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93 悩み
しおりを挟む悩みと言っても俺のプライベートに関する些細なもので、夢を毎日見るだけだ。
目が覚める寸前のほんの短い時間だと思う。
図書館の中で俺が勉強をしている場所から少し離れた場所でサーシャ嬢が本を読んでいる。
ただそれだけで夢の中で話したこともなかった。
目が覚めたら忘れる。
その程度の他愛も無い学生の頃の夢。
それが、彼女が入社した直後、目の前の席で本を読むようになった。
それが暫く続いた。
ところが秘書になった途端に夢の中で会話が成立し始めた・・・
場所が図書館じゃなくなり、色んな場所に変わったのもよく分からない。
彼女は夢の中で謎の行動をするが、大抵俺は呆れて目が覚めるだけ。
何故だか分からないが、秘書になったからだろうと自分なりに納得した。
ちなみに第1秘書は夢には出てこない。
念の為言っとく。
×××
「会長、毎年恒例の夜会のお誘いです」
第1秘書が、眼鏡のブリッジを人差し指で上げながら立派な金色の飾りの付いた封書を持ってきた。
「またか・・・」
「今年はパートナー同伴でお願いしますね」
昨年はアデラインがステファンの妻になった為、この夜会にはパートナー無しで出席した。
オルコットグループとの縁を持ちたいのだろうが、会場に入った途端に未婚の令嬢や未亡人に囲まれ大変な目にあったのだ。
特に秘書であるチャーリーは煤払いに追われ機嫌が特に悪かった。
「・・・クリスが出席するから俺は欠席で良いんじゃないか?」
「・・・私に言われましても」
大勢の貴族のヴィラの集まる有名な別荘地で行なわれる夜会は、暑気納めのようなもので1週間連日で開催される。
暇な連中には良いだろうが、商人気質の自分には面倒なだけ。
親父もこんな催し事が面倒で俺に席を譲って引っ込んだんだと思う・・・
あの人、商売以外には妻にしか興味がないからな。
「何日程出席するのか返事をしろとありますね」
「今年は煩いな?」
「・・・会長が客寄せパンダじゃないですかね?」
俺はやっぱり珍獣か?
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