裸のプリンスⅤ【R18】

坂本 光陽

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コールボーイの転機①

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 コールボーイの仕事が休止になると、とたんに時間をもてあました。

 炊事,洗濯,掃除の家事一般を済ませると、することがなくなってしまう。買ったままで未読の本は数冊あるが、今は手に取る気になれない。

 やはり、真由莉さんのAV転向はショックだった。セックスの相性において、彼女は唯一無二である。そんな彼女がAV男優たちに抱かれ、セクシーな姿をメディアにさらすのは、複雑な心境だ。

 おそらく、可愛い顔を歪ませて、盛大に体液を噴出させることだろう。考えただけで、心穏やかにはいられない。僕は真由莉さんの作品を正視することはできないと思う。

 そんな気持ちになるのは、もちろん嫉妬からだ。ただ、彼女を自分だけのものにしたいわけではない。正直にいって、独占欲はない。僕たちの関係は微妙だ。真由莉さんは恋人や彼女というより、同士といった方がしっくりくる。

 セックスへの探求心や仕事を極めたい、という真摯しんしな姿勢。現状に甘んじることなく、さらにステップアップを目指す彼女のことは、素直に尊敬できる。

『ピンク・マーメイド』で肌を合わせた時、僕は確かに感じた。彼女の情熱や不安、苛立ちといったもの。あれは、現状打破や向上心の現れだろう。

 では、僕自身はどうなのか? 仕事に追いまくられてきた日々だった。ステップアップを考えたこともあるが、ついつい先延ばしにしてしまったような気がする。

 ココナさんのように、自分の店をもつつもりはない。漠然とコールボーイと違う業界に関心はあるけれど、真っ当なサラリーマン生活を送る自信はない。免許や資格はないし、自慢できるスキルといえば、女性を抱くことだけだ。

 レイカさんと出会って始めた仕事だけど、僕にとってコールボーイは天職だったといえるだろう。そんなことを考えながら、ルミネ北千住でウィンドウショッピングをしていた時のことだ。僕は久し振りにナンパされた。

 いや、女性から声をかけたのだから、正確には逆ナンか。
「ねぇ、君のこと、とってもタイプなんだけど、よかったら私と遊んでくれない?」

 僕の眼を見つめて、彼女は毅然と口にした。アラフォーの美人さんだった。知的な眼差しとセクシーな佇まいに僕は好感をもった。

「僕なんかでいいんですか?」冗談っぽく問い返してみる。

「君だからいいの。何度も同じことを言わせないで」僕の耳元に口を寄せて、「恥ずかしくなっちゃうから」
首筋が赤く染まっているのは羞恥心かららしい。そんな彼女を可愛らしく思う。少し考える振りをして、僕はにっこり微笑んだ。

「いいですよ。時間を持て余していたところです」
「何か買い物じゃなかったの? よかったら買ってあげるわよ」
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