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欲望のキャッスル①
しおりを挟む思いがけない出会いは経験したことがあるけれど、予期せぬ再会というのは初めてかもしれない。二度と会うことはないと思っていたレイナさんの元で、期間限定とはいえ再び働くことになったのだから。
僕はまったく知らなかったが、『キャッスル』時代の常連客の方々が「シュウの復帰」を強く求めていてくれていたらしい。何とも有難い話である。
『ナイトジャック』休業のタイミングで、レイナさんとココナさんの間で話し合いがもたれ、一時的な勤務が認められたという次第である。サッカーは詳しくないのだけど、Jリーグのレンタル移籍のようなものらしい。
ココナさんは迷ったそうだが、結局、「シュウの判断に任せる」と言ってくれた。僕の判断は一つしかない。早速、スマホのメモリーを呼び出して、レイカさんと会うアポイントメントをとった。
六本木の空がうろこ雲に覆われた昼下がり、僕は『キャッスル』の事務所を訪れていた。以前と何一つ変わらず、内装や家具,装飾品,カーペットのすべてが、アールデコ調のデザインで統一されている。
「元気そうじゃない、シュウくん」
ミニスーツに身を包んだレイカさんは相変わらず、美しくてセクシーだった。
「御無沙汰をしています。お声をかけていただいて、ありがとうございます」
緊張から声が上ずってしまった。
「あ、誤解しないでね。シュウをリクエストしたのは私じゃなくて、元常連の方々。どちらというと、私は反対だったのよ」
冷たい声音に告げられた。一昨年の年末、僕がレイカさんにしたことを思えば、仕方のない対応だ。僕は嫌がる彼女を力づくで抱いたのだから。(『裸のプリンス』「溺れる身体」参照)
レイカさんへの想いが高じたとはいえ、客観的に見て、あの時の僕は自己中心的なケダモノだった。反省のしようがないほど、愚かで最低な行為だったと思う。
「前もって、キチンと言っておくわね。シュウが私にしたことは死ぬまで消えない。私は決して忘れないし、シュウにも覚えておいてほしい」
「はい、覚えておきます。本当に申し訳ありませんでした」
僕は立ち上がり、深々と頭を下げた。久し振りに一緒に働けるのだから、あわよくばという甘えがなかったとは言えない。やはり、僕はまだ、女心に疎い若造なのだろう。
「今後は私には指一本触れないこと。シュウ、今ここで誓いを立てなさい」
厳しい口調で言われた。オーナーの命令には絶対服従だ。僕は素直に応じた。
「わかりました。僕は決して、レイカさんには触れません。ここに誓います」そして、こう付け加えた。「ただ、レイカさんから求められた場合は、この限りではありません」
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