4 / 100
久しぶりの銀座③
しおりを挟む
というわけで、逆ナンは失敗。というか、次回に延期。
私は複雑な気持ちで、夕暮れの銀座通りに出る。ちなみに、銀座通りというのは通称で、正式名は中央通りという。
さて、美味しいものでも食べて、気分を変えようか。右に行けば、資生堂パーラーのミートクロケット。左に行けば、銀座木村家の小海老のカツレツサンド。少し迷ったけれど、今日は木村家さんにしよう。
銀座4丁目の交差点まで歩き、銀座木村家に入る。一階がベーカリーで、二階にカフェがある。階段を上がると、運よく窓際の席が空いていた。黄昏時の街並みを見下ろしながら、一口サイズのサンドイッチをパクリと頬張る。
ボリュームたっぷり、プリップリの海老がうれしい。この美味しさは全然変わらない。顔が自然とほころんでくる。俄然食欲がわいてきて、名物の あんぱんもいただく。お祖父ちゃんもこの上品な甘さが大好きだった。
美味しいもののおかげで、頭の中が活性化してくる。あちこちに散らばっていたファクターが集合して、にわかに化学反応を引き起こす。私の思考はピョンとジャンプする。
もちろん、桐野黎児さんについてだ。あの美形バーテンダーに私が魅かれたのは、彼の中に祖父・雪村隆一郎を見出したからではなかったか。二人はタイプも性格も笑顔も違うけれど、ひとつだけ共通点があった。
自分の力を信じ切っているところだ。とにかく、ぶれない。ひたすら、わが道を突き進む。周りから何を言われても気にしない。ややもすると、耳を貸さないこともある。頑固者という見方もできるけど、私は実力に裏打ちされた自信があるからと思いたい。
カフェの窓から、4丁目交差点が見下ろせる。おびただしい数の人たちが行き交っている。この中で、組織や集団に頼ることなく、自分の力だけを頼りに生きている人が、どれだけいるだろう。
おそらく、一握りに違いない。ほとんどの人は宮仕えをして、人並みの幸せを享受しようと悪戦苦闘をしているはずだ。
お祖父ちゃんや桐野さんのような人は違う。安定した暮らしに背を向けて、たった一人で歩き続ける。頼りになるのは自分のスキルだけ。生活の保障はない。常に不安定だろう。でも、リスクを怖れない。人生の綱渡りを楽しんでいるようにさえ思える。
凡人中の凡人である私から見れば、あまりにもまぶしすぎる生き方だ。うらやましくて、溜め息が出てしまう。
ただ、小娘の私にもできることはある。桐野さんの輝く場を提供して、彼をサポートすることなら、存分に力を発揮できると思う。
私の眼に狂いはないはずだ。西麻布のパーティ会場で桐野さんと初めて会った時、この人しかいないと思った。私のパートナーは、彼以外にいないと確信した。
断っておくけど、付き合いたいとか、そういった浮ついた話ではない。私には野心がある。そのために、この一年間、コツコツと準備を進めてきたのだ。
私は桐野さんを落とす。絶対に逃がさない。
私は複雑な気持ちで、夕暮れの銀座通りに出る。ちなみに、銀座通りというのは通称で、正式名は中央通りという。
さて、美味しいものでも食べて、気分を変えようか。右に行けば、資生堂パーラーのミートクロケット。左に行けば、銀座木村家の小海老のカツレツサンド。少し迷ったけれど、今日は木村家さんにしよう。
銀座4丁目の交差点まで歩き、銀座木村家に入る。一階がベーカリーで、二階にカフェがある。階段を上がると、運よく窓際の席が空いていた。黄昏時の街並みを見下ろしながら、一口サイズのサンドイッチをパクリと頬張る。
ボリュームたっぷり、プリップリの海老がうれしい。この美味しさは全然変わらない。顔が自然とほころんでくる。俄然食欲がわいてきて、名物の あんぱんもいただく。お祖父ちゃんもこの上品な甘さが大好きだった。
美味しいもののおかげで、頭の中が活性化してくる。あちこちに散らばっていたファクターが集合して、にわかに化学反応を引き起こす。私の思考はピョンとジャンプする。
もちろん、桐野黎児さんについてだ。あの美形バーテンダーに私が魅かれたのは、彼の中に祖父・雪村隆一郎を見出したからではなかったか。二人はタイプも性格も笑顔も違うけれど、ひとつだけ共通点があった。
自分の力を信じ切っているところだ。とにかく、ぶれない。ひたすら、わが道を突き進む。周りから何を言われても気にしない。ややもすると、耳を貸さないこともある。頑固者という見方もできるけど、私は実力に裏打ちされた自信があるからと思いたい。
カフェの窓から、4丁目交差点が見下ろせる。おびただしい数の人たちが行き交っている。この中で、組織や集団に頼ることなく、自分の力だけを頼りに生きている人が、どれだけいるだろう。
おそらく、一握りに違いない。ほとんどの人は宮仕えをして、人並みの幸せを享受しようと悪戦苦闘をしているはずだ。
お祖父ちゃんや桐野さんのような人は違う。安定した暮らしに背を向けて、たった一人で歩き続ける。頼りになるのは自分のスキルだけ。生活の保障はない。常に不安定だろう。でも、リスクを怖れない。人生の綱渡りを楽しんでいるようにさえ思える。
凡人中の凡人である私から見れば、あまりにもまぶしすぎる生き方だ。うらやましくて、溜め息が出てしまう。
ただ、小娘の私にもできることはある。桐野さんの輝く場を提供して、彼をサポートすることなら、存分に力を発揮できると思う。
私の眼に狂いはないはずだ。西麻布のパーティ会場で桐野さんと初めて会った時、この人しかいないと思った。私のパートナーは、彼以外にいないと確信した。
断っておくけど、付き合いたいとか、そういった浮ついた話ではない。私には野心がある。そのために、この一年間、コツコツと準備を進めてきたのだ。
私は桐野さんを落とす。絶対に逃がさない。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる