世捨て魔王と世に捨てられた勇者達は互いに何を見る?

軽見 歩

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第34話 残り物はガンバル。だがそれだけ

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 リーンの槍を咥え味見をし、物思いにふけっていた私であったが、リーンの奴がせかすので仕方なく相手をしてやることにした


「ぐぐぐぅッッ!」


いふぉらひふらほいれひょうほふだらほとよいくら力を入れようと無駄な事よ


 私は槍先を噛んだまま槍の柄を拳を叩きこみ砕いてやった、のだが・・・


「ガキィ!!」


 「む?」


 ・・・殴り砕いたはいいものを、感触が妙だ。これは?


「れぇい!!」


「ふぐっ!」


 私は上に放り投げられる。そのまま地面に頭から叩きつけられると悟った私は、身体を猫の様に捻り足から着地した


「ストッン!」

「ジャリン!」


 着地した直後に槍先を咥えた私の頭に向かって、リーンは大きく踏み込んだと同時に槍の石突きを投げた。私は口から槍を離し、そのまま距離を取って槍を確認した


「ほう、私が砕いたのは柄の表面だけだったか」


「ジャラジャラ…」


 リーンは柄の表面が砕けた後に残った鎖《くさり》を握っていた。それをリーンは頭上で振り回すと・・・


「ガキガキジャキン」


 ・・・破片が鎖の周りに集まり元の槍の柄の形状に戻る。感触が何やらジャリジャリしていたはずだ、その破片もよく見れば粒の様になっている。槍の柄の外側は元々簡単に壊れる様になっていて、あの鎖が柄の本体なのだろう


スピアとスルジンの両方の性質を持つのがこのルゥングニルの能力だ! 特と味わうがいい!!」


「味はもうみたのだが・・・・。先の方だけでなく竿の方も舐めて欲しいのか?」


「俺の槍を侮辱するな!!」


 怒るリーンは置いといて。スルジン?確かどこぞの島国の武器で鋲に重りのついた鎖がついた鎖鎌の亜種だったか? 紐の両端に石を付けたものもあったが、あの形状からして前者の方だろう。あの辺りの人類は武器の呼び方がいい加減で名前を聞いただけでは解りづらいのよな。なんにしてもだ


「変わった仕掛け武器だな。だが、それがどうしたというのだ?」


「今見せてやる!」


 リーンは私に槍を突き出して来たので、私はギリギリの所で避けたのだが


「ギリイィ!」


 槍の先辺りの柄が消え鎖がむき出しになり、たわむ様に回転が加えられた鎖が私の頬を抉った


「グン!」
 「チッ」


 さらに回転の方向が変えられ、鎖についた槍先が後頭部に迫ったが、それを私は屈んで躱して距離を取った


「ほほう、なるほどな」


 ハンカチで抉られた頬をポンポンと押さえて、傷口を元通りに回復させたてみせる。まあ、傷を治すのにハンカチは要らぬのだがちょっとしたお遊びだが、リーンには効いたようだ


「その運動機能に回復能力、人間にしては大した物よ」


「それはどうも」


 これ位の芸当なら人類にもマネできるであろうからな。現に不死身の男が側に居るのだし・・・


「ほほ、どうしましたぁ?」


「くそう! おかしいだろ!こんなのおかしいだろお!!」


 ・・・勇聖者はエルブにナイフでめった刺しにされながらも追い回している。煙を吹きだし刺さったナイフにまみれるその姿は、まさに人間蒸気機関というところか。電気の力で死者を蘇生させる実験があったが、もし電力の代わりに蒸気機関が使われていたらあのような姿になっていたかもしれん


「また、よそ見をしおってぇ!!」


 リーンは怒号を上げて遠い間合いから私に槍を突き出すと、筒状の柄の中をスルジンが移動し槍先が伸びて私に襲い掛かった。しかし3メートルほどの槍が6メートル近くになったところで私には大差は無い


「こうも来るか・・・。ふむ、小手先だけのお遊びだな」


「余裕をこいているんじゃねえ!!」


 私に避けられるや否や続けて私に槍を突き出してくる。連続で鎖のしなやかさを生かし複雑になる様、連続で突きを放ってきているが予想の範囲内の動きだ


「右、左、下、上、斜め、右曲がり、左曲がり・・・」


「いつまで体力が続くかな!!」


 ああ、やけに単調な動きだと思っていたらヤツめそんな事を考えての事か。こんな物、勇者だって3日3晩は続けて躱せるぞ・・・


「うらやああぁぁぁ!!」

「どりゃあああああ!!」


 ・・・その勇者もゲッテムとひたすら打ち合い接戦を繰り広げている。どうなる事やら。まあ、ここで勇者が死んだところで大した問題ではないが


「コッ」


「お?」


 気を抜いていたら伸ばされた石突きがやっと私に触れる事ができた様だ。巻き付きもしないし弱々しいものだが


「捕らえた!!」


 しかしリーンはなにを喜んでいるのか。私に石突きが当たった瞬間直ぐに柄を消しながら槍先を掴みあげる


「む」


 すると石突きが触れた部分に柄の粒状のパーツが集まり私の腕を包む様に固まった


「ジャリジャリン!」


 そして鎖がさらに絡みつく。リーンは私を引っ張り・・・


「おうりゃあ!」
   「グシャ」


 ・・・なんと、リーンは自分の腕にも鎖を巻き付け、さらに槍先を己が腕に刺した


「何のつもりだ?」


「貴様の流儀に付き合ってやる!殴り合いだ!」


 互いの左腕を紐で縛り付け、右手で攻撃し合う決闘方法か。しかしそれは本来刃物を持ってやる物では・・・。細かい事は良《よ》いか、うけてたとう


「いいだろう!」

「ガシッ!」 「バキ!」
  「グシャン」
     「バコン!」


 このまま何も考えず殴り合っていれば、のんびりと勇者の戦いも見物できるであろうからな
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