女性探偵の事件ファイル

ナマケモノ

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ライバル探偵の死

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「聞き込みといってもどこに行くのです」
「鈴木君、篠原と谷川家の周りよ」
 ふたりは篠原の事務所へ向かう。
 建物は人気がなく、助手が周りの人々に訊いていた。
 周りの人々によると、篠原がひとりの姿しか目撃されておらず、ひとりでやっているのではないかと口にした。
 また、女性が物を持って訪れているのが目撃されている。
「二階堂さんは何か分かることはないですか」
「残念ながら訊いてまわった情報しか知らないわよ。 あまり興味がないの」
「傍からみると友人のようにみえるんですがね。 あなたたちの関係とは一体・・・」
「鈴木君、私たちはただ純粋に謎をとくのを楽しむ関係だったの。 それ以外は興味をもたない」
「僕にはよく理解できないな」 ポリポリと頭をかく。
「事務所は開いているようだから入りましょう」
 二階堂と鈴木は中に入った。




 二階堂は声を出して呼びかけたが、返事はこない。
 本当に周りの人々はいうことは正しいようだ ── 二階堂は確信する。
 部屋が三つに分かれている。
 ひとつはベッドと事務用のテーブル、丸いイスだけだ。
 テーブルには依頼されたものに考えが書かれている。
 引き出しを開ければ、筆記用具とたくさんのメモ用紙が中にある。
 寝室を眠ることと仕事をやるスペースとしていたことがうかがえた。
 ふたつめは仕事で使うものを置くスペースだ。
 三つめは黒いソファーが二脚の間にガラス板のテーブルがある。
 二階堂はバスルームを見たが、短い髪の毛が落ちているだけだった。
「女性の気配はないわね。 長い髪の毛一本すら落ちていない。 彼は事務用を自宅として使っていたのかしら」
「そのようですね。 冷蔵庫の中身は充分にひとり暮らしとしてやっていけます」




「じゃあ、この場を借りて、彼の解けたものを解くとしましょう」
「あの・・・ せめて自分たちの事務所にしませんか。 僕たちの場所ではありませんから」
「すみません。 そうしましょう」 二階堂は平気な顔でかえす。
 また、ふたりは自分たちの事務所に戻った。
「僕は思うことがあるのですが、真っ先に谷川家に行かないのです」
「三つのケースは話したわね。 相手を殺人者と仮定すれば、情報を頭に詰めこんでも損はないと思うの。 篠原は谷川家に殺されていないと決定的な証拠があるなら行っていいんじゃない。のこのこ行って殺されるようなことは避けたいの」
「妙に執着しますね 」
「当たり前じゃない。 人がひとりいなくなっているのです。 これぐらいは用心しなければなりません」
 二階堂は三日前に投げ捨てた依頼の資料をながめる。
 資料によれば、愛犬の“ペロ”を探してほしいことである。
 依頼自体は何ら問題はない。




 二階堂は疑問をいだく。
 依頼人である谷川光は「恥をさらすようなことですから」と口にした。
 依頼された内容は恥になるようなことではない。
 なぜ喋ろうとしなかったのかと彼女は首をかしげる。
「鈴木君、おかしいと思いませんか?」
「何がです? うーん、あれ? ペットを探してほしいだけで恥になるようなことはありませんよね。 何か訳があるんですかね」
「いいえ、他にもあるわ。 この依頼であれば二日、三日でできるものよね。 何かなければ、篠原がなぜ一週間もかけたかもおかしいの」
「どういうことだろう。 何か篠原さんは気づいてしまったのかな」
「そう仮定すると動機ができるわ」 二階堂はニヤリと笑う。
 二階堂さん、何か楽しんでいませんかと助手は返す。
「そんなことはないわ。 ひとつ、可能性が増えたことが嬉しいの」
 二階堂は不動産のサイトをひらく。
 谷川家の左に一軒越えた先に空き家がある。
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