最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

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5 王子は辺境の領主となる

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 ゴード王国の第3王子アーサーは、国内に侵入してきた敵国を見事に抑撃し撃退した。

 彼は国軍を率いて王都イスタンに凱旋し、王都の住民からは大歓声で出迎えを受けていた。



 王宮まで続くメインストリートには、人目でも彼を見ようと多くの住民が押し寄せて、両側の建物の上層からは多くの花びらがまかれ、アーサーが進む空間を美しく飾っていた。



 金色のくせが強い髪の毛、目が大きい美しい顔のアーサーは数多くの歓声を受けながら、ほんとうは誇らしく堂々とすれば良いのに、目がきょろきょろと泳いでいた。



(恥ずかしい! みんなに喜んでもらうことはとてもうれしいけれど、注目のまとになるのは苦手! それに今度の戦いはうまくいかなかったことも多い……)







 アーサーは王宮に入り、大広間で父親のヘンリー国王に戦勝報告をした。

 兄のウィリアムとギルバート、2人の王子も同席した。



「アーサーよ。このたびの敵国軍の抑撃見事である。おまえに任せた第3国軍は、わずか1万人であった。それで敵国12万人の軍隊を撃退したとは人間わざではない。」



「父上。実は進軍の途中で、ランカスター公爵が我が国最強の軍5万人を全て引き連れ加わっていただきました。そのため、戦力差をかなり埋めることができたのです。」



「うん。ヘルムートがおまえの軍に加わったことは知っていた。しかし、それにしても戦力差は2倍にもなる。2倍の差をひっくり返して勝てるとは、たいしたものだ。」



 国王がアーサーを賞賛していることを聞いていた次男のギルバートが、口をはさんだ。



「アーサーが戦略を考えたのでしょうか? 父上、援軍に加わったヘルムート・ランカスター公爵は我が国最高の将軍であり軍略家です。アーサーは、単に公爵に助けられただけではないでしょう。」



「ヘルムートがいたことを考えれば、普通はそう思うがな。しかし、今回の戦いの戦略は全てアーサーが考えたことだよ――ヘルムートが早馬で伝えてきた報告に全て書かれていた。」



「ほんとうですか。」



「初戦は、負けを大げさに演じて撤退する。相手の大群を、山々に囲まれた狭く細長い場所に陽動して動きをとりづらくする――全軍に指示する時、アーサーは『閉じ込める』という表現を使ったそうだ。」



 長男のウィリアムが意見を述べた。



「戦いに勝ったアーサーの功績は認めます。しかし、総崩れで我が国から逃げ出した敵を、なんで徹底的に追撃しなかったのでしょう。していたとすれば、まだここに戻っていないでしょう。」



「確かにそういう考えもある。アーサーよ、どうして徹底的に追撃しなかったのだ。」

 国王の問いに、アーサーはおずおずと答えた。



「12万の敵軍を狭い場所に閉じ込め、山の上から我が軍が莫大な数の矢を放った時、たぶん3万人以上の敵軍が命を落したでしょう。……それ以上の命を奪いたくなかったのです……」



 2人の兄たちが半ば怒って声を上げた。



「なに! 」

「敵軍の命を奪いたくないだと! 」



 兄の王子達がアーサーをさらに責めようとしたが、ヘンリー国王が制止した。



「その点だが、ヘルムートは報告の中で高く評価している。『敵の心を折った瞬間に、大音量で逃げるように促した。戦いを続け、敵を究極に追い詰めれば、息を吹き返し我が軍の負けもあり得た。』」



 国王のその言葉を聞き、2人の兄達は黙り込んでしまった。

 アーサーがあわてて言った。



「ヘルムート・ランカスター公爵がそう見ていただいたのは、ほんとうにありがたいです。ただ、私はほんとうに運が良かっただけなのです。」



「そうだな。単にツキがあっただけだな。」

「たぶん、そうに違いない。」



 国王は厳しい言葉で、兄の王子達をたしなめた。



「手を上げないおまえ達を差し置き戦いに出ようとした時、そして戦いの最中、ほんのわずかな時間でたくさんの判断をするには、アーサーは勇気を振り絞ったに違いない。『幸運は勇者に味方する』のだ。」



 国王はさらにアーサーに向かってたずねた。



「アーサーよ。今回の戦いの勝利に対して何か褒美を与えて、その栄誉を讃たたえたいと思う。何か希望はあるか。」



「父上、私は2人の兄上に戦いの指揮をとることを譲っていただいたのです。褒美など何もほしくはありません。」



「それは許さないぞ。既に国民の全てが、我が息子アーサーがゴード王国存亡の危機ともいえる戦いを勝利に導いたことを知っている。国王がそれに答えなければ、人心を失い国王失格と言われるわ。」



「…………それでは、今度の戦いの戦場となったゴガン州を領地としていただき、そこに城を築き統治したいのですが。私は三男ですから、この王都イスタンを出て国境の守備につきたいのです。」



「それで良いのか? ゴガン州は辺境で、しかも作物があまり育たないやせた土地ばかりだ。住民の心もかなり荒れており、盗賊になる者が多く治安が最悪だと聞く。大丈夫か? 」



「はい。やせて治安が悪い最悪の地方を、素晴らしい地域に変えてみせます。お二人の兄上が了承していただければ、褒美としてゴガン州をいただきたく思います。」



「どうだ。ウィリアム、ギルバート、異議はあるか。」



 できの良い弟を王都より追い出し価値がない辺境の領主にすることに、全く異存なかった。

 心の中でこの結果を大いに喜んでいた。



「国王陛下のお考えのままに。」

「異議などあるはずもありません。」



 実はアーサーは、2人の兄の何倍も喜んでいた。



(ゴガン州は、頼りになるヘルムート・ランカスター公爵の領地と接している。それに御令嬢のクラリスさんと会うことができる機会も多くなるに違いない!!! )



 アーサーは、光り輝く黒色の髪、透き通った海のように青い瞳で自分を見つめた美しい顔を想い出していた。

 優しい言葉を想い出し、心がいやされ温かくなった。
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