたところ、意外にもすぐに採用が決まった。私のような魔力のない人間でも、地味な研究ならできるかもしれない。そう思ったのだ。
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