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第三部 神と魔王
神の檻
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玉座の間は、静まり返っていた。
先ほどまでの激しい戦いが、まるで嘘のようだった。
砕けた床。
崩れた柱。
裂けた天井。
そして。
床に横たわるヴェルグ。
リュカはそのそばに膝をついていた。
動かない体を抱きしめている。
まだ温かい。
けれど。
もう呼吸はない。
「……ヴェルグ」
小さく呼ぶ。
返事はない。
何度呼んでも。
もう、返ってこない。
リュカの肩が震える。
涙が頬を伝う。
止まらない。
それでも。
腕を離さない。
その様子を、神は静かに見ていた。
しばらく何も言わない。
ただ、見ている。
長い沈黙のあと。
神が口を開いた。
「……終わった」
穏やかな声だった。
戦いの直後とは思えないほど、静かな声。
リュカは顔を上げない。
神の声が続く。
「魔王は死んだ」
事実を告げる声。
「もう、お前を奪うものはいない」
リュカの肩が小さく震える。
それでも。
何も言わない。
神はゆっくり歩いた。
砕けた床を越え。
リュカの前に立つ。
そして。
膝をついた。
リュカの目の高さまで、ゆっくり体を下げる。
「リュカ」
優しく名前を呼ぶ。
「帰ろう」
その言葉は、まるで昔と同じだった。
神殿で。
祈りの中で。
何度も聞いた声。
けれど。
リュカは首を振った。
小さく。
それだけだった。
神の瞳が揺れる。
「……どうして」
静かな声。
「もう全部終わった」
「お前を傷つけるものはいない」
「私が守る」
それでも。
リュカは動かない。
ヴェルグを抱いたまま。
そして。
小さく言った。
「……愛しています」
神の表情が止まる。
「ヴェルグを」
その言葉が落ちた瞬間。
玉座の間の空気が凍った。
神はしばらく動かなかった。
ただ、リュカを見ている。
その目には。
怒りも。
悲しみも。
そして――
理解もあった。
「……そうか」
神は静かに言った。
その声は、とても穏やかだった。
リュカは顔を上げない。
涙が落ち続ける。
神はゆっくり息を吐く。
「消えないんだな」
その声は、どこか寂しそうだった。
「魔王への愛は」
リュカは答えない。
けれど。
沈黙が答えだった。
神はしばらく考える。
そして。
ふっと微笑んだ。
「……なら」
小さく言う。
「仕方ない」
神の手が、リュカの頬に触れる。
冷たい指。
けれど優しい。
「お前は」
「私のものだ」
静かな声。
「たとえ」
「お前の心が」
「魔王のものでも」
リュカの体が震える。
神は続ける。
「それでも」
「お前は私の隣にいる」
その言葉は、命令ではなかった。
宣告だった。
神の力が広がる。
玉座の間が光に包まれる。
壊れた魔界の城。
そのすべてが、ゆっくり形を変えていく。
黒い石が白く染まる。
裂けた柱が再生する。
床に祈りの紋章が浮かぶ。
魔界の城が。
神殿へ変わっていく。
神の世界へ。
神の檻へ。
リュカは動かない。
ただ、ヴェルグを抱いている。
神はその様子を見ていた。
少しだけ目を細める。
そして。
優しく言った。
「大丈夫だ。時間は、永遠にある」
神の手が、リュカの髪を撫でる。
「いつか、お前は、私を愛する」
リュカは何も答えない。
ただ。
ヴェルグを抱いたまま。
涙を流し続けた。
神はそれを見て、微笑んだ。
なぜなら。
リュカはもう。
逃げられない。
永遠に。
自分のものだから。
先ほどまでの激しい戦いが、まるで嘘のようだった。
砕けた床。
崩れた柱。
裂けた天井。
そして。
床に横たわるヴェルグ。
リュカはそのそばに膝をついていた。
動かない体を抱きしめている。
まだ温かい。
けれど。
もう呼吸はない。
「……ヴェルグ」
小さく呼ぶ。
返事はない。
何度呼んでも。
もう、返ってこない。
リュカの肩が震える。
涙が頬を伝う。
止まらない。
それでも。
腕を離さない。
その様子を、神は静かに見ていた。
しばらく何も言わない。
ただ、見ている。
長い沈黙のあと。
神が口を開いた。
「……終わった」
穏やかな声だった。
戦いの直後とは思えないほど、静かな声。
リュカは顔を上げない。
神の声が続く。
「魔王は死んだ」
事実を告げる声。
「もう、お前を奪うものはいない」
リュカの肩が小さく震える。
それでも。
何も言わない。
神はゆっくり歩いた。
砕けた床を越え。
リュカの前に立つ。
そして。
膝をついた。
リュカの目の高さまで、ゆっくり体を下げる。
「リュカ」
優しく名前を呼ぶ。
「帰ろう」
その言葉は、まるで昔と同じだった。
神殿で。
祈りの中で。
何度も聞いた声。
けれど。
リュカは首を振った。
小さく。
それだけだった。
神の瞳が揺れる。
「……どうして」
静かな声。
「もう全部終わった」
「お前を傷つけるものはいない」
「私が守る」
それでも。
リュカは動かない。
ヴェルグを抱いたまま。
そして。
小さく言った。
「……愛しています」
神の表情が止まる。
「ヴェルグを」
その言葉が落ちた瞬間。
玉座の間の空気が凍った。
神はしばらく動かなかった。
ただ、リュカを見ている。
その目には。
怒りも。
悲しみも。
そして――
理解もあった。
「……そうか」
神は静かに言った。
その声は、とても穏やかだった。
リュカは顔を上げない。
涙が落ち続ける。
神はゆっくり息を吐く。
「消えないんだな」
その声は、どこか寂しそうだった。
「魔王への愛は」
リュカは答えない。
けれど。
沈黙が答えだった。
神はしばらく考える。
そして。
ふっと微笑んだ。
「……なら」
小さく言う。
「仕方ない」
神の手が、リュカの頬に触れる。
冷たい指。
けれど優しい。
「お前は」
「私のものだ」
静かな声。
「たとえ」
「お前の心が」
「魔王のものでも」
リュカの体が震える。
神は続ける。
「それでも」
「お前は私の隣にいる」
その言葉は、命令ではなかった。
宣告だった。
神の力が広がる。
玉座の間が光に包まれる。
壊れた魔界の城。
そのすべてが、ゆっくり形を変えていく。
黒い石が白く染まる。
裂けた柱が再生する。
床に祈りの紋章が浮かぶ。
魔界の城が。
神殿へ変わっていく。
神の世界へ。
神の檻へ。
リュカは動かない。
ただ、ヴェルグを抱いている。
神はその様子を見ていた。
少しだけ目を細める。
そして。
優しく言った。
「大丈夫だ。時間は、永遠にある」
神の手が、リュカの髪を撫でる。
「いつか、お前は、私を愛する」
リュカは何も答えない。
ただ。
ヴェルグを抱いたまま。
涙を流し続けた。
神はそれを見て、微笑んだ。
なぜなら。
リュカはもう。
逃げられない。
永遠に。
自分のものだから。
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