世捨て魔王と世に捨てられた勇者達は互いに何を見る?

軽見 歩

文字の大きさ
27 / 42

第27話 過ぎたるは猶及ばざるが如しにもほどがある

しおりを挟む
  たださまようのも暇なので、エルウッドを探してみる事にした私達


「トムにはアナタを気づかれない様に追う為って、気配遮断のアミュレットを持たせてたんだけど、大丈夫かい」


「問題無い、どうやらヤツはそのアミュレットを定期的に外している様だ。こちらに位置を知らせるためだろう、最後の気配からそう動いてはいまい」


 私の言葉を聞いて女勇者は舌打ちして吐き捨てるように言った


「ちっ!常に外して無いって事は気づかれたくない相手が居るって事だね、トラブル確定かいッ。急ぐよ!」


「ああ、そうしよう」


 急ぐと言うので転移魔法を使ってやったら・・・・


「グウォォォン」


「うぐ!?」


 ・・・・走ろうとした女勇者は転移先に居た羊に顔から突っ込んでしまった


「ボスッ」
  「めぇ~」


 しばらくの沈黙の後、やっと顔を突っ込んだ女勇者が口を開く


「なんで羊が・・・」


「転移魔法で移動させてやったからな。大丈夫かフランチェスカよ」


「獣臭い・・・。はじっめからこれ使えば国境越えも楽だったんじゃないの…」


「旅とは目的地にたどり着くよりも、その道中を楽しむものではないかな?」


「旅行気分のアンタにはそうかもしれないけどさぁ・・・。あ~油でべたつく、まったく畜生が」


 女勇者の言葉を聞いてバルディが冗談をポツリとと言った


「おや、迷える子羊に何たる暴言か」


「どう見ても子羊じゃなくて成体でしょ、ったく」


「シュ」
  「シュ」


 女勇者は香水を身体に吹きかけながら、時折体の臭いを確認している。帰郷面な事だ


「で、あるな。だがしかし、不注意からとは言え貴様に体当たりをされても無事とは、この羊ただ者ではないな」


「て、事はトムの仕業?」


 勇者の体当たりを受けて無傷の羊などそうそう居るはずがない。辺りを探せばヤツの痕跡を辿れるだろうと判断して気配を探っていたら、状況を飲み込めていない勇聖者が話しかけてきた


「我が死よ、この羊が何か・・・」


「静かにしろ、今耳をすませているところだ」


 周りの雑音の中から人の声を聞き分け、話の内容を聞いてみると・・・


「旅の人が畑仕事を手伝ってくれたおかげで作物が良く育ってくれただ」
  「ほんとだな」
     「大変だぁ!麦が丈夫過ぎて鎌の刃が通らねえ!」
「これじゃあ、収穫できねえっぺよ!」
   「なんじゃそりゃ!?」


・・・間違いなくヤツは居るな。次・・・


「最近さあ、ウチのニワトリが蛇にやられることが無くなったんだぁ」
「そうかぁ」
「それどころかこの間ヘビを食ってたくれぇでよ、一瞬コカトリスと見間違えただぁ」
「そんな元気になったべか」
「家出した息子にも見せてやりたかたっだぁ」
「まだ帰ってこねえべか」
「ああ、酔っぱらって着たモンを鶏小屋の近くに脱ぎ捨ててそれっきりだ」
「素っ裸で何やってだべかな」


・・・恐らくその息子はニワトリの元気な姿を嫌と言うほど見たであろう、遠くにも行っていない、ニワトリの血肉となりその卵が食卓に並んだのではないかな? 次だ・・・


「バルトの奴まだ来ないのか? もしかして見捨てられたのかな。フランの噂も聞かねえしどこ行ったのやら」


・・・居た!


「見つけたぞ、今飛んでやる」


「OK!」
「はい、我が死…」


 私達は勇者の元まで飛んだ


「うわ! なん…、バルト!フラン!やっと来てくれたか!」


「この辺りの小さな騒ぎは貴様の仕業かエルウッド。農夫が麦が刈れんと困っていたぞ」


「マジか、つい農家の血が騒いじまったけど、かえって迷惑かけちまったか。手伝てくる」


 「ジャキン☆」


 大鎌を持って行こうとする勇者を女勇者が止めた


「待ちなトム、こんな所で何してんのさ」


「ここで待ってれば来てくれると思ってな、噂は聞いてるだろ」


「噂って何さ…」


 まったく触れない事に我慢できなかったのか、勇聖者は二人の間に割り込んだ


「はじめましぃてぇえ!」


「はわぁ!? 勇王の手先か!!」


「バシュ」


 勇聖者は驚いた勇者に鎌で胴体から真っ二つに斬られてしまった


「あちゃあ…、やっちゃたか。うん、お見事」


「エルウッド、勇王とはなんだ」


「聞いてないのか? 名の通り勇者の王様だよ」


「ほう」


「名前はデューク・クプウルム、12代クプウルム王家正統後継者でありながら勇者と称される力を持つ変わり者
だ。本当に知らないのか?」


「その様な者が居るとの知らせを何度か聞いたことは有るが・・・、少なくとも直に顔を合わせた事は無いな」


「まあ、大事にされ過ぎて戦場にはあまり顔を出さなかったらしいからな。んで、そいつが最近各地に散らばった勇者を集めてるんだよ、魔界に攻め込むためにな。強引過ぎてこちとら迷惑だってのに」


 ついに人類側にもそういった者が表れ始めたか


「ほう…、それは面白そうな事を聞いた」


「あまり驚かないんだな」


「魔界への門を開く装置を開発している情報は耳に入っていた、もう実用段階までに及んでいたとはな」


 女勇者がいぶかしむ様な目で私を睨んで言う


「まさか、その集まった勇者叩き潰すとか言わないだろうね?」


「まさか、邪魔などはしないさ」


 勇者は私の言葉を聞いて目を点にする


「へえ、てっきり面白半分に身の程知らずの勇者王さまにケンカ売ろう、とか言い出すと思ったが」


「喧嘩を売る?馬鹿な事を、獲物に選択権など与えぬさ、誰にも、何者であろうとも、我が破壊をただ受け入れればいい」


「え、それじゃあ?」


「魔界の門が開き、勇王軍と魔族軍が衝突した所を真横から潰す、皆殺しだ」


 ああ、本当に楽しみだ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...