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リベンジ・ラブ⑤
しおりを挟むワイドショーをはじめマスコミはこぞって取り上げた。ネットでもSNSを中心に拡散していく。仲村誠のこれまで築き上げてきたイメージは、どす黒く一変してしまった。
マスコミの熱狂ぶりは、僕たちの想像以上だった。こうなることを予見して、長峰夏鈴さんたち被害者は、あらかじめ地方や国外に逃げていた。
僕とヒカルさんは東京にとどまっていたが、客観的に見て、彼女たちが東京を離れたことは正解だったと思う。被害者たちに対しても、マスコミの追及は激しかったのだ。
一方、仲村誠はどうか? 弁護士をともなって弁明したり謝罪会見を開いたりするつもりはないらしい。事務所に無断で、どこかに雲隠れをしてしまった。このまま引退するかもしれない、という噂だ。
新しい玩具を与えられた幼児のように、マスコミは大喜びで騒ぎ立てていた。途中からは僕の手を離れたので、冷静に状況を見ていられた。仲村誠の失墜というより、好感度というイメージの断末魔だ。
カズの復讐は遂げられたけど、不思議と達成感や爽快感はなかった。映画やテレビドラマのようなカタルシスがないのは、僕が当事者の一人だからだろうか。
マスコミのはしゃぎぶりは不愉快だし、こんなばかげた騒動に巻き込まれるのは絶対に御免だ。仕事でタレントさんやモデルさんと会うことはあるけれど、僕はただの一般市民にすぎない。
さりげない日常生活を送るためには、毎日働かなくてはならない。もっとも僕の場合、イリーガルだけどね。ヒカルさんとの作業がひと段落したあたりから、スケジュールは以前のものに戻していた。一日3人をこなすこともある、そんなハードな日々だけど、仕事は充実していた。
「シュウ、仕事の後で少し時間をもらえるかしら」
『キャッスル』事務所でレイカさんからそう言われたのは、金曜日の昼下がりだった。
「最後のお客様は22時までの予定です。その後でよろしいですか?」
「ええ、終わったら連絡をちょうだい。適当なところで落ち合いましょう」そう言うと、僕に背中を向けた。
レイカさんは無駄口を叩かない。僕が『キャッスル』に戻ってからは、ずっとそうである。ほとんどが事務的なやりとりだ。信頼されているのかもしれないが、一抹の寂しさを覚える。彼女から叱責を受けていた新人の頃が懐かしい。
渋谷のラブホテルで仕事を終えると、22時を少し回っていた。お客様をタクシーに乗せて見送った後で、レイカさんに連絡を入れた。
「今、終わりました。道玄坂の真ん中あたりですが、どこで落ち合いますか?」
「近くまで来ているの。コンビニの辺りで待っていて」
言われた場所で待っていると、見覚えのあるレクサスが近づいてきた。
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