結婚式から異世界転生~運命に抗う

ゆきちゃん

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3 心属性の魔女との戦い

16  怠惰の魔女の呪いを解く

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 怠惰の魔女の呪いは、未来を思う若者の意欲を消滅させ、快楽を求めさせることだった。



 だから、まじめで頑張り屋の若者ほど、呪いの効果を受けた。



「この若者は極めて頑張り屋、なのになぜ、呪いの効果を受けないのでしょうか? 」

 怠惰の魔女は、騎士カイロスの心の中に侵入しながら、その状態を観察していた。



 深慮の魔女レイラの時と異なり、ソーニャ王女はすぐに撃退しようとはしなかった。



 やがて、怠惰の魔女は、カイロスの心の中に残る記憶を投映させて確認した。



 すると



「あっ! なんでこのような場所にいるのでしょう? これは、今魔女達の間で話題の『異世界転生者』ですわ。とても辛い運命に抗うことを選択した! 」



「そうです。この方は自分の勇気を奮い立たせ、未来を切り開く強い意欲をもった方です。あなたの呪いは決して通用しませんよ」



 怠惰の魔女は驚いた。

「えっ!! 」



 振り返ると、自分のすぐ後ろに甲冑を身にまとった女騎士がいたからだ。



「あなた、異世界転生者のソーニャ王女ね。」



「そうです。早く騎士カイロスの心の中から出て行きなさい。ここは、特別な場所。早く出て行かないと

聖剣クトネリシカの影響が出てきますよ。」



「聖剣は、この騎士が意志を込めて振らないと、力を出せないのではないですか? 」



「いえ、この騎士カイロスは勇者として聖剣に認められ、常に守護されているのです。聖剣の力は御存知だと思いますが、存在を消滅させることもできるのですよ。」



「炎の魔女のお姉様が何年をかけて作った魔神を消滅させた力ですか―― 」



「なんなら、もう少しの時間、ここにいて試してみますか? 」



「‥‥‥‥ わかりました。外に出ましょう。」







 エネルギー体となった怠惰の魔女とソーニャ王女は酒場の空間の上に出た。

 騎士カイロスがおばあさんの孫に話しかけている瞬間だった。



 その様子を見ながら、魔女が王女に言った。


「この家具職人はきつい仕事をするよりも、こうやってお酒を飲みブラブラしていくことが心にもよく、幸せなのです。呪いの効果としては最高じゃないですか。」



「最高ではありません。未来は努力してつかみとるものです。‥‥‥‥もっとも、努力が実を結ばないこともありますが。それでもかまわないのです。努力したことに意味があるのです。」



「あなた自身の心に言い聞かせているみたいですね。じゃあ、あなたでもあの騎士でもいいから、この家具職人から呪いの効果を消してみなさい。」



「ある意味では呪いを解呪することに近いですね。わかりました。私の要求です、もし、家具職人から呪いの効果を消せたのなら、あなたがロメル王国にかけた呪いを解呪していただけますか? 」



「いいでしょう。」







 精神を融合させている騎士カイロスに、ソーニャ王女が伝えた。



(すいません。カイロスさん、このようになりました。後はよろしくお願いしたいのですが)



(大丈夫。任せてください)



 彼女の難問を、彼はいつも楽観的に引き受けた。



 楽観的な彼は「必ずなんとかなる」と思い込んだ。



 ある意味では無理矢理――――



 彼女にはほんの少しの不安を見せたくなかった。



 彼は、家具職人タクミに話しかけた。



「タクミさん。その横に座って僕も飲んでいいですか? 」



「ああ どうぞ」



 もともと、異世界転生前の神宮悟はお酒も結構いけた。



 特に友達どおしで飲みに行くことが好きで、第一優先にしていた。



 もともと明るい彼は、飲み進めるとさらに明るくなった。



「おばあさんはお元気ですね。いったい何歳なのでしょうか? 」



「もう80代の後半、もう少しで90歳になると思うよ」



「毎日の仕事はきつくていやですね。もうへとへと、とてもとても少ないお金を得るだけで、他に何が得られるのでしょう。」



「そうだ、そう! お役人は楽をしていると思っていたのだったけど、大変だったんだねえ。」



「家具を作るのがいやになったのは、どんな点ですか? 」



「あれは不思議な感覚だった。ある日、作業場で一生懸命に家具を作っていた時、ある感。覚が降りてきたんだ。家具を作ることは単純で、魔法かなんかで機械に覚え込ませれば人間様がやることではないと」



「僕は遠い遠い国に行ったことがありますけど、その国では、設計・加工・組み立てなど、機械に教え込むことで人間様がかかわってはいませんでした。でも、いい家具が短時間で安くできるのです。」



「おう そうかね。やはりな、あんた役人だけど気が合うね。あっ、グラスが空じゃない。『マスター、この人のグラス体よ。もっと強い酒をなみなみと注いであげて、俺のおごりさ』。」



「えっ、えっ もっと強い酒ですか。」



「そうそう、酔えば酔うほど快感だからね。」



「はい。では、ありがたくいただきます。」



 どんどん酒に酔っていく中で、カイロスは大変あせっていた。



(いけない。どうしよう、このままだと、タクミさんから呪いの効果を消す前に、僕がしんどい)



 そう思っていると、彼はあることに気が付いた。



「タクミさん。僕は最初、タクミさんのおばあさんにお会いした時、おばあさんは道沿いに椅子を出して座っていました。ずいぶん、座りごこちが良さそうでした。」



「そう あれは俺がおばあさんにプレゼントしたものさ。」



「そうでしょうね。作り手の暖かい気持ちがわかりました。僕はまだ若いのですが、腰を悪くしていまして、あの椅子ならば腰の悪い方が座っても痛くならないですよね。」



「えっえっ あんたも腰が悪いの! 実は、あの椅子は腰の悪いおばあさんのために何日も何日も作り直して仕上げたのさ。」



「それに、なにか表面が素敵でした。触っただけで暖かくなりそうでした。」



「おうおう あんた、もしかしたら家具職人に向いているのかもしれないね。表面塗装だけで何回も塗り直したよ。おばあさんが触っていやな感覚だったり、皮膚病になったら困るから。」



「名前が違うかもしれませんが、『やすり』を心をこめてかけたとか。」



「なんで、なんで、職人の中だけで使われる専門ことばを知っている? 」



「はるか遠い国の言葉でしたので不安でしたが、一緒でよかったです。」



 その後2人は意気投合して、どんどん酒のグラスを空にした。



 その間、騎士カイロスは勇気を出してあることを決心した
 強めの声で家具職人に言った。



「でも、たかが椅子です。誰でも魔法でも作れます。価値なんか全然ないですよねえ!」



 ガチ――ン



 彼は家具職人に全力で殴られ、意識を失った‥‥‥‥
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