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GカクテルⅡ⑥
しおりを挟む私はビルの階段で、ウジウジと考える。つくづく、自分のことを不器用だと思う。
桐野さんは不器用なのではない。間違いなく「頑固」だ。いつもそうではないけれど、自分の考えを押し通して、他人を不愉快にさせることがある。時々だけど、ひどくそっけなくて、冷たく思えることもある。
例えば、桐野さんは私に対して敬語を使う。経営者で雇い主だからという理由以上に、私と一定の距離をおきたいのではないか、と勘繰ってしまう。
私は九つも年下なんだから、タメ口で全然構わない。もっと打ち解けてほしいのに、やんわりと見えない壁に阻まれてきた。
私は女性として、桐野さんに魅かれている。その気持ちは何となく伝わっていて、だから距離をおかれているのかもしれない。予防線を張ることで、脈なしと察してくれ、ということなのかもしれない。
もし、そうだとしたら、つらすぎる。私が鈍感すぎたのかも……。
そういえば、後見人の相葉さんから言われたっけ。女が事業を始めるなら、色恋沙汰は絶対御法度。女性経営者は女を捨てないと、一流になれないとか何とか。桐野さんとはこれまで、うまくやってきたつもりだったけど、私の独りよがりだったのかも……。
やめた。ウジウジ考えても仕方がない。今の私、いじけているだけだ。自己憐憫の甘い罠。ネガティブ思考のスパイラルに陥っても、良いことなんか一つもない。
お店に戻ろう。私は立ち上がり、ハンカチについた埃を払う。振り向くと、桐野さんがドア口から顔をのぞかせていた。
「ミノリさん、大丈夫ですか?」
「えっ、何がですか?」
しばらく間があった。私は無言で、桐野さんの言葉を待つ。
いつもなら、沈黙に耐えかねて、私から言葉を接ぐところだけど、今はちょっと意地悪な気分だ。もし、さっきの言葉と態度に桐野さんが罪悪感を覚えているのなら、キチンと謝ってほしい。
「桐野さん、何が、ですか?」
心持ち上目遣いで、睨みつける。ただし、可愛らしさを忘れずに。ここ、ポイントね。
「いえ、せっかくの心遣いを無にしたような気がして」
また、敬語ですよ。お役所の職員や銀行窓口だって、もっと砕けた感じで話してくれる。
「桐野さん、前から気になっていたんですが、敬語はやめませんか? もちろん、親しき仲にも礼儀ありですけど、ずっと一緒に働いているのに、よそよそしく思います。もっとフレンドリーに接してもらえませんか」
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