早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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半分こ

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「いつから…さっきだよ。入ってきたらナツくんが寝てた」
「あっ、そ、そ、ですか…はい、あ、僕寝ちゃって…」
「とりあえず座ったら?」

彩世はこちらを見ないまま、狼狽えている那月にそう声をかけた。もう彩世に対する恐怖心は無いといっても、男性を完全に克服した訳ではないから、時折その名残が出てきてしまう時がある。

だが、今は彩世の近くにいることに対して緊張しているのだろう。とりあえず落ち着くために、那月は言われるままベンチに腰掛けた。

「し、失礼、しま…す…」

一一一変な感じだ、すぐ近くに先輩がいる。木を挟んでない。何も隔ててない場所に先輩がいる…。伸びしたのも欠伸してたのも聞かれてたよね…。

「眠そうだね、夜寝れなかったの?」
「へ!?あ、あ、いや…、あの、ちょっと、寝不足で…」
「ふーん、そっか。ナツくんも夜更かしとかするんだ」
「は、は…はい…」

一一一色々考えてたら寝れなかっただけだけど…。

「今日、ここ座ってていい?怖い?」
「だ!!!大丈夫、です……」
「そっか、まあ近付かないから」

一一一あれ、何だろう。彩世先輩ちょっといつもより元気ない…?顔は見えてないし声だけ聞いてるけど…なんだかトーンが違うような気がする。気のせいかな…。

彩世の変化を感じながらも、黙ったままソワソワしていると背後から紙袋をガサガサ漁る音が聞こえてきた。彩世が昼食を食べようとしている音だ。いつも購買のパンを食べているし、今日も買ってきたんだろう。

それに気付き、那月も買っておいたコーヒー牛乳を手に取ってストローを刺した。

「あれ、今日は弁当じゃないの?」
「あっ…は、はい。家に忘れてきちゃって…」
「何も食べないの?購買は?」
「ああ!いえ、あの、あの僕は大丈夫、です!コーヒー牛乳があるので…そ、そんなにお腹減ってないし…」

そう言ったタイミングで、那月のお腹が「ぐうう」と大きな音を立てて空腹を知らせた。思わず「あっ!?」とお腹を抑える那月。

「……っくっ、、、ふふふ、腹減ってんじゃん」
「え、え、ああ!!!いやあのこれは!!今のは、その…」
「購買混んでるし、男子多いし買えなかったんじゃないの?」

吹き出すような笑い声が聞こえてきた後、彩世は手に持っていた大きなカツパンを半分に割り袋に入れた。

一一一恥ずかしい!!!恥ずかしすぎる…。寝てたのもバレてて、あくびしてたのも聞かれてお腹の音まで…!!先輩に色々見られすぎて恥ずかしい…!!!

「ナツくん、ほら。これ」
「へっっ!!!?な、な、なんですか?」
「あげる。食べなよ」
「……へ、」

斜め下を向くと、那月のすぐそばに彩世から差し出されたカツパンが半分、袋に入った状態で置かれていた。後ろを向くと、彩世はもう半分のカツパンを頬張っているようだ。

「えっ、え、あの…い、いいんですか!?せ、先輩のパン…」
「いいよ、腹減ってんなら食べな。半分こ」
「…っす、すみません、、あ、あの、ありがとうございます」
「うん」
「い、い、いただきます…」

那月はもらったカツパンを手に取り、1口かぶりつく。空腹に染み渡る、濃い味付けの肉々しいパンだった。口にたくさん詰め込んだ状態で、思わず「美味しい…」と呟く。

それを聞いた彩世は、嬉しそうに口角を上げて同じようにパンを頬張った。

「美味いでしょ?俺これ好きなんだよね」
「は、はい!す、すごく!!お、美味しいです…!!」

思わず勢いよく彩世の方へ振り向いた那月。すると、同じタイミングで彩世も後ろへ振り返っていた。予期せず合わさった2人の視線。

「……っあ、」

だが、那月はすぐ逸らすことなく目をパチパチと瞬いた。

「目、合うようになってきたね。最近」
「……あ、」
「最初の頃は見回りで目が合った時、逸らされてたのに。すごいじゃん」
「……っえ、あ、あの、こ、これは、せ、先輩のおかげ…です」
「俺?何もしてないよ」
「い、いえ!!先輩と知り合って…、こうして先輩と居られるから、ぼ、僕は変わってこれた、んです…。男の人と目が合うのも、こ、こうやって普通に話せるのも、ぼ、僕にとっては奇跡みたいな、ものなんです」
「……そっか」

那月の言葉を聞いて彩世は少し俯き、また前を向いた。さっき笑った時は元気になったかと思った那月だが、また元に戻ったように感じる。

「まー、木挟んで話すのがやっとだったのに、こうやって近くで話せるようになったんだもんね、すごいよ」
「い、いえ…」
「でも、近いけどまだ遠いね」
「…え、」
「なんでもない」
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