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僕だって
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夏希の脇腹を抱えるようにして倒れ込んでいる那月は、苦しそうに荒く呼吸をしている。まだ呆然としている夏希は、一つ一つ状況を飲み目の前にいる人物にもやっと気が付いた。
「…なっ、お前、」
「夏希、さん…!だ、ダメです!早まらないで!」
「うるさい!!離れろ!!」
「ぅわっ…!」
思い切り那月の腕を退かして引き離した夏希。2人とも息を切らしていて、驚いたことと気が抜けたことで足に力が入らないようだ。
「那月くん!大丈夫!?」
「あ、う、うん…。ごめんね、相野くん…」
「怪我してない!?」
「大丈夫!ちょ、ちょっと擦りむいただけ!」
「はぁ…、本当にびっくりしたよ…!飛び込んでいくから心臓止まるかと思った…」
「ご、ごめんね…」
追いついた相野は、かなり焦っていたようで今も動揺している。間一髪で那月が止めたからよかったものの、1歩遅ければ夏希と一緒に車にはねられていたかもしれない。
「…っなんなんだよ、お前!!どれだけ僕の邪魔すれば気が済むんだ!?」
「じゃ、邪魔をしようなんて思ってません…!僕は…ただ夏希さんをほっとけなくて…!」
「うるさいうるさい!!なんで…っなんで!馬鹿じゃないのか!?俺はさっきお前を切ろうとしたんだぞ!?」
夏希はとうとう目からポロポロと涙を零し、嗚咽するように叫んだ。
「もう…もういい…。いろも俺から離れてくし、俺は結局独りなんだ…ずっとずっと…。誰もいない、もう誰も…」
「…っ夏希さん」
ちょうどその時。走ってきた彩世が離れた所から3人を見つけ、近づいてきていた。それに気付いていない那月は、支えられていた相野の手をすり抜け、よたよたと夏希のそばに寄る。
「あ、あの。実は僕も…小学生から中学まで、男子にいじめられてました。理由は夏希さんとは違うけど…そのせいで男性恐怖症になってしまったんです」
「…っだからなんだよ!」
「ず、ずっと克服して変わりたかったけど、怖くて全然変われなくて…。でも高校に入学したばかりの頃同級生の男子に襲われそうになって…、その時先輩が助けてくれたんです。そのぶっきらぼうな優しさが温かくて…おかげで僕は変われてきた」
「…っ」
「変わろうとして何回も失敗して、その度に辛かったけど…諦めなかったら、男の子の友達もできた。でも、僕1人で変わったんじゃなくて…、そばで支えてくれた人達のおかげだと思うんです」
「うるさい!!!だから何だ!?いろに助けてもらって、支えてもらったって自慢話かよ!」
「ち…違います!!だから…!僕が、夏希さんの友達になります!!」
「……は?」
あまりに思わぬ言葉が飛び出してきて、驚いているのだろう。泣き叫んでいた夏希だが、数秒固まってから間抜けな声が漏れ出た。
話が聞こえる距離にまで来た彩世も、そばに立っている相野も、この場にいる全員がきょとんと目を丸くしている。
「せ、先輩は夏希さんを独りにするつもりは、な、ないと思います!でも…、他に分かってくれる人や支えてくれる人がいないなら…、ぼぼぼぼ、僕がなっちゃダメですか!?」
「…は?なに、言ってんの?あんた、」
「な、那月くん…?」
「だ、だって!!僕も気持ちが分かるから…!このまま独りなのかなって不安になるけど、上手くできなくてもどかしい気持ちも、もう全てが嫌になる気持ちも…!だから!気持ちが共感できる分、悩みも話しやすいかなって…!」
那月にとって、かなり勇気を出して放った言葉で、しどろもどろになりながらも必死に話している。そしてその場にしゃがみ、座り込んでいる夏希と目線を合わせた。
「きっと…な、夏希さんも、変わりたいって思ってるんじゃないですか?」
「…っな、」
