3 / 14
お前を愛することは無い
初夜で宣言?
しおりを挟むおよ? ここ何処だ?
気がついたら目の前に、美味しそうなフルーツとチーズの盛られたお皿と、如何にも高そうですよ、という顔をしたワインの瓶とグラスのセットが並んでいるのが目に映る。
「何ここ? 高級ホテル?」
おかしい、こんな高級なモン家具屋の見本市位でしか見たことねーわ!? という位フッカフカの座り心地のソファーに座っているのにも同時に気がついた。
部屋は薄暗く、テーブルに置いてあるランプのホヤの中には見たことのない小石のような光源が中心に据えられ、柔らかく光が溶け出すように流れている。
――最新式のバイオエタノール暖炉か?
つい眉頭が寄ってしまってじっと見つめるが、なんか違う・・・
部屋の天井には天使のフレスコ画。
そこから下がるのはアンティーク調の小ぶりなシャンデリア。
窓に下がるカーテンは如何にも高級そうなアンティーク風なゴブラン織りで、サイズが天井近くから床まであるわ~長ッ!
掃き出し窓サイズのカーテンってめっちゃお高かったんじゃなかったっけ?
嫌な予感がして振り返ると天蓋付きのどデカいベッド・・・オウフ・・・
待て待て待て待て、なんか違うぞ嫌な予感がするよ?
何か大事~なことを忘れているような気がするよ・・・
『バターンッ!!』
ドアが急に開け放たれて、キラキラしい金髪碧眼の男が現れた。
――なんだコイツ? メンズモデルか?
原宿あたりで速攻スカウトされそうな目鼻立ちに長い手足とスリムでシュッとした体系はワールドモデルで通用しそうだ。
但し顔はイケメンだが表情は宜しくない。
如何にも不本意と言った渋顔で此方を睨んでいるのである。
「なんで起きて待ってるんだ!」
――知らんがな。今さっき気がついたトコでっせ?
「何を期待しているかは知らんが、俺はお前を愛するつもりは毛頭ないッ!!」
「??」
――いやぁ~、流暢に日本語喋るなあこのにーさん。
「なんであっけらかんとしてるんだッ! いつもの様に泣いて縋ってみろッ!!」
――・・・なんやコイツムカつくなぁ
「お前との婚姻など国の為にしたに過ぎんのだからなッ! これから後宮で泣き暮らせばいい。俺はアリアを第2妃に迎えるからなッ! お前など白い結婚で上等だッ! さっさと荷物を纏めて出ていく準備をするんだ・・・」
そのイケメンはそれ以上口を開くことは無かった。
今日娶ったばかりの隣国の王女に対して暴言を吐き鉄拳制裁を喰らったからである――主に鳩尾にキョーレツに強いヤツをかる~く5発ほど。
昔から『夫婦は最初が肝心』というではないか。
隣国の王女はそれを実践しただけである――他意は無い筈だ・・・
×××
「素敵~、飾りに旦那様の瞳の色の宝石が使われているのねぇ」
エメラルドグリーンの瞳をパチパチとさせ、ラディッシュ・ブロンドと呼ばれる強い紅色がかった美しいサラサラした髪が動く度にシルクの滝のように彼女の背中で揺れる。
王宮に呼ばれた商人は新しい職人によって作られたその道具を美しい王妃の特注品として大急ぎで作り上げたらしい。
「ピッタリだわ!」
少女のようにコロコロ笑う彼女はまるで妖精の様に愛らしい。
その変わった形の指輪は、地金は最近新しく生成されるようになったという鋼鉄で出来ていて美しく輝く純金でコーティングされた特注品で、4本の指をそのまま通すと指の根元にシッカリ装着される様に出来ていた。
「ありがとう。無理を言ったわね。代金の支払いは商業ギルドに振込んでおくわね」
商人は美しい王妃の笑顔に頷きながら、今日も眼福だと思いながら退出していった。
隣国から輿入れ後に様々な物を特注品としてデザインしては、真っ先に購入してくれるこの国の王妃は彼の大物取引先である。
『タケ』と呼ばれる東方の国の木で作り上げた長い剣のような『シナイ』と呼ばれるものは作るのに時間がかかったが良い出来だとお褒めの言葉も頂き、王宮御用商人の看板まで出させてくれた。
王妃は彼にとっては決して足を向けて眠れない尊いお方である。
今日も足取り軽く王城を後にする彼。
商人が去り、侍女達がお茶の用意のために退出すると
「さてと~。コレの試し殴りは今晩でいいかなぁ~。まーた経費の無駄遣いをしやがってあの野郎。ちょっと目を離すと碌でも無い事をしでかすんだから・・・」
この国の若い国王、つまりは彼女の旦那様は王子の頃から金遣いが荒いのだ――財務長官や宰相がいくら進言しても、馬耳東風。
貴族学院に通学し始めてからは下位貴族の令嬢に入れ込んで更に金遣いが荒くなった。
しまいにはその男爵令嬢を王妃にするなどという世迷言をほざき出したが、流石に国際協定違反になると言われて聞き入れられずに隣国の王女を娶ったのである。
王子妃には白い結婚を押し付けて後宮に閉じ込めるつもりだったらしい――但しこの国は一夫一妻制で後宮などは存在しないし、当然だが第2妃などという都合の良いものも無いのである。
どんだけお花畑のポンコツ王子なんだよ、と彼女は内情を知って頭を抱えた。
記憶には全く無いが互いの顔合わせで、王城に男爵令嬢を呼び寄せ茶会でマウントを取らせては王女を蔑む真似を何度もしてみたが、涙を見せる彼女なら言うことを聞かせられると王子と男爵令嬢は踏んだらしいのだが・・・
蓋を開けたら王女の前世は浪花の元レディースの特攻隊長で結婚後はバリバリの肝っ玉かあちゃん。
旦那を尻に敷いてキッチリ稼いでこいと手綱を握っていた倹約家・・・
王女も王子との結婚が嫌すぎて人格交代をしてしまったらしい――つまりは彼女も義務的な婚姻だったということである。
初夜で下手を打った新国王は王妃に尻に敷かれっぱなしだが、大臣達はお行儀が良くなったと泣いて喜んだ。
王妃はニッコリと新しく出来上がってきた『メリケンサック』を磨きながら呟いた。
「結婚は最初が肝心よねぇ~♡」
-----------了
男爵令嬢アリアはどうなったのか(~ ̄³ ̄)~は、知りません・・・
命があるとイイよね。
119
あなたにおすすめの小説
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』
ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、
王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。
しかし彼女に返ってきたのは、
「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。
感情論と神託に振り回され、
これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。
けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。
「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」
冷静に、淡々と、
彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、
やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。
感情で選んだ王太子は静かに失墜し、
理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。
これは、
怒鳴らない、晒さない、断罪しない。
それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。
婚約破棄の先に待っていたのは、
恋愛の勝利ではなく、
「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。
――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる