裸のプリンスⅣ【R18】

坂本 光陽

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濡れ結ぶ⑥

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「当初は、〈半グレ〉の見せしめという意見もあったけど、その可能性は薄いみたい。ああいう連中の結束は一過性が多いの。まず、半年から一年で解散ね」

「へぇ、そうなんですか?」

「まとまった資金を手に入れたら、幹部たちは堅実な事業を起こして、表舞台でのし上がろうとする。暴力団と最も違う点ね」

 暴力団ならメンツ重視のため、下部組織に標的の始末を命じることはある。でも、〈半グレ〉はそこまでの組織力はなく、メンツのために人手をさくことはしないという。

「既に堅気なわけだから、昔のことに関わっている暇はない、というわけ」

 サキさんの口は滑らかだった。男性の快感は放出とともに急落するが、女性のそれはゆったりと下降する。だから、後戯が必要になる。

 僕は彼女の腕や脚を撫でさすりながら、ピロートークを続けた。

「轢き逃げ車両の割り出しは難しいんですか? 車種とかカラーとか」
「ううん、それはわかっているの。鑑識が特定してくれた」

 現場に残された塗料や部品の欠片、タイヤ痕から、国産の人気車種、色は赤であることはわかっている。厄介なことに、都内で数百台が走っている車種らしい。

「Nシステムに引っかかってナンバーがわかれば、即検挙なんだけどね」

 Nシステムというのは、幹線道路などに設置された自動車ナンバー自動読取装置のことだ。

「ありふれた車種だとしても、〈半グレ〉メンバーの所有する車に該当するものは?」

「……なかったわね。そもそも目的が轢き逃げなら、盗難車を使うと思う。事を終えた後は、海に沈めるか、違法業者に処分させればいい。これまで犯行車両が見つかっていないのは、たぶん、そういうことだと思う。現時点では、轢き逃げ目的と偶発的な事故の可能性は五分五分だけどね。あ、いけない」サキさんは唇を噛んでいた。「私、ちょっと、しゃべりすぎちゃったかも」

 ほっそりとした人差し指を唇の前で立てる。

「シュウくん、今の話は絶対に秘密だからね。外に漏れたら、私、クビになっちゃう」
「もちろん、誰にも言いませんよ。サキさんには決して、御迷惑はかけません」

 僕は笑顔で、きっぱりと言う。

「ただ、カズを殺した犯人の逮捕に協力したいだけなんです。だから、もう少し教えてもらえませんか?」

 彼女の脇腹から腰に向けて、軽く触れた指先を滑らせる。さらに、太腿の外側へ。ビクンと身体を震わせた。

 鼻にかかった、甘えるような悲鳴。エクスタシーの後のせいか、シルキータッチが思いの外、効果的のようだ。

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