「急には難しくても、少し顔を上げて周りを見るだけでも、今までと違うものや人と出会えると、僕は思います…!だから、その第1歩で僕を友達にしてくれませんか!」
顔を赤くして、額には汗を浮かべて震えている那月。それまで俯いて泣いていた夏希も、目線を合わせたことで那月の様子を目にして、よほど緊張しているのだろうと分かった。
「あ!!ごめんなさい!僕、偉そうなことを…!」
「…ほんとバカだな、あんた。意味わかんない」
「えっ」
「あんたも、いろのこと好きなんでしょ?」
「…っ!!」
「なのに、同じ人を好きな奴と友達とか…普通申し出ないから」
「そ、それは…。それは、べ、別です」
「は?」
「な、夏希さんがとれだけ先輩を好きか、今までの言動を見てたら分かります…。で、でも!僕だって…先輩のこと好きですから…!そこは、譲れません!ラ、ライバル…ですね!」
自分で言って恥ずかしくなったのか、那月は目をキョロキョロと泳がせる。生まれて初めて言った初めてのライバルという言葉に動揺しているようだ。
夏希は腕で涙を拭い、鼻をすすりながら立ち上がった。
「…はぁ、なんかアホらしい」
「え!?あ、あの」
「あんた、とっくにライバルじゃないのに」
「はい!?そ、それはどういう…」
「俺、帰る」
夏希が足を踏み出した時、目の前に歩いてきた彩世がいた。その顔は無表情だ。汗を垂らしながらぐっと目を瞑り堪えた夏希だが、その肩に彩世の手が優しく置かれた。
「…え、」
「送っていく。帰ろう、夏希」
「……っ、ぅ、なん、で」
「言っただろ、困った時は助けるって」
「……っご、め、なさ…。怪我、も、ごめん、なさ…」
優しく微笑みそう言った彩世を見て安心したせいか、また夏希は止まったはずの涙を溢れさせる。
彩世は、そんなしゃくりあげて泣く夏希を支えながら、相野と那月の方を向いた。
「2人とも、今日は迷惑かけてごめん。俺は夏希を家まで送って行くよ。相野くん…だっけ。ナツくんをお願いしていい?」
「あ…、は、はい」
「ありがとう。ナツくんも…ごめんね」
「えっ、あ…!い、いえ…」
「夜、連絡する」
「…なっ、お前、」
「夏希、さん…!だ、ダメです!早まらないで!」
「うるさい!!離れろ!!」
「ぅわっ…!」
思い切り那月の腕を退かして引き離した夏希。2人とも息を切らしていて、驚いたことと気が抜けたことで足に力が入らないようだ。
「那月くん!大丈夫!?」
「あ、う、うん…。ごめんね、相野くん…」
「怪我してない!?」
「大丈夫!ちょ、ちょっと擦りむいただけ!」
「はぁ…、本当にびっくりしたよ…!飛び込んでいくから心臓止まるかと思った…」
「ご、ごめんね…」
追いついた相野は、かなり焦っていたようで今も動揺している。間一髪で那月が止めたからよかったものの、1歩遅ければ夏希と一緒に車にはねられていたかもしれない。
「…っなんなんだよ、お前!!どれだけ僕の邪魔すれば気が済むんだ!?」
「じゃ、邪魔をしようなんて思ってません…!僕は…ただ夏希さんをほっとけなくて…!」
「うるさいうるさい!!なんで…っなんで!馬鹿じゃないのか!?俺はさっきお前を切ろうとしたんだぞ!?」
夏希はとうとう目からポロポロと涙を零し、嗚咽するように叫んだ。
「もう…もういい…。いろも俺から離れてくし、俺は結局独りなんだ…ずっとずっと…。誰もいない、もう誰も…」
「…っ夏希さん」
ちょうどその時。走ってきた彩世が離れた所から3人を見つけ、近づいてきていた。それに気付いていない那月は、支えられていた相野の手をすり抜け、よたよたと夏希のそばに寄る。
「あ、あの。実は僕も…小学生から中学まで、男子にいじめられてました。理由は夏希さんとは違うけど…そのせいで男性恐怖症になってしまったんです」
「…っだからなんだよ!」
