俺の異世界生活は一瞬にして終わりました。

序章

旅の始まり

 目の前にとてつもなく綺麗な女性がいる。髪は長く、薄い桜色。目は綺麗なサファイアのような色をしている。とてつもなく美しい。なんでこんな美人が目の前にいる？状況がわからん。

「神城恭弥さん、あなたは死にました」
「は？」

突然下された死んだ宣告、俺には理解できなかった。しかも、周りにはなにもない。あるのは目の前の美人と俺だけだ。

「てか、俺死んだの？」
「はい、死にました。あなたは、塾の帰り道で暴走車にひかれ、死にました」
「マジですか」
「マジです」

あー、俺死んだんだ。まだやりたいことあったなー。受験勉強頑張ってたのに。こんなとこで人生終わるとはなー。

「晴人と陸はどうしてる？」

晴人と陸は同級生で同じ塾に通っている。

「耳に入ってると思いますが、何事もなかったかのようにサッカーをしてます」

死ね。もうあいつらのことは忘れよう。あー、死後の世界ってどーなってんのかなー。楽しいのかなー。俺は現実逃避気味になにもないこの場所を眺めていた。

「そこで恭弥さん、転生しませんか？」
「転生？」
「はい、転生です。ある世界に行って勇者になってもらいます。そして、魔王を倒してもらいます」
「あー、よくラノベとかでよくあるあれね」
「そう、あれです！興味ありませんか？」
「でも、そんなこと突然言われてもなぁ」
「そー言うと思いました。そこで！今日はお客様感謝デーとして、聖剣デュランダルをプレゼント！まだまだいきます！プラスして、剣術スキルマックスでスタートしていただきます」

なんだその通販みたいな言い草は。てか、なんだよ、お客様感謝デーって。ここの客になんてなりたくねーよ。しかし、お得だと思う。人生リスタートできるし、最強スタートだし、言うことないんじゃないのか？やってみてもいいとは思う。

「まあ、そんだけ特典ついてんならいいか。なんか楽しそうだし。俺を転生させてくれ」
「よろしいのですね」
「ああ、頼む。あ、その前にその世界の概要というか説明とか聞きたいんだけど」
「そういえば説明してませんでしたね。恭弥さんに行っていただくのはアールベルト帝国です。人口は約90万人、その一部の人が冒険者として生活しています」
「その冒険者ってのは？」
「恭弥さんと同じく魔王を倒すためにレベルを上げ、強くなるために冒険している人達です。魔物を倒して、ギルドで換金することで生活しています」
「なるほどね。まあ、わかったわ。よし、行こう！」
「乗り気ですねぇ」
「うるせぇ。早くしろ」
「では、最後にステータス確認をお願いします」

目の前に透明な板が出現した。そこに白い文字でなにやら記されている。

「ねぇ。これ何語？全然読めないんですけど」
「あ、そーですよね。今、恭弥さんの脳にアールベルト語を書き込みますね」

頭に激痛が走る。頭が割れるように痛い。久しぶりにこんな痛みを味わった。死んだ時は全然痛くなかったのに…。死ぬのって一瞬なんだね。そんなことを考えていると、徐々に痛みが治まってきた。すると、記されている文字が読めるようになっている。あぁ、もし生きてたらこれで英語覚えたかったや。

神城恭弥 16歳  Lv.1
職業 勇者
生命力500
魔力150
素早さ250
知力100
筋力250
装備  聖剣デュランダル
スキル  剣術Lv.100
アスタロトの宣告

「あれ？俺18歳なのに16歳になってんじゃん」
「それはですね、アリシア帝国では16歳で成人し、職業を選ぶからです。そのため、16歳スタートにさせてもらいました」

なんか若返ってるし…。まあ、そんなの関係ないか。職業勇者って厨二っぽいなぁ。

「それとさー、アリシアの宣告ってなに？」
「そういえば名乗っていませんでしたね。私はアールベルト帝国の女神アリシアです」

うわぁ。うさんくせぇ。

「そして、アリシアの宣告は私が転生させましたよっていう称号です」
「で、その称号を持ってるとどうなるの？」
「レベルや、スキルが向上しやすくなります」
「なるほどね。これもチート能力か」
「なんですか、チートとは。人聞きの悪い。私が好意で転生させてあげるんですから感謝してくださいね」
「はいはい。まあ、一通りわかったんで、転生させてくれや」
「了解しました。我、アリシアの名において命ず、開門せよ」

アリシアが呼びかけた瞬間、俺の頭上に青く光る巨大な魔法陣が現れた。そして、それに吸い込まれていくかのように、体が浮いた。

「ご武運を」

アリシアの声が遠く聞こえる。せっかく転生したんだし、異世界生活楽しみますか。


……………………………………………


「なんだここ」

目覚めると俺は町で立っていた。周囲を見渡してみると、ポツポツと家が建っている。煉瓦造りのようだ。建っている家の数からして町というより村である。地面は舗装されておらず、土のままだ。空は青く澄み渡り、遠くには険しい山々が見える。異世界って感じ。

「マジでわけわかんねぇ。こっからどーすればいいんだ？」

足元をみると水たまりができていて、そこに自分の顔が写っているはずなのだが明らかに違う。なんか、カッコよくなってる。茶髪になってる。自分の顔に見惚れていると、

「どうした坊主。ここらじゃ見ねぇ顔だなあ、どっから来たんだ？」

声をかけられた。ここら辺に住んでそうな桑を持ったゴツいおじさんだ。一瞬このおじさんはなにを言っているのか理解できなかった。あ、そっかここ、アールベルト語なんだ。ようやく理解した。

「おい！聞いてるか？」
「あ、すみません」
「で、どっから来たの？」
「転生して…」

あ、やべやべ。こういうのは言っちゃいけないやつだ。

「隣の村から来ました。で、どうすればいいのかわからず困っているのですが…」
「ってことはお前16歳か」
「はい」
「で、職業はなににするか決めたのか？」

んー、なんて答えればいいんだろ。勇者？いやいや、それじゃおおごとになる。まあ、とりあえず、

「冒険者です。」

そう答えることにした。

「冒険者ね。だから、剣持ってんのかって……お前その剣どうしたんだ」

考えてみれば、この腰にぶら下がってる聖剣デュランダルは明らかに新米の冒険者が持ってていい代物ではないだろう。いや、持ってる人なんていないはずだ。

「どうしたんだって、アリシアから貰ったんですよ……あ、」
「アリシアってあのアリシア様か？！」

あ、やっちまった。やべ、逃げよっかな。

「ということは、あなたは勇者様か！これまでのご無礼おゆるしください」
「ちょ、やめてください。みんな見てますから」

あー。早速バレた。どーすんのこれ。のんびりとやってきたいのに……。