悪役令嬢は追放エンドを所望する~嫌がらせのつもりが国を救ってしまいました~

万里戸千波

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2.食堂での嫌がらせ

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​ 翌朝。学園の食堂は生徒たちで賑わっていた。
 エリザベータは、ヒロインである男爵令嬢アリーシャが昼食のスープを運んでいるのを目撃した。

​(チャンス! あそこで足を引っ掛けて転ばせるとか? いや、それはあまりに品がない。もっと精神的に追い詰めるような、高貴な悪役ムーブを……!)

​ エリザベータは扇子を広げ、優雅にアリーシャのもとへ歩み寄った。
 そして、アリーシャが持っていたトレイの上のスープを見るなり、大げさに眉をひそめてみせたのだった。

​「あら、アリーシャさん。あなた、そんなものを召し上がるおつもり?」

​ アリーシャがビクリと肩を震わせる。

「え、えと、エリザベータ様……これは今日の限定スープで……」
​「見なさい。スープの油膜が分離しているわ。それに、わずかに鼻をつくこの酸っぱい匂い。厨房の管理体制がなっていない証拠ね」

​ エリザベータはアリーシャの手からトレイを奪い取ると、近くにいた給仕係を呼びつけた。

​「このスープ、発酵が進んでいるわよ。食材の保管温度に問題があるんじゃないかしら? こんなものを生徒に提供するなんて学園の恥だわ。直ちに厨房を点検しなさい。そしてアリーシャさんには、新しく作り直した特製ランチを用意して差し上げて!」

​ 給仕係は真っ青になって走り去り、厨房からは「腐った食材が混ざってたぞー!」という叫び声が聞こえてきた。どうやら食中毒の危機だったらしい。
 ​アリーシャは涙目でエリザベータを見上げた。

「エ、エリザベータ様……! 私が痛んだスープを飲まないように、わざと厳しく……命の恩人です!」
​「は?」

 ​エリザベータは扇子で口元を隠した。

(違うのよ! 私はただ、「貧乏人は粗悪な飯でも食ってなさい」的な嫌味を言おうとしただけで、衛生管理の不備を指摘したかったわけじゃないのにあまりに嗅ぎ慣れた匂いがしたから……っ)

 前世の汚部屋での経験が生きてしまった。
 周囲の生徒たちがざわめく。

「さすがエリザベータ様だ」
「一瞬で食材の異常を見抜くなんて」
「あの方こそ、次期王妃にふさわしい見識だ」

​(なんで!?)
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