婚約破棄され両親の命を奪われました~聖女は過酷な巫女修業で強くなり運命に抗い、幸せをつかみます

ゆきちゃん

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17 黒魔女の妹

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「聖女様―― 」



 酒場の中がシーンと静まり返った。



 やがて、礼拝している人々の中から1人の老人が立ち上がった。



 老人は腰がとても痛いようで、杖を使いヨロヨロとようやく立ち上がった。



 その足取りはのろく、カタリナと悟のそばまで必死に近づこうとした。



 2人はびっくりした。



「私はこの町の町長、ラースと申します。聖女様と騎士様ですね。このような田舎によくお出でいただきました。大変恥ずかしい光景をお見せ致しました」



「いえいえ。毎日一生懸命働いて、お酒を飲んで心を休めることも必要なことだと思います。‥‥ただ、このような昼間から‥‥少し驚いています」



「聖女様のおっしゃるとおりです。こんな昼間から酒を飲みドンチャン騒ぎとは、あってはならないことです。しかし、このようになったのも特別な事情があるのです」



「特別な事情ですか? 」



「この国、チューリッヒ王国は、豊かな農産物に恵まれて。みんな幸せに過ごしていました。農民がほとんどですが、働くことの尊さ、楽しさをみんな知っていました」



「そんなみなさんが‥‥ 」



「はい。この国は1年前、黒魔女によって征服されたのです。そして今は、黒魔女ロゼがこの国の女王で、国民に自堕落な快楽にふけることを強制しています」



「その黒魔女は1人で国を征服したのですか? 」



「はい。『チャーム魔術』によって、国軍の男達を一瞬にして全て自分のトリコにしてしまいました。今や国軍は黒魔女に絶対服従しています」



「とても強い魔術なのですね」



「そうです。黒魔女のチャーム魔術は、その人間が美しいと思う対象を、彼女だけにしてしまい強く拘束します。彼女を見るだけで、信じられないほどの快感なのです」





「ところが、です!! 」



 1人の若者が立ち上がり話し始めた。



「さきほど聖女様に注目し聖女様を見た瞬間から、心の中の拘束が全て解けました。そして、快楽だけにおぼれていた私達は、とても恥ずかしいと思いました」



「よかったです」



「聖女様は不思議な力をおもちですね。お姿もこの世のものだと思えないくらいに大変美しいのですが、優しくて心を暖かく私達を包んでいただきました」



「ありがとうございます。私を見るだけでそのように感じていただいて、とても光栄に思います」



「聖女様。失礼致します。手入れをほったらかしにしていた自分の畑がとても心配になりました」



「俺も」

「私も」

「僕も」



 さきほどまで酒を飲んだくれていた多くの若者が立ち上がった。



 そして、しっかりした足取りで酒場を出て行った。



 ラース町長は涙ぐんでいた。



「聖女様。心の中から感謝申し上げます。働くことを忘れた若者達の将来はありません。聖女様が彼らの未来を取り戻してくださりました」





 黒魔女ロゼは箒に乗って空を飛んでいた。



 自分が女王として統治している国の状況を視察していた。



「ああ、それにしても行っても行っても畑ばかり、しけた国ね。お姉様にお願いしてもっと豊かな国の女王にしていただこうかしら」



 黒魔女ロゼは、魔王リューベから人間界征服の総司令官に任命されている魔王

ローゼの妹だった。



 黒魔女ロゼがしばらく空を飛んでいると、彼女が予期しない光景を見た。



 たくさんの人々が畑の中で働いていたのだ。



「あ――――っ あり得ないわ。なんで大勢が働いているの。私が折角、チャーム魔法で魅惑し快楽を求めることを教えてあげたのに」



 黒魔女ロゼは急いで、チャーム魔法を空の上から放った。



「私の魅力を最大限の魔力に乗せて届けるわ。チャーム!! 働くことを直ちに止めなさい!! 」



 ところが結果として、黒魔女の黒魔術は少しの効果がなかった。

 黒魔女ロゼは仰天した。



「えっ!! えっ!! えっ!! どうして?? 」



 そして黒魔眼で働いている人々を見た。



「あっ。何かが彼らを守っている。あのオーラは‥‥ げっ!! お姉様がいつも言っている聖女の神聖オーラだわ!! どこかに聖女がいるの!! 」



 すると、畑から離れた町の方向に強い力を感じた。



「聖女の神聖オーラ、見――――つけてた。これは良いチャンスだわ。聖女を始末してお姉様に認めてもらうのよ!! 」





 その頃、カタリナと神宮悟は町を出ようとしていた。



 街道を歩き、チューリッヒ王国の王都に向かっていた。



「カタリナさん。いろいろとわかりましたね」



「町長さんが教えてくれました。私の国ロメル帝国は、残念ながら侵略国家になったようです。魔界の力を武器にしてたくさんの国々を属国にしてしまいました」



「魔界の力とは?? どういうものなんでしょうか?? 」



 悟がそう言った時、街道を歩く2人の前方に空から何かが落下した。



 その落下は大変な勢いで、うまく着地できなかった。

 カッコ悪く、その場でこけていた。



「いてててて―― あら、ごめんなさい。イケメンさん。教えてあげるわ。魔界の力っていろいろあるわよ。チャーム!! 私の僕しもべになりなさい」



 黒魔女ロゼは神宮悟に最強の黒魔術をかけた。



 しかし、それは全く効果がなかった。

 またしても、自分の黒魔術を完全に拒否されて黒魔女はあせった。



「えっ、まただめなの!! おかしいわ!! ‥‥そこの2人、どういう関係なの?? 」



「どういう関係って、僕の横にいるのがカタリナさん。聖女です。そして僕は聖女の最終守護者、神宮悟です。ところで、あなたは?? 」



 カタリナが横で言った。



「悟さん。この人は明らかに黒魔女です。しかも、私がよく知っている黒魔女に似た暗黒オーラを感じます」



「あらあら、聖女様。私のことを正確に分析していただきありがとうございます。名乗ります。私は黒魔女ロゼ。そしてカタリナさんは驚いているかもしれません」



「はい。大変、驚いています。暗黒オーラから感じます。あなたは、あの黒魔女ローザの姉妹ね!! 」



「はい。正解。私は魔界最高の黒魔女にして、実質的に魔王リューベ様の婚約者、そしてそして―― 誰かさんの両親を殺した仇かたき、ローザの妹です」



「‥‥‥‥ 」

 カタリナは黙り込んでしまった。



「カタリナさん。大丈夫ですか」

 悟が心配した。



「大丈夫です。あなたが横にいるから」



「何言っちゃてるの!! もっと怒りなさいよ!! その超絶きれいな顔をゆがめなさいよ!! ほんとうに嫌なやつね!! 」



 これには、悟が激怒した。



「怒っているに違いないじゃありませんか。目の前で愛する両親を殺されたのですよ。ほんとうに黒魔女は存在自体が許さない!! 」



 それを聞いたロゼは、無気味にニタニタ笑った。



「ありがとう。聖女の最終守護者さん。それでは、立派に聖女様を守護してみなさい。『いでよ!! 魔物の最強軍団!! 』 」



 突然、周囲が暗くなり、別の空間になったようだった。



 そして、黒魔女ロゼのすぐ後ろには、終わりが見えないくらい無数の魔物の群れが遠くまで整列していた。
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