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悪い噂
しおりを挟む結局、状況が切迫しているため、恭介は気にしないことにした。
ゴミ溜めで最も良い位置を占めているのは、タワー型のパソコンである。西尾はその前に座り、リズリカルにキーボードを叩いていた。
「いやぁ、“一日10万円ってバイトがヤバい”って噂はあったけど、まさか即死刑とはね。予想以上のヤバさだよ」
興奮しているのか、鼻の穴をヒクヒクさせながら、
「知ってるかい? 赤京区はね、国内一の犯罪多発地域なんだ。殺人件数は全国平均の五倍以上。ほら、茅野原駅のそばに、刑務所があるよね。あそこには江戸時代、処刑場があったんだ。茅野原は元々、〈血の原っぱ〉という意味だからね」
「ふーん、そうなんだ」
「荒川河川敷の〈草ヶ原〉って地名も、〈臭い原っぱ〉からつけられたらしいよ。たぶん、捨て置かれた死体から腐臭が漂っていたんだね。赤京区は昔から今日まで、血にまみれた土地柄なんだよ。現在、殺人件数と、凶悪犯罪発生件数が全国一。尾白くんの友達の件だって、そうだろ? 二人一緒にバラバラ殺人なんて、区外じゃ起こらないよ」
恭介は聞いているだけで、気分が悪くなってきた。西尾の説明は続く。
「こんな噂を知っているかい? 赤京区では、25歳の死亡率が高いんだ。あまりにも多くの25歳が死んでいるので、ネットでは、〈クリスマス・デス〉と呼ばれているよ。どうしてだか、わかるよね?」
「クリスマスが12月25日だから」
「うん、その通り。ありえない確率で、25歳が事故や病気、自殺などで死んでいるんだ。残虐な殺人事件の被害者も少なくない。ガソリンをかけられて焼かれたり、体液と血液を奪われてミイラにされたりしている。もしかしたら、凶悪な連続殺人鬼がいるのかもね」
「嘘だろ? 警察は何をやってんだ」
「腑抜けだから、殺人者は野放し状態だ。赤京区の警察署は間違いなく、全国犯罪検挙率を大幅に引き下げているね」
「それって、僕たちのバイトと関連があるの?」
「僕はそう見てる。大胆な仮説だけどさ。奴らは区民の間引きをしていると思うんだ」
「間引き? どういうこと?」
「ほら、赤京区の財政破綻寸前だからね。行き着くとこまで行って、非生産的な区民を排除しようとしているんじゃないかな。例えば、若くて健康なのに働かない人間とか、税金と年金を一切払わない人間とか、窃盗、詐欺、痴漢などの常習者とか」
「ええっ、僕たちはそうじゃないだろ」
「奴らの考えはわからないよ。えらい人たちから見れば、僕たちは非生産的な区民と同類なのかも」
「ありえない。バカげてるよ」
「僕もそう思うよ。でもね、尾白くん、対策は簡単なんだ。ルールさえ守っていれば、ちっとも怖くない。僕は誰にもバイトの事を話さない。ハッピー条例は破らない。赤京区を一歩も出ない、というより、そもそも、この部屋から一歩も出ない」
西尾はニヤリと笑い、
「尾白くん、僕は絶対に、奴らを出し抜くよ」
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