テレビハラスメント

坂本 光陽

文字の大きさ
上 下
1 / 41

はじめに

しおりを挟む

 皆さんはテレビについて、どのようなイメージをお持ちですか?
「最近は全然面白くないよ。昔の方がずっとよかったな」
「どのチャンネルを回しても、同じような番組ばっかり」
「テレビは見ないよ。スマホかネットで動画配信を見る」
 といったところでしょうか。昔から「テレビを見るとバカになる」と言われてきましたし、「テレビ離れ」という言葉はすっかり定着しています。おじさん向けの雑誌はテレビ・バッシングをすると売れる、とも聞きます。

 しかし、バッシングを受けるのは、それだけ強い影響力を持っている証でしょう。飛ぶ鳥を落とすほどの勢いは失ったものの、それでもテレビは〈マスコミの花形〉にちがいありません。
「派手でカッコイイ」「最先端でクリエイティブ」「大人気のマスコミ」
 テレビ業界のイメージとは、そんなところではないでしょうか。確かに、数百倍の競争率を突破した新卒テレビ局員なら、そのイメージが当てはまるかもしれません。

 しかし、テレビ番組を現場で制作しているスタッフの大半は、制作会社からの派遣された契約社員なのです。テレビ局員と同じ仕事をしても、いやテレビ局員以上のスキルを発揮していても、年収は局員の半分程度。下手すれば三分の一以下! しかも、契約社員ですから、番組が突然打ち切りになれば、明日から無職ということすらありうる。業界人の明日には、そんな理不尽で過酷な状況が、口を開いて待っているかもしれないのです。

 何を隠そう、僕はかつて、業界人の端くれでした。運よく、制作会社にひろってもらい、様々な現場を渡り歩いてきました。普通の企業と同じように、業績がよければ現場はハッピーですが、業績が悪化すれば現場は殺伐とした雰囲気に包まれます。うつ病になりそうなほど過酷な現場も経験しました。

 とりわけ印象に残っているのは、個性的な人々との出会いです。善い人と悪い人がいるし、おかしな人や危ない人もいました。テレビ業界には、なぜか、おかしな人々が数多く生息しています。「人間動物園」といっても過言ではありません。

 本書で描かれるのは、基本的に〈テレビ業界の裏側〉ですが、業界を舞台にした笑いあり涙ありのエピソード集でもあります。どうぞ、軽い気持ちで手にとって、楽しんでください。
しおりを挟む

処理中です...