【完結】転生しちゃった物語り〜短編集〜

hazuki.mikado

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思考の放棄は許しません♡

朴念仁②

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 「お前が最後だったんで心配していたんだ。令嬢との縁を大切にしてくれ」


 婚姻式後。

 披露パーティーの宴もたけなわな頃、要は貴族達の歓談が会場のあちこちで盛り上がっている真っ最中のことである。

 花嫁が初夜の支度の為にその場を去った直後、くだんの王子が自分の側近である子息に話しかけて来た。


「俺が考え無しだったせいでお前まで巻き添えにしてしまった・・・すまん」


 そういう彼は元々の婚約者候補の一人と既に婚姻を昨年果たしていたりする。

 お相手は奇特なご令嬢の一人であり、今現在既に妻の尻に敷かれているらしいが新婚生活は概ね順調そうで来年の春には第一子が誕生する予定だ。


「いえ、殿下。私も考え無しだったと反省しております。せめてあの時の関係者全員が伴侶に恵まれるまではと、今迄自身の婚姻は保留にしておりました」

「相手がいなかったんじゃないのか?」

「いえ、そう言う訳では・・・元婚約者との縁は卒業後直ぐ白紙となりましたが彼女が嫁ぎ先で安定するまでは、と。見合い話もいくつか断っておりました所、焦れた陛下が王命で・・・」

「お前ねぇ・・・」


 呆れた顔をする王子だが、そもそも目の前の男に文句を言えるような立場ではないのである。

 元を正せば自分が聖女に舞い上がってしまったのが発端で、真面目すぎるこの男は最初王子を『聖女様の邪魔をしてはいけません』と止めていた側だったのだがいつの間にか流されるように聖女にほのかな恋心を抱いてしまい、彼女に婚姻を申し入れた挙げ句婚約者に逃げられたと王子は知っているからだ。


 云うなれば巻き込まれ事故案件と言えなくも無く、今となっては黒歴史――


「すみません。ご心配をおかけしまして」
 
「はぁ・・・いや、まあ、頑張ってくれ」


 なんとも気の抜けた応援を受けながら彼は主人に騎士の礼をしたらしい。



 ×××
 


 一方若い夫婦の為に構えられた新しい寝室の大きな寝台の上で、喜び勇んだメイド達に磨き上げられ防御力はすんげえマイナスの? うっすいペラッペラスケスケだけどレースとリボンだけは、ゴージャスな初夜用に作られた夜着を着せられた新婦は、あまりの破廉恥さに目を回している所である。


 ――え、ちょっと待って、ナニコレ


 いい加減花婿に嫌われていると思い込んでいる彼女が、こんな破廉恥な衣装を身に着けたところで元々低い好感度がだだ下がりになるではないかと不安になるのは仕方が無い・・・


「この衣装、チェンジで・・・」

「「「「「「「・・・」」」」」」」


 自身が実家から連れて来た侍女はもちろん侯爵家のメイド達も彼女の懇願には無言でいい笑顔になっただけで終わり、そのまま一斉に頭を下げてドアからササ~ッと出ていってしまった。

 最後にちょっとだけ振り返った侍女だけが『お嬢様、ガンバッ!』と、親指を立ていい笑顔で去って行く・・・


「待って~・・・ 置いてかないで」


 彼女の呟きはパタンと閉まったドアで遮られ、残された彼女の心境は絶体絶命のピンチ! だろう・・・。






 南無阿弥陀仏・・・



×××



「アナタ、大丈夫かしら・・・」


 パーティー会場で来賓客との笑談を交わす侯爵夫人が、その傍らに立つ夫の耳元に向かって小声で囁いた。

 彼女の視線は息子が先程出ていったばかりのドアに注がれているようだ。


「大丈夫って、何が」

「ほら、あの子ったら無口な上に説明下手でしょ? 」

「あーまぁ、うーん」

「婚約式の時も衣装選びの時も黙っちゃって、席次を決める時も中座しちゃうし・・・絶対に彼女、嫌われてるって勘違いしてると思うのよね・・・不安だわ」

「そうか?」

「部屋で取り返しのつかない事しでかしそうで・・・」


 流石の侯爵夫人も今迄の息子の態度に思う所があったようで、何かと注意は重ねてきたのだが、とうとう結婚式当日まで彼の態度は硬いままで、全ッ然、変化がなかったらしい・・・心配で胃に穴が空きそうである。


 白髪交じりの金髪碧眼だが若干童顔で若く見られがちな侯爵は妻が引きつった顔をするのを見て首をかしげる。

 彼は2人いる宰相補佐の1人で、見た目からしてバリバリの文官職だ。

 代々騎士を生み出す脳筋侯爵家において何故か現当主だけがえらく知能派なのはこの一家の謎だが、前当主も長男である彼が全く騎士には不向きだった為匙を投げたらしい。


 因みに未成年なのでこの場にはいないのだが、次男も父のような文官を目指している模樣。


「そうだねえ、夫婦仲は言って聞かせてなんとかなるようなもんじゃないしね・・・」

「そうなのよねえ・・・」


 妻が困った顔で溜息を吐いたが、


「まあなんとかなるだろ」


 と、侯爵が眉を下げ苦笑いをした。




×××



 一方、花嫁の退室から随分時間を空けて下がった侯爵子息は夜着だけはすっかりくつろいだ格好で、夫婦の寝室の前で仁王立ちのまま腕組みをして思案していた。


 ――坊っちゃんファイト~・・・

 ――お~い、ここに来て何故止まるッ

 ――はよ行けやヘタレッ!!


 腹の中はどうあれ、表情は実に困った顔で廊下の壁際にひっそりと並んでいる従僕達・・・


 ――いつまで嫁さん待たすん?

 ――はよ、ほら、はよドア!

 ――腹減ったな・・・


 散々迷った挙げ句にドアノブに手を添えようとしては引っ込める為、彼等は後ろで呆れ顔だ。


 ――この人閨の作法の勉強したよな?

 ――女遊びしなかったツケかねぇ。

 ――コレだからD神信者は・・・


 意を決してやっとこさドアノブを握りそっと腕を動かす彼を見て、全員が


 ――やった! コレで部屋に戻れる

 ――解散ッ

 ――××ちゃんのとこ行こーッ!


 とか思ったらしい。






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