ヒーローズマキナ

鷹ピー

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第1章

13話 昇級試験開始

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「ブロンズランク昇級試験の説明をします」

ここは冒険者ギルドの中にある大きめな部屋で、その中に20人以上の人がひしめき合っていた。
比較的に人間が多いけど獣人、亜人、魔族なんかもチラホラ見られる。

そんな冒険者達の前に立っているのは支部長のバラオンさんと僕が冒険者登録した時に担当してくれた受付嬢のミラさんの2人だ。
バラオンさんは腕を組み冒険者達を見ているだけなので、説明しているのはミラさんだ。



試験の内容は、
この町の西にある森の中に古い遺跡があり、そこの何処かに赤い玉を隠したからそれを1人1つずつ見つけて日没までに帰ってくる事。

見付けられなかったり時間に間に合わなかったら失格になるという事。



「一番に帰ってきた奴には特別報酬を出すぞ!」
何も喋らなかったバラオンさんの一言で冒険者達がざわつく。


「特別報酬だってよ!俺等で1番取るぞ!」

「取れそうだったらね」
そして僕の隣もざわついていた。


「支部長あまり炊きつけないで下さい」

「これぐらい無いとやる気も出ないだろ?」

「・・・分かりました。それではこの部屋から出たら試験開始です。皆さん足下には注意して探索して下さい」
足下?何か仕掛けられているのだろうか。
それなら今回は僕のが活躍しそうだな。


「よし、これで説明は終わりだ。骨は拾ってやるから本気で頑張れよ?んじゃ、始め!」
バラオンさんの合図と共に冒険者が一斉に動き出した。



「お前等早くいけよ!」

「後ろ詰まってんだよ!」

「しょうがないだろ!入り口が狭くて出られねぇんだよ!」
その結果、1つしかない扉はとても混雑してしまっていた。


「おっしゃ!エイラ行くぞ!」

「え、どこ行くの」
頭以外のプレートアーマーを着たタツヤが、混み合ってる入り口とは逆の方へ走って行く。

今回、依頼をこなしてある程度お金が貯まったのでタツヤの装備を強化した。
因みに僕の装備は前と変わっていない。


「どこって、そこの扉からじゃ出られないから窓から出るんだよ!」

「あー・・・分かった」
僕達は窓から飛び出して試験が始まった。




西の森に入るとソナーを使いながら遺跡の様な場所を探す。
移動中にクッキーを食べて魔力補給しながら進むとソナーに反応が無い空間、つまり穴がある反応があったのでそこへ向かった。


「これが遺跡か?」

「穴を覗いた限りだと、ココみたいだね」
穴の中には大量の岩を規則正しく並べて作られた建物らしき物が数多く広がっている。
僕が記憶しているダンジョンみたいな所だ。


「よっしゃ!行くぜエルム!」

「あ、ちょっと!」
僕の制止が間に合わずタツヤは穴に飛び込んでしまった。
仕方がないので僕もタツヤの後を追って穴に入る。



「タツヤ、これからはすぐに飛び出すのはやめてよ。興奮するのは分かるけどさ」

「悪りぃ悪りぃ」
笑いながら謝っている辺りまたやりそうだな。


下に降りると穴の中は結構広い空間だと分かる。
魔力感知を使っても周りに何も反応が無いとなると、このまま奥に進めという事なんだろう。
まぁ真上に1人分の反応があるけど。


「タツヤ奥に進もう、ココには何も無いみたい」

「分かった」
ここで魔力感知を使ったのは安全を確認する他に目当ての赤い玉を探す為でもあった。
それはミラさんが赤い玉を取り出した時、魔力感知を使って魔力があるかどうか確認したら僅かに魔力の反応があったからだ。



「おい」
真上から声がしたので見上げると、資料室で会った魔族の青年がそこに居た。
彼はタツヤと同じ様にヘルムは被らず、胴と足にタツヤよりも重そうな金属製のアーマーを着ていて、大剣を背中に背負っている。
そして彼の装備は全て黒色に統一されている。


「あの時の」

「く、黒い鎧・・・だと」
彼が飛び降り地面に着地すると、彼の重みで少し地面が揺れた。


「俺はダルス。お前等と同じ試験を受けている者だ。この先に進むと言うなら俺と一緒に行かないか?」

「あ、僕はエルム、でこっちがタツヤ。僕は良いけどタツヤどうする?」

「もちろん良いに決まってるだろ!」
何だろう、タツヤが異常に興奮している。


「よし、それならさっさと行くぞ」
そう言ってダルスは遺跡の奥へと進み、僕達はその後に続いた。

遺跡の中は日の光が差し込んでいる訳でもないのに明るく、松明は必要なかった。
まさにダンジョンの様だ。


「なぁダルス、お前の装備ってどこで買ったんだ?」

「これか?東区にいるガンズと言う鍛治師に特注で作って貰った」

「うおっマジか!俺も今度、特注で作って貰うかな!」
タツヤはあの装備を見て興奮していたのか。
そういえばプレートアーマーを買う時も「もっと格好良いのはないか」って聞いてたっけ。



「っ!みんな止まって!」
僕の頭の中に鈴の音が鳴り響いた。
これは僕が持っている『隠者の感』と言う加護の効果で、近くに罠があると教えてくれる効果がある。

「どうした?」
ダルスが足を止めて聞いてきた。

「この先に罠がある」

「マジかエルム!」
魔力感知を使うと罠と思われる魔力溜まりがある事に気が付いた。

罠を探す時には魔力感知を使うか透視と言う魔術を使う。

透視と言うのは目に魔力を集中させる事で、魔力を使った軌跡などが見える様になる魔術だ。
こっちの方が魔法陣が見えてどういう罠なのか分かるんだけど、使う魔力量が多いから前世でも魔力感知を主に使っていた。


「ちょっと待ってて」
2人をその場に待たせて僕は魔法陣があった場所に向かった。

これはココを踏むと始動する罠か。
近くに壁が無いから落とし穴か上から槍などが落ちて来たりする罠だろう。

「解除」
これは罠や鍵を解除する時などに使われる魔術だ。

自分の魔力量と罠や鍵に込められた魔力量を比較して自分の魔力量が多い場合、罠を無力化できる。
魔力を込めていない場合は問題なく解除できる。



・・・解除できない。



「おーい、エルムどうしたー」

「あー何でもない。ここに罠があるから避けて通って」
解除できなかったという事は罠の魔力量が僕よりも多かったって事だ。
解除できなかった場合、術の分の魔力は消費される。

仕方がないので罠の部分を丸で囲い、そこを避けて通ってもらう事にした。


「解除できなかったのか?」
タツヤが先に行った後、ダルスが僕に話しかけて来た。

「あーそうなんだよね。罠の魔力量が僕よりも多かったみたいでさ」

「そうか」


この後も沢山罠があったけど、最初の3つに「解除」を使ったがどれも無効化できなかったので、それ以降は使っていない。




そして遂に遺跡の最奥と思われる場所についた。
そこには大きな扉があり、それに僕の加護が反応していた。

しかしここに来るまで一本道でここ以外進める所もないので、この扉の向こうに赤い玉があるとしか考えられない。

魔力感知を使って向こう側を探ろうとしたけど、扉に妨害魔術でも掛かっているのか探る事ができなかった。


僕にはこの罠に心当たりがあった。

前世で7つのダンジョンを攻略していた時、毎回ダンジョンの最奥には広い空間がありそこには強い魔物がいた。

そこを僕達は「ボス部屋」と呼んでいた。


2人にはこの先に強い魔物がいるかもしれないと伝え、3人で話し合った結果、扉を開ける事になった。

今の内に携帯食料を口に放り込む。



扉を開けると中から冷たい空気が出て来た。
中は遺跡というより洞窟と言った方がしっくりくる空間が広がっていて、部屋の外に比べると少し寒い。


部屋の中央には台座がありその上には赤い玉が沢山乗っていた。
魔力感知を使うとそれに魔力が宿っている事が分かる。

それに近付くと後ろから扉の閉まる音が聞こえて振り返ったら、案の定扉が閉まっていた。




うん、ボス部屋だね。

僕は何が出て来るのか内心ワクワクしながら何かが起きるのを待っていた。
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