テレビハラスメント

坂本 光陽

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右往左往するスタッフ②

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 数字のとれるコンテンツとして、偉人ではありませんが、「大奥」物のネタがありました。他局の人気ドラマの便乗した気配もありますが、視聴者の大半が30・40代女性であるため、女同士の争いは視聴率を上げていたのです。おそらく、大奥の嫉妬や復讐をワイドショー感覚で楽しめるからでしょう。

 さて、改編期を前にして、番組継続は視聴率的に微妙でした。Pはここで、強引な手段に出ます。数字の期待できない放送予定回をお蔵入りにして、急遽きゅうきょ、新たな大奥ネタを作るように命じたのです。視聴率をとるために、予算とスケジュールを度外視した決断です。その大赤字は当然、制作会社の負担となります。

 結局、切り札の大奥でも目標視聴率を達成できず、番組打ち切りが決定しました。後に残った大赤字は、制作会社スタッフの責任です。PとDは一人残らず、減俸処分や契約解除となり、職場の空気は冷え込みました。

 ただ、このエピソードには後日談があります。Pは仕事を失ったDたちに、きちんと新たな仕事を回していたのです。制作会社から去ったDのうち、再就職が出来なかった者も、ほとぼりの冷めた頃に、職場復帰を果たしました。

 このように、生き馬の目を抜く非情な業界ではありますが、仏心というものも確かに存在しているのです。
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