10 / 14
真実の愛を知ったんだ!
続々々・悪役令嬢のお父様
しおりを挟むそう、本来ならば義理の娘の心情など推し量れる様な細やかな配慮の出来る男では無いはずのエドモンドだが、今や中身だけはこの世界を舐めるように網羅した元ゲーマー。
ちょっぴりオタクっぽいのが気にはなるが、基本真面目で情には厚く、困った人には手を差し伸べる様な善良な人格の女性が今の彼の中の人である――
覚えている限りではあるが。
彼女――それともエドモンド?―― の灰色の脳細胞は前世のゲーム上の展開とエドモンドの知識の摺り合わせに高速で取り掛かった。
×××
レオハルト王子攻略の正規ルートだけの場合、婚約破棄後のロザリアは父である公爵の手配によって国外追放と見せかけて隣国へ留学。
そこで新たな伴侶を得て幸せを掴んだことになっていた。
これが裏ルートでヒロインがエドモンドルートに突入すると義父とヒロインの濡れ場を彼女が目撃してしまい、衝動的に家を飛び出して隣国の修道院に流れ着きそこで一生を過ごす事になる。
ゲームをやっていた当時はこの流れに対して『なんでやねん?』と感じたものだが、よくよくゲーム画面上のムービーを振り返ってみればエドモンド視点でのロザリアの表情は、12歳の時の初顔合わせの時からずっと彼と会うたびに目をキラキラとさせてうっすら頬を染めてエドモンドを見上げていた。
『あ~、そっか~・・・ ロザリアはエドモンドの事を父親じゃなくて男性として好きだったのか~・・・ 好きだった義父が自分と同い年の女性、しかも自分を排除した女を恋人にしたんだもん。そりゃ傷つくよねぇ・・・ エドモンドって恋愛経験値低そうだもんな~ その辺りの配慮ができなかったんだろ~な~・・・ って、今は自分がそのエドモンドだったわ! 裏ルートでヒロインが自分を選んだらまずいじゃん!』
罪のない筈の公爵令嬢が若い身空で修道院に行ってしまうではないか。
ソレは駄目だよ!
そもそもゲームだから仕方ないのかも知れないが元を正せばロザリアは婚約者である王子の浮気と肉食系ヒロインのやらかしの被害者である、と彼女の脳細胞はそう結論付けた。
×××
「殿下、王族として御身をお考えになられよ。それ以上は口に出すことはまかりなりません」
唸れ! 私の――エドモンドの?―― 灰色の脳細胞ッ! 公衆の面前で婚約破棄の上に国外追放なんて言われたら取り返しがつかないよッ!! なんとかこの場を乗り切るんだ~~~!
「其れはどういう意味だ公爵?」
エドモンドの言葉が気に入らなかったのか片眉を上げロザリアに向ける刺すような視線を公爵にそのまま向ける第三王子。
と、その周りの取り巻き達・・・ だったが。
「殿下の仰る、我が娘の『悪辣な嫌味』の内容はどう考えても常識的なマナーの範疇の内容であり、しかもソレを告げられるそこな男爵令嬢の振る舞いを見かねて筆頭公爵家の嫡女として貴族の子女のあり方を説いたに過ぎません。そもそも・・・」
18歳になったばかりの若者達に睨めつけるような視線を送り返しながら、娘にそれとなく寄り添い彼女の腰を抱くエドモンド――因みに目の前の仕事に全神経を集中している彼――彼女か?―― は、気が付いていないがロザリアの顔はすっかり薄紅色に染まっている。
そして元騎士、そして若き公爵としてのエドモンドの視線の強さに、思わずたじろぐ王子と愉快な仲間達。
「我が娘がその苦言とやらをその令嬢に言い聞かせるという姿勢を学園内で周りの生徒達に見せていたからこそ、殿下や周りの取り巻き達に対して彼女が市井の裏路地にいる春を売る淑女のような振る舞いをしていても何のお咎めが無かったのですよ? 何故そんな簡単なことが理解出来ないのですか?」
「なッ! なんですってッ?!」
エドモンドの言う『春を売る淑女』とは売春を生業としているプロの女性達のことだ。
この言葉でリリアは顔を赤くしたのだが、続けた言葉は要するに筆頭公爵家の令嬢であるロザリアが男爵令嬢、しかも庶子で貴族に仲間入りを果たしたばかりのリリアの取る不躾な態度を逐一注意をし続けているのを周りに見せていたからこそリリア嬢は未だに貴族の令嬢としては未熟で幼いのだという事を示していたのだ―― この辺りはエドモンドの知識を拝借した。
「そのような態度の下位貴族の御令嬢が未だに無事なのはどうしてなのかという事に気づくべきでしょう」
子供のする幼い振る舞いだからと周りの大人も多少の事は大目に見てくれて黙っている、つまり消される事なく生かされているのだという意味である。
「我が娘に対し、その恩に気付くことも無く未だにそのような振る舞いを続けるご令嬢が殿下の想い人ですか。いやはや成る程勇気あるご令嬢ですね」
要するに高位貴族の当主達が本気で邪魔者だと彼女を判断すれば下位貴族、ましてや男爵家の庶子など吹けば飛ぶような存在なんだよ、とエドモンドはこの場で公言したのに他ならない。
何事も親身になって叱ってくれる人がいるうちはまだ良いのだ。何をしても叱られない、注意もされないのはある意味見放されているのと同じなのだから。
この言葉を聞いて王子達壇上の者達以外の学生とその保護者達―― もちろん漏れ無く全員揃って貴族である―― が一斉に視線を向けた先は、レオハルト王子と彼の腕に胸を押し付けるようにしてぶら下がる男爵令嬢だった。
勿論彼等の視線が好意的では無いのが彼らにも分かったのだろう。
王子以下取り巻き達の顔色は一斉に悪くなった。
「殿下、このような公式の場で我が娘との婚約破棄を高らかに宣言したという事は、それだけその男爵家のご令嬢にご執心ということでしょう。つまり今、巷で流行りの『真実の愛』とやらを見つけたということでありましょう?」
「う。うむ、そうだ、私は真実の愛を知ったのだ! 故にリリアを私の妻として迎え将来的にはフォンド公爵家を継・・・」
――おいコラちょっと待てや。
「は? 何故我が公爵家が殿下の『真実の愛』とやらに関係あるのですか? 殿下はそこな男爵令嬢を妻に迎えるとまさに今、公言したばかりです。ならば陛下に直接願い出て臣籍降下し、新たな爵位を構え彼女を妻に迎える、若しくは男爵家に殿下が王権離脱し婿入りする。そのどちらかしか有り得ませんな。王族は下位貴族から伴侶を得ることは出来ないと王国法で決まっておりますので」
「いや、あの私はフォンド公爵家を継ぐ予定で座学を始めるから・・・ 次期公爵に・・・」
「殿下、お気を確かに。フォンド公爵家を継ぐのはロザリアの婿です。フォンド家の血を受け継いでいるのはロザリア。そして彼女の婿になった者との間に産まれる子供ですからね」
「いや、だがしかし・・・」
「この際はっきり申し上げますが例外はありません。貴方はロザリアの夫になる事を『否』と、この衆人環視の中で公言なさったのです。しかもこの場には国王陛下もいらっしゃいますので、陛下が殿下の言葉を『否』と是正しない限り王族としての殿下の言葉は行使されるべきでしょう」
「「「「「「え? 陛下?」」」」」」
この場には国王は不在の筈と、全員が会場を見回した。
「エドモンド、呼んだかー?」
遥か彼方の天井に吊り下がる超巨大シャンデリアから一本のロープが突然つつーっと垂れ下がって来て、そのロープをまるで猿のように伝いスルスルッと降りてきたのは誰あろうこの国の国王陛下。
――こういう人だよ、このヒト・・・
彼に振り回された近衛時代の黒歴史をエドモンドの記憶の中で見つけた時にはドン引きしたわ・・・
公爵が思わず遠い目になったのは仕方ないだろう。
―――――――
猿呼ばわりされる陛下・・・
もっいっぺんつづーく(_ _;)
192
あなたにおすすめの小説
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』
ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、
王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。
しかし彼女に返ってきたのは、
「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。
感情論と神託に振り回され、
これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。
けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。
「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」
冷静に、淡々と、
彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、
やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。
感情で選んだ王太子は静かに失墜し、
理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。
これは、
怒鳴らない、晒さない、断罪しない。
それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。
婚約破棄の先に待っていたのは、
恋愛の勝利ではなく、
「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。
――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
【完結】氷の侯爵と25夜の約束
朝日みらい
恋愛
雪の降る夜、平凡な伯爵家の娘セラフィーナは、義妹アデルの身代わりとして侯爵家に嫁ぐことになりました。
その結婚は愛のない〝契約婚〟。相手は王都で「氷の侯爵」と呼ばれる――ルシアン・ヴァン・ローレンス侯爵。
彼は冷たく、近づく者の心を凍らせると言われています。
「二十五夜のあいだで、私の“真実”を見抜けたら、君を妻として認めよう。
見抜けなければ、この婚姻は無かったことになる」
雪に閉ざされた白銀の館で始まる、奇妙な婚姻生活。
無口で孤独な侯爵と、臆病でまっすぐな花嫁。
互いに閉じ込めた心の扉を、少しずつ開きながら過ごす“二十五夜”とは――。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる