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王様への復讐②
しおりを挟む私は速やかにマンションを後にする。もう二度とここに来ることはないだろう。すべての段取りを済ませたら、東京ともおさらばだ。
とりあえず、六本木通りでタクシーを拾い、渋谷方面に走ってもらう。スマホで三原さんに連絡したら、ワンコールで出た。
「ケイさん、うれしいですね、僕のことを覚えていてくれて」
「一生のお願いです。今すぐお会いして、相談にのってもらえませんか?」
私の口調で切羽詰まった状況を把握したのだろう。三原さんは即座に落ち合う場所を指定した。
三原さんと初めて会ったのは、マープロの新年会だったと思う。高級ホテルの大広間を貸し切り、タレントと社員一同で、日頃お世話になっている業界関係者をねぎらう。それが恒例行事だ。
私はもちろん、ねぎらう側の一人だった。三原さんは大手出版社の名刺をもっていたが、実際にはフリーライターだった。
端的に言うと、にこやかな笑顔が印象的なダンディなおじさまである。後に、親の遺産のおかげで本当は働く必要もないとか、裏社会で生きる非道な男とか、そんな無責任な噂も耳にした。
でも、実際に顔を合わせて言葉を交わしている私は、三原さんは信用できると踏んでいる。
15分足らずで着いたのは、恵比寿にある小さなバーだった。
まだ開店前である。ただ一人、年配の店長さんが出迎えてくれた。5分と待たずに三原さんがやってきた。いつもながら、ダンディな装いである。入れ違いに店長さんは出て行き、私たちは止まり木に並んで腰を下ろす。
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