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101 淑女

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 「へぇ、ちゃんと淑女に見えますね」



 「え?」


 驚いて若葉色の瞳が大きくなる。

 夜会会場の入り口で第1秘書チャーリーが俺にエスコートされているサーシャ嬢を見てそう言ったのだ。


 「おい、チャーリーいくら何でも失礼だぞ」

 「いえ、自分もここまで化けるとは思いもしませんでしたので、チャーリーさんがそう言うのも仕方ないと思いますよ」


 そう言って溜息を付く彼女は憂鬱そうである。



×××



 結局、煤払い女性除けに懲り々々だという彼の主張に折れた形で第2秘書サーシャが俺の同伴者として出席することになった。


 夜会には殆ど出席したことがないというサーシャ嬢は宝石どころかイブニングドレスも持っていなかった為、急遽商会で全て準備した。

 なんでも本人が両親や兄達からのプレゼントでさえ受け取り拒否をしていたらしい。


 「そんな馬鹿高い値段なら自分はその分本を買ってほしかったので・・・」


 自称本の虫らしい。

 ダンスは学園で習って以来踊っていないし、作法もよく分からないと恐々としていた彼女だったが仕事として割り切るように社長クリス命令が出たらしい。


 「すまない、今日だけ我慢してくれ。明日は予定通り社長クリスと交代するから」


 俺は欠席する気だったがクリスが今日まで王都で仕事になり、初日は俺が出席することになったのだ。


 彼女は両手をパタパタさせて


 「いえッ! 会長のお役に立てて私としては秘書冥利に尽きるので、気にしないで下さい」

 「その割には浮かない顔だぞ?」

 「あ~その・・・、実は母が」

 「?」

 「ドレス姿を写真にしたいと言い出しまして・・・」

 「良いんじゃないか? そのドレス一式は君に合わせてるから全部君のものだ。持って帰って写真館に行けばいい」


 俺がそう言うと途端にゲンナリした顔になるサーシャ嬢。


 「釣書に使うとか言い出して困ってるんですよ・・・」


 ああ、成る程。


 「父と兄達は母には逆らえませんし。私の言い分は全く耳にいれませんので・・・」


 一気に白くて綺麗な額の眉間にシワが寄る。


 「面倒くさいのは嫌いなので」


 なんか、見かけによらず男らしいな・・・

 ――あ、弟枠か。


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