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推理ゲーム②
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私は名刺を差し出した。
「雪村ミノリです。このお店、【銀時計】ともども、よろしくお願いします」
「ねぇ、ミノリさん、私と桐野くん、どういう関係だと思う?」
「えっ、さぁ、わかりません」
「あきらめが早すぎるわね。少しは考えてみなさいよ。もし当てたら、桐野くんがデートしてくれるかもしれないわよ」そう言って、悪戯っぽく笑う。
私は呆気にとられる。
「何ですか、勝手なことを言わないでください」と、桐野さん。
「私の見たところ、お二人の意思の疎通はまだまだね。このままでは先行きが思いやられるから、私の気まぐれなお節介よ」と、クスクス笑うリオナさん。
「相変わらずですね」桐野さんは苦笑して、私に向き直る。「ミノリさん、リオナさんと知り合ったのは、僕が駆け出しのバーテンダーだった頃です。小さなバーに勤めていたんですが、リオナさんのお父さんはお店の先輩バーテンダーなんです。リオナさんは当時、女子大生でしたね」
「そうそう、まだ私が初々しかった頃ね」
あ、ということは、二人はリオナさんが女優になる前からの付き合いなのか。
「もう十数年の付き合いになるのね。こういうのも、腐れ縁というかしら。ねぇ、ミノリさん、もう一つ問題を出すから、今度は当てなさいよ。もし、桐野くんにデートしてもらいたいのなら、ね」
やれやれ、すっかりリオナさんのペースに巻き込まれている。
「あのね。私もうすぐ、映画の撮影中なの。何の役がついたか、わかる?」
「……申し訳ありませんが、わかりません。マスコミで発表されたものですか?」
「ううん、発表されていたら、クイズにならないじゃない。でも、よく考えればわかるはずよ。何の映画なのか、いくつかのヒントは既にあなたの前にあるし」
私の前? テーブルの上に目を落とすけど、もちろん、それらしきものは見当たらない。会話の中ですでに提示された、ということだろう。でも、ただそれだけで、とても推理なんかできないよ。
リオナさんは私の顔色を読んで、ピシャリと言う。
「ミノリさん、すぐに“わかりません”は、絶対ダメよ。それって、思考停止というか、まるっきり思考放棄だから。そういうの、桐野くんは大っ嫌いなんだよ」
えっ、そうなの? 私は思わず、桐野さんを見やる。
「リオナさん、ふざけないでください。御用件があって来たんでしょ?」
「ふざけているわけじゃないよ。この質問は今日の用事と関係があるの」
リオナさんは腕組みをして胸を反らす。
「ミノリさん、さぁ考えて。もし当てたら、今度こそ、桐野くんがデートしてくれるわよ」
「今度こそって何ですか。ミノリさん、気にしないでください」
そんな風に言われると、私の反発心が顔をもたげてくる。
「いえ、わかりました。私、考えてみます」
リオナさんは既に、いくつかのヒントを提示したという。お店の前で出会ってから30分足らずだけど、この間のやりとりを思い返す。
甲府のお土産。くろ玉。お墓参り。でも、甲府には初めて行ったらしい。あと関係ないかもしれないけど、指のバンドエイド。
これだけで、リオナさんの役を推理する? 普通に考えたら無理だ。でも、あきらめない。もう少し粘ってみる。というより、とことん頑張ってみる。もちろん、桐野さんとのデートがかかっているからだ。
「雪村ミノリです。このお店、【銀時計】ともども、よろしくお願いします」
「ねぇ、ミノリさん、私と桐野くん、どういう関係だと思う?」
「えっ、さぁ、わかりません」
「あきらめが早すぎるわね。少しは考えてみなさいよ。もし当てたら、桐野くんがデートしてくれるかもしれないわよ」そう言って、悪戯っぽく笑う。
私は呆気にとられる。
「何ですか、勝手なことを言わないでください」と、桐野さん。
「私の見たところ、お二人の意思の疎通はまだまだね。このままでは先行きが思いやられるから、私の気まぐれなお節介よ」と、クスクス笑うリオナさん。
「相変わらずですね」桐野さんは苦笑して、私に向き直る。「ミノリさん、リオナさんと知り合ったのは、僕が駆け出しのバーテンダーだった頃です。小さなバーに勤めていたんですが、リオナさんのお父さんはお店の先輩バーテンダーなんです。リオナさんは当時、女子大生でしたね」
「そうそう、まだ私が初々しかった頃ね」
あ、ということは、二人はリオナさんが女優になる前からの付き合いなのか。
「もう十数年の付き合いになるのね。こういうのも、腐れ縁というかしら。ねぇ、ミノリさん、もう一つ問題を出すから、今度は当てなさいよ。もし、桐野くんにデートしてもらいたいのなら、ね」
やれやれ、すっかりリオナさんのペースに巻き込まれている。
「あのね。私もうすぐ、映画の撮影中なの。何の役がついたか、わかる?」
「……申し訳ありませんが、わかりません。マスコミで発表されたものですか?」
「ううん、発表されていたら、クイズにならないじゃない。でも、よく考えればわかるはずよ。何の映画なのか、いくつかのヒントは既にあなたの前にあるし」
私の前? テーブルの上に目を落とすけど、もちろん、それらしきものは見当たらない。会話の中ですでに提示された、ということだろう。でも、ただそれだけで、とても推理なんかできないよ。
リオナさんは私の顔色を読んで、ピシャリと言う。
「ミノリさん、すぐに“わかりません”は、絶対ダメよ。それって、思考停止というか、まるっきり思考放棄だから。そういうの、桐野くんは大っ嫌いなんだよ」
えっ、そうなの? 私は思わず、桐野さんを見やる。
「リオナさん、ふざけないでください。御用件があって来たんでしょ?」
「ふざけているわけじゃないよ。この質問は今日の用事と関係があるの」
リオナさんは腕組みをして胸を反らす。
「ミノリさん、さぁ考えて。もし当てたら、今度こそ、桐野くんがデートしてくれるわよ」
「今度こそって何ですか。ミノリさん、気にしないでください」
そんな風に言われると、私の反発心が顔をもたげてくる。
「いえ、わかりました。私、考えてみます」
リオナさんは既に、いくつかのヒントを提示したという。お店の前で出会ってから30分足らずだけど、この間のやりとりを思い返す。
甲府のお土産。くろ玉。お墓参り。でも、甲府には初めて行ったらしい。あと関係ないかもしれないけど、指のバンドエイド。
これだけで、リオナさんの役を推理する? 普通に考えたら無理だ。でも、あきらめない。もう少し粘ってみる。というより、とことん頑張ってみる。もちろん、桐野さんとのデートがかかっているからだ。
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