「ず、ずっと克服して変わりたかったけど、怖くて全然変われなくて…。でも高校に入学したばかりの頃同級生の男子に襲われそうになって…、その時先輩が助けてくれたんです。そのぶっきらぼうな優しさが温かくて…おかげで僕は変われてきた」
「…っ」
「変わろうとして何回も失敗して、その度に辛かったけど…諦めなかったら、男の子の友達もできた。でも、僕1人で変わったんじゃなくて…、そばで支えてくれた人達のおかげだと思うんです」
「うるさい!!!だから何だ!?いろに助けてもらって、支えてもらったって自慢話かよ!」
「ち…違います!!だから…!僕が、夏希さんの友達になります!!」
「……は?」
あまりに思わぬ言葉が飛び出してきて、驚いているのだろう。泣き叫んでいた夏希だが、数秒固まってから間抜けな声が漏れ出た。
話が聞こえる距離にまで来た彩世も、そばに立っている相野も、この場にいる全員がきょとんと目を丸くしている。
「せ、先輩は夏希さんを独りにするつもりは、な、ないと思います!でも…、他に分かってくれる人や支えてくれる人がいないなら…、ぼぼぼぼ、僕がなっちゃダメですか!?」
「…は?なに、言ってんの?あんた、」
「な、那月くん…?」
「だ、だって!!僕も気持ちが分かるから…!このまま独りなのかなって不安になるけど、上手くできなくてもどかしい気持ちも、もう全てが嫌になる気持ちも…!だから!気持ちが共感できる分、悩みも話しやすいかなって…!」
那月にとって、かなり勇気を出して放った言葉で、しどろもどろになりながらも必死に話している。そしてその場にしゃがみ、座り込んでいる夏希と目線を合わせた。
「きっと…な、夏希さんも、変わりたいって思ってるんじゃないですか?」
「…っな、」
「急には難しくても、少し顔を上げて周りを見るだけでも、今までと違うものや人と出会えると、僕は思います…!だから、その第1歩で僕を友達にしてくれませんか!」
顔を赤くして、額には汗を浮かべて震えている那月。それまで俯いて泣いていた夏希も、目線を合わせたことで那月の様子を目にして、よほど緊張しているのだろうと分かった。
「あ!!ごめんなさい!僕、偉そうなことを…!」
「…ほんとバカだな、あんた。意味わかんない」
「えっ」
「あんたも、いろのこと好きなんでしょ?」
「…っ!!」
「なのに、同じ人を好きな奴と友達とか…普通申し出ないから」
「そ、それは…。それは、べ、別です」
「は?」
「な、夏希さんがとれだけ先輩を好きか、今までの言動を見てたら分かります…。で、でも!僕だって…先輩のこと好きですから…!そこは、譲れません!ラ、ライバル…ですね!」
自分で言って恥ずかしくなったのか、那月は目をキョロキョロと泳がせる。生まれて初めて言った初めてのライバルという言葉に動揺しているようだ。
夏希は腕で涙を拭い、鼻をすすりながら立ち上がった。
「…はぁ、なんかアホらしい」
「え!?あ、あの」
「あんた、とっくにライバルじゃないのに」
「はい!?そ、それはどういう…」
「俺、帰る」
夏希が足を踏み出した時、目の前に歩いてきた彩世がいた。その顔は無表情だ。汗を垂らしながらぐっと目を瞑り堪えた夏希だが、その肩に彩世の手が優しく置かれた。
「…え、」
「送っていく。帰ろう、夏希」
「……っ、ぅ、なん、で」
「言っただろ、困った時は助けるって」
「……っご、め、なさ…。怪我、も、ごめん、なさ…」
優しく微笑みそう言った彩世を見て安心したせいか、また夏希は止まったはずの涙を溢れさせる。
彩世は、そんなしゃくりあげて泣く夏希を支えながら、相野と那月の方を向いた。
「2人とも、今日は迷惑かけてごめん。俺は夏希を家まで送って行くよ。相野くん…だっけ。ナツくんをお願いしていい?」
「あ…、は、はい」
「ありがとう。ナツくんも…ごめんね」
「えっ、あ…!い、いえ…」
「夜、連絡する」
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