世捨て魔王と世に捨てられた勇者達は互いに何を見る?

軽見 歩

文字の大きさ
10 / 42

第10話 ヤツが見ている

しおりを挟む
 あの処刑ショーの後、今まで通り気ままに旅を続けていたのだが・・・


「またか」


 どこかしらから私に向けられるの怪しい視線


「おい! 西の炭鉱が一夜にして何者かに全て掘り返されたらしいぞ!」


「なんてっこった、オラの仕事がなくなっちまっただぁ!」


 周りで次々と起きる怪現象


「おい!アンタ何か知らないか! 噂の出所をよう!」


「大きな声では言えませんが、壊滅した盗賊団の中に家族が居たんです! 何か知らないでしょうか?」


「知らん! 私の茶の邪魔をするな!」


 行く先々で野盗の大量失踪、資源の強奪などの怪事件が起き、そのせいで行く先々の人が情報を仕入れようと旅人である私に話しかけてくる事が多くなった。そして、この前など駅馬車で御者に・・・


「お客さん運が良かったね、ついこの前まではこの道は危なくて通れなかったんですよ」


「なぜだ?」


「山賊ですよ。ついこの前までこの辺りをアジトにして住み着いてたんですがね、それがある日突然皆殺しってな事があって・・・」


「それは返って危険ではないのか?」


「まあ、その殺ったヤツがまだうろついてたら危険ですが、ここ数週間なんも音沙汰が無いと来たもんで、こうして道が開通したんですよ。おかげで移動時間が短くなりました」


「・・・・ついに先回りし始めたか」


「ん? お客さん何か言いました?」


「馬車に乗れる時間が短くなって残念だよ」


「ハハハ!そいつは残念ですね。景色もこっちの方が良いからそうわ悪いことばかりじゃありませんよ」


 ・・・などと言う様な事も多くなった。そして今私はある港町に来ていた


「良い海だ」


 白い砂浜、エメラルドブルーの海、観光地とういう訳ではないが海が穏やかな日は海が開かれ海水浴が出来る港町。油断すると波に流される危険があるとかで普段は閉鎖されているが今日は運が良かった


「お客さん、海水浴なら水着に着替えて・・・」


 普段着で立っていたら海の監視員に声をかけられてしまった。私を気遣うとはなんと滑稽な、私と海が殺し合うとして死ぬのは海の方であろう


「いやいい、少し海底を散歩しに来ただけだ」


「は?」


 そうして私は穏やかな海に向かってゆっくり歩きだし・・・


「お客さッ・・・」


「やめろー!」


 ・・・たところ、浜辺の監視員に止められる前に砂浜の下から飛び出してきた勇者に羽交い絞めにされ止められた


「ついに出てきたな!このストーカーが! 寝首を掻く気ならさっさと出てくれば良いものを! 離せクサレ勇者が!!」


「断る! てか俺が鬱陶しいからって入水自殺するか普通!?」


 こいつも分かっていない様だ。私が窒息程度で死ねると思うか?


「自殺?何を言っている? 私はただ貴様が追ってこれない海底に旅立とうとしただけだ!」


「行かせるか!」


 ええい!まとわりついて鬱陶しい!


「離せと言っている! 私は自由な大海原の底を、平穏に!静かに!旅をしたいだけだ!!」


「だから行くなよ! 行くなら俺も一緒に行ける場所にしてくれ!もう隠れたりしないから!」


「私達は天敵同士だろう! なんでそんな奴と一緒にならなけばならんのだ!」


「その天敵ぐらいしか昔話を話せる様なヤツが居ないだよ! 昔の仲間は死んじまったか、出世して社会的な事情でかかわれないし、昔助けた連中も会おうもんなら巻き込んで迷惑かけちまうっ・・・!」


「こっちも迷惑してるわ! ベタベタくっ付くな!気色悪い!」


「行かないでくれよ! もう俺にはお前しかいないんだよ~ぉ!!」


 くそ!本気で吹き飛ばしやりたいが、本気でやり合ったら私の正体が! しかし周りの視線も痛い


「ねえ、なにあれ?」


「痴話げんか?」


「でも男同士だぜ、アレ」


 せめて同性愛者の疑惑は晴らしておくか。私は女の形態をとったのだが、その際に体格の変化からか、勇者は混乱して力を緩めた


「うお!?」


「今だ!」


 私は勇者を突き飛ばした。まだ混乱している勇者は尻もちをつきながら言ってきた


「お前、女にも化けられるのか」


「私はもともと両性具有だ。胸が邪魔だから普段男の姿になっているだけだ、まったく・・・」


 さて、周りの反応は


「あれ?女の人だ、中性的な顔だけど」


「なんだ、男装していただけか…」


「あの男から隠れる為かな?」


 無事に誤魔化せた様だ。私は胸が苦しいので、首のスカーフを外してベストとシャツの首元のボタンを外した。少しは楽になったが胸が膨らんだせいでシャツが上にあがって腹が見えてしまっている、お尻も少しきつい


「ずいぶん、立派なモノをお持ちだな」


 勇者のそんな言葉を聞いて、私の怒りはさらに上がった。姿を変えているのだ、多少暴れても問題ない、ここで仕留めてしまおう


「触りたいのか?」


「はい!」


「なら望みどうりにしてやろう!」


 私は行儀よく正座をして姿勢を正した勇者に、横薙ぎにおもいっきり胸を叩きつけた


「ボフンッ!」


 しかし手ごたえが妙だった


「見切られたか・・・」


 この打撃は対鎧用の浸透系打撃の応用だ。鎧とは着用者との間にすき間を作り衝撃を緩和させるが、その隙間を初撃で潰し、さらにその力に抵抗しようと無意識に力が入ってしまうのに合わせ次の一撃を加える、そうする事で内部に浸透する打撃が可能なのだ。柔らかい物を使えば粘る様な打撃になり効果も高い


「おうふ!」


 この技は生身の人間にも応用でき、内蔵を破壊する事も出来る。それを勇者は私が脳を破壊しようと放った頭部への一撃を右乳による初撃が当たった瞬間に脱力し、次に来る右乳ごしに来る左乳の一撃の威力を緩和した


「グシャア!」


 しかしそれでも威力は絶大で勇者は吹っ飛んで行った


「ゴロゴロゴロ・・・」


 勇者はうつむきながら膝を着き、鼻血を出しながら頬を赤くし何かを呟いていた


「すげえ・・・、すげぇとしか言葉に出ねえ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...