壊れて焦がれてそばにいて

ぱんなこった。

文字の大きさ
46 / 46
7

俊太と白井先輩

しおりを挟む
叶羽と憂の元を離れた俊太は、すぐ立ち止まって後ろを振り返った。少し離れた所で、また何かを話しながら見つめ合う2人の姿がある。

幸せそうに微笑む2人を見て、「ふぅ」と息を吐いて胸を下ろす。

「俊ちゃーん?」

「うわわ!!!し、白井先輩…!びっくりした」

「ちょっとちょっと、見てたよ?あの2人上手くいったんだ?」

「あ、はい…お陰様で。色々世話かけました」

「いえいえー?可愛い後輩の頼みなら、何でも聞いちゃう♪ねー俊ちゃん!」

ニヤニヤしながらついてくる白井先輩を横目に歩き進める俊太。正直、この変人でチャラい先輩にはたまに引くこともある俊太だが、いい人だというのは知っているから信用していた。

それに、行きつけのクラブの件も、そこに憂が通っていることも事情も聞いていた。
でも2人の問題に出来るだけ手出しはしないようにしていたから、叶羽が憂を探しに行った日、俊太は白井先輩にお願いをしていたのだ。

2人が危険な目に遭いそうなら助けてほしいと。

案の定、個室で数人に絡まれていたらしく、白井先輩がそこを助けてくれたようだ。

「でもさー、俊ちゃんすごいよね」

「何がですか?」

「叶ちゃんのことになると、嗅覚が鋭くなるっていうか?俺なんて俊ちゃんに頼まれた通りに動いただけだし?」

「別に…ただ心配なだけです」

「それにー、自分の気持ちをバレないようにひた隠しにして、相手の恋が実るように手助けするなんて中々できることじゃないよ?」

「…何のことっスかねー」

鋭いのは白井先輩もだろう、と突っ込みたくなったが何も言わないことにした。

「大丈夫だよー!俺は口固い方だから♪」

「ありがとうございます」

「だからさー、まあ俺に言ってごらんよ?吐き出したい時があったらさ」

「間に合ってますね」

「もーーー!ケチ!」

俊太は、大学で叶羽に出会った時のことを思い出した。いつからかと言われたら分からない。泣いた時も楽しい時も一緒にいるうちに、特別な感情があると気付いた。

でも、自分にできることは分かