13 / 14
思考の放棄は許しません♡
朴念仁②
しおりを挟む「お前が最後だったんで心配していたんだ。令嬢との縁を大切にしてくれ」
婚姻式後。
披露パーティーの宴も酣な頃、要は貴族達の歓談が会場のあちこちで盛り上がっている真っ最中のことである。
花嫁が初夜の支度の為にその場を去った直後、件の王子が自分の側近である子息に話しかけて来た。
「俺が考え無しだったせいでお前まで巻き添えにしてしまった・・・すまん」
そういう彼は元々の婚約者候補の一人と既に婚姻を昨年果たしていたりする。
お相手は奇特なご令嬢の一人であり、今現在既に妻の尻に敷かれているらしいが新婚生活は概ね順調そうで来年の春には第一子が誕生する予定だ。
「いえ、殿下。私も考え無しだったと反省しております。せめてあの時の関係者全員が伴侶に恵まれるまではと、今迄自身の婚姻は保留にしておりました」
「相手がいなかったんじゃないのか?」
「いえ、そう言う訳では・・・元婚約者との縁は卒業後直ぐ白紙となりましたが彼女が嫁ぎ先で安定するまでは、と。見合い話もいくつか断っておりました所、焦れた陛下が王命で・・・」
「お前ねぇ・・・」
呆れた顔をする王子だが、そもそも目の前の男に文句を言えるような立場ではないのである。
元を正せば自分が聖女に舞い上がってしまったのが発端で、真面目すぎるこの男は最初王子を『聖女様の邪魔をしてはいけません』と止めていた側だったのだがいつの間にか流されるように聖女にほのかな恋心を抱いてしまい、彼女に婚姻を申し入れた挙げ句婚約者に逃げられたと王子は知っているからだ。
云うなれば巻き込まれ事故案件と言えなくも無く、今となっては黒歴史――
「すみません。ご心配をおかけしまして」
「はぁ・・・いや、まあ、頑張ってくれ」
なんとも気の抜けた応援を受けながら彼は主人に騎士の礼をしたらしい。
×××
一方若い夫婦の為に構えられた新しい寝室の大きな寝台の上で、喜び勇んだメイド達に磨き上げられ防御力はすんげえマイナスの? うっすいペラッペラスケスケだけどレースとリボンだけは、ゴージャスな初夜用に作られた夜着を着せられた新婦は、あまりの破廉恥さに目を回している所である。
――え、ちょっと待って、ナニコレ
いい加減花婿に嫌われていると思い込んでいる彼女が、こんな破廉恥な衣装を身に着けたところで元々低い好感度がだだ下がりになるではないかと不安になるのは仕方が無い・・・
「この衣装、チェンジで・・・」
「「「「「「「・・・」」」」」」」
自身が実家から連れて来た侍女はもちろん侯爵家のメイド達も彼女の懇願には無言でいい笑顔になっただけで終わり、そのまま一斉に頭を下げてドアからササ~ッと出ていってしまった。
最後にちょっとだけ振り返った侍女だけが『お嬢様、ガンバッ!』と、親指を立ていい笑顔で去って行く・・・
「待って~・・・ 置いてかないで」
彼女の呟きはパタンと閉まったドアで遮られ、残された彼女の心境は絶体絶命のピンチ! だろう・・・。
南無阿弥陀仏・・・
×××
「アナタ、大丈夫かしら・・・」
パーティー会場で来賓客との笑談を交わす侯爵夫人が、その傍らに立つ夫の耳元に向かって小声で囁いた。
彼女の視線は息子が先程出ていったばかりのドアに注がれているようだ。
「大丈夫って、何が」
「ほら、あの子ったら無口な上に説明下手でしょ? 」
「あーまぁ、うーん」
「婚約式の時も衣装選びの時も黙っちゃって、席次を決める時も中座しちゃうし・・・絶対に彼女、嫌われてるって勘違いしてると思うのよね・・・不安だわ」
「そうか?」
「部屋で取り返しのつかない事しでかしそうで・・・」
流石の侯爵夫人も今迄の息子の態度に思う所があったようで、何かと注意は重ねてきたのだが、とうとう結婚式当日まで彼の態度は硬いままで、全ッ然、変化がなかったらしい・・・心配で胃に穴が空きそうである。
白髪交じりの金髪碧眼だが若干童顔で若く見られがちな侯爵は妻が引きつった顔をするのを見て首をかしげる。
彼は2人いる宰相補佐の1人で、見た目からしてバリバリの文官職だ。
代々騎士を生み出す脳筋侯爵家において何故か現当主だけがえらく知能派なのはこの一家の謎だが、前当主も長男である彼が全く騎士には不向きだった為匙を投げたらしい。
因みに未成年なのでこの場にはいないのだが、次男も父のような文官を目指している模樣。
「そうだねえ、夫婦仲は言って聞かせてなんとかなるようなもんじゃないしね・・・」
「そうなのよねえ・・・」
妻が困った顔で溜息を吐いたが、
「まあなんとかなるだろ」
と、侯爵が眉を下げ苦笑いをした。
×××
一方、花嫁の退室から随分時間を空けて下がった侯爵子息は夜着だけはすっかりくつろいだ格好で、夫婦の寝室の前で仁王立ちのまま腕組みをして思案していた。
――坊っちゃんファイト~・・・
――お~い、ここに来て何故止まるッ
――はよ行けやヘタレッ!!
腹の中はどうあれ、表情は実に困った顔で廊下の壁際にひっそりと並んでいる従僕達・・・
――いつまで嫁さん待たすん?
――はよ、ほら、はよドア!
――腹減ったな・・・
散々迷った挙げ句にドアノブに手を添えようとしては引っ込める為、彼等は後ろで呆れ顔だ。
――この人閨の作法の勉強したよな?
――女遊びしなかったツケかねぇ。
――コレだからD神信者は・・・
意を決してやっとこさドアノブを握りそっと腕を動かす彼を見て、全員が
――やった! コレで部屋に戻れる
――解散ッ
――××ちゃんのとこ行こーッ!
とか思ったらしい。
115
あなたにおすすめの小説
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』
ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、
王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。
しかし彼女に返ってきたのは、
「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。
感情論と神託に振り回され、
これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。
けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。
「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」
冷静に、淡々と、
彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、
やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。
感情で選んだ王太子は静かに失墜し、
理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。
これは、
怒鳴らない、晒さない、断罪しない。
それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。
婚約破棄の先に待っていたのは、
恋愛の勝利ではなく、
「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。
――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。
遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした
おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。
真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。
ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。
「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」
「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」
「…今度は、ちゃんと言葉にするから」
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる