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第一章 勇者候補
003.契約
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手のひらの上に乗せられた救助代の請求書と、ケインさんを交互に見た。
もちろん、助けられたし、なんらかの形でお礼はさせてもらいたいけれど。
こんなに真正面に救助代を請求されるとは思わなかった。そもそも、救助代って何が含まれるんだ。
表し難い不思議な気持ちが込み上げてくる。
急いで中身を確認する。
移動費、回復魔法上級の使用、パンと水代。合計、銀貨五枚だ。
銀貨五枚⁈
俺の貯金をはたいたところで間に合わない。急に頭がズキズキしてきた。
「……少し先になってもいいですか? 俺、お金もってなくて」
彼は首を傾げ、瞬きをする。
「ずいぶんと困窮しているのですね」
「……パーティも組めてないんです。俺、10レベですし」
俺は拳をギュッと握った。
「そういうことでしたら、私が力になりましょうか」
今、なんて言ったんだ? 俺は顔を上げた。
ケインさんは懐からもう一つ筒状の紙を取り出した。広げると一番上に書かれた大きめな文字が目に入る。契約書、らしい。
膝の上にサッと置かれ、それを手に取る。
以下の事柄について、それぞれ以下の金額を請求。
回復魔法、防御魔法、呪い、毒、痺れなど状態異常の解除、鍵開け、衣食住の手配……。
俺は顔を上げ、深呼吸する。一旦落ち着こう。
「私がユウさんのパーティ加入するにあたっての契約書です。熟読したのち、こちらにサインをお願いします」
ケインさんに押し付けられそうになったペンを一旦断る。彼はペンを宙に放った。
彼の周辺をふわふわと浮く羽ペンはまるで生き物のようだ。……じゃなくて。
「俺10レベの弱弱勇者候補ですよ?」
「何も、そこまで卑下しなくても。それにユウさんがどんなに弱かろうと問題ありません。私は優秀な冒険者僧侶なので」
「そうじゃなくて……。なんで、俺のパーティに入りたいかっていうのがわからなくて」
「確実に救助代を回収するためです。そのご様子だと何年かかるかわかりませんし、また倒れられて追加料金……は、ユウさんとしても本意ではないでしょう?」
ケインさんは相変わらず綺麗な瞳をしている。
そりゃ追加料金は嫌だけど。回収したいから加入って、そういうこともあるの、かな?
俺の頭がまだ寝ぼけているのだろうか。軽く頬をつねる。ちょっぴり痛い。
「救助代を支払うまでの、一時的な加入……ってことですか?」
「いえ、継続的な加入です。私はあくまでサポーターですからね。パーティに加入した方が収入が安定します。もちろん、ユウさんの成長のお手伝いもいたしますよ」
ケインさんはまた一つ紙を取り出した。今度はなんだろうと中を見ると、細かい文字で色々書いてある。
サポート系の魔法一覧……かな? なんで今。流石にさらっとしか見れなかった。これ以上色々詰め込んだら頭がパンクしそうだ。
「私が習得している魔法とスキルの一覧です。おちついたらご一読いただけると幸いです」
全部鵜呑みにするのは違うと思うけど、本当ならかなりの実力者だ。
さらっと見ただけでも、とんでもない数だったし。
「すごい僧侶さん、なんですね?」
「はい。かつてフモト付近でも活動していましたが、今まで一度たりとも死者を出したことがありません。もちろん、今後も出す予定はございませんので、ご安心ください」
すごい自信だな。それにフモトって、今いる大陸の一番東にある町だし。なんでそんな遠いところにいた僧侶が、ここにいるんだ?
話せば話すほど疑問しか出てこない。彼の微笑みも、何かを隠すためのものにしか見えなくなってきた。
「救助代は払いきりますし、できれば協力もお願いしたいです……けど」
契約書もまだ読めてないし、さっきの魔法一覧表もそうだし。
というかパーティ加入ってそんな簡単な感じなのかな。
「お試し期間、みたいなのってダメですか? その、パーティ組むの初めてなので色々わからなくて」
「仮加入ですね? もちろん、構いませんよ」
彼は懐からまた別の紙を取り出した。仮契約用契約書、って用意がいいな。
あと、その懐どんな構造になってるんだろう。
もちろん、助けられたし、なんらかの形でお礼はさせてもらいたいけれど。
こんなに真正面に救助代を請求されるとは思わなかった。そもそも、救助代って何が含まれるんだ。
表し難い不思議な気持ちが込み上げてくる。
急いで中身を確認する。
移動費、回復魔法上級の使用、パンと水代。合計、銀貨五枚だ。
銀貨五枚⁈
俺の貯金をはたいたところで間に合わない。急に頭がズキズキしてきた。
「……少し先になってもいいですか? 俺、お金もってなくて」
彼は首を傾げ、瞬きをする。
「ずいぶんと困窮しているのですね」
「……パーティも組めてないんです。俺、10レベですし」
俺は拳をギュッと握った。
「そういうことでしたら、私が力になりましょうか」
今、なんて言ったんだ? 俺は顔を上げた。
ケインさんは懐からもう一つ筒状の紙を取り出した。広げると一番上に書かれた大きめな文字が目に入る。契約書、らしい。
膝の上にサッと置かれ、それを手に取る。
以下の事柄について、それぞれ以下の金額を請求。
回復魔法、防御魔法、呪い、毒、痺れなど状態異常の解除、鍵開け、衣食住の手配……。
俺は顔を上げ、深呼吸する。一旦落ち着こう。
「私がユウさんのパーティ加入するにあたっての契約書です。熟読したのち、こちらにサインをお願いします」
ケインさんに押し付けられそうになったペンを一旦断る。彼はペンを宙に放った。
彼の周辺をふわふわと浮く羽ペンはまるで生き物のようだ。……じゃなくて。
「俺10レベの弱弱勇者候補ですよ?」
「何も、そこまで卑下しなくても。それにユウさんがどんなに弱かろうと問題ありません。私は優秀な冒険者僧侶なので」
「そうじゃなくて……。なんで、俺のパーティに入りたいかっていうのがわからなくて」
「確実に救助代を回収するためです。そのご様子だと何年かかるかわかりませんし、また倒れられて追加料金……は、ユウさんとしても本意ではないでしょう?」
ケインさんは相変わらず綺麗な瞳をしている。
そりゃ追加料金は嫌だけど。回収したいから加入って、そういうこともあるの、かな?
俺の頭がまだ寝ぼけているのだろうか。軽く頬をつねる。ちょっぴり痛い。
「救助代を支払うまでの、一時的な加入……ってことですか?」
「いえ、継続的な加入です。私はあくまでサポーターですからね。パーティに加入した方が収入が安定します。もちろん、ユウさんの成長のお手伝いもいたしますよ」
ケインさんはまた一つ紙を取り出した。今度はなんだろうと中を見ると、細かい文字で色々書いてある。
サポート系の魔法一覧……かな? なんで今。流石にさらっとしか見れなかった。これ以上色々詰め込んだら頭がパンクしそうだ。
「私が習得している魔法とスキルの一覧です。おちついたらご一読いただけると幸いです」
全部鵜呑みにするのは違うと思うけど、本当ならかなりの実力者だ。
さらっと見ただけでも、とんでもない数だったし。
「すごい僧侶さん、なんですね?」
「はい。かつてフモト付近でも活動していましたが、今まで一度たりとも死者を出したことがありません。もちろん、今後も出す予定はございませんので、ご安心ください」
すごい自信だな。それにフモトって、今いる大陸の一番東にある町だし。なんでそんな遠いところにいた僧侶が、ここにいるんだ?
話せば話すほど疑問しか出てこない。彼の微笑みも、何かを隠すためのものにしか見えなくなってきた。
「救助代は払いきりますし、できれば協力もお願いしたいです……けど」
契約書もまだ読めてないし、さっきの魔法一覧表もそうだし。
というかパーティ加入ってそんな簡単な感じなのかな。
「お試し期間、みたいなのってダメですか? その、パーティ組むの初めてなので色々わからなくて」
「仮加入ですね? もちろん、構いませんよ」
彼は懐からまた別の紙を取り出した。仮契約用契約書、って用意がいいな。
あと、その懐どんな構造になってるんだろう。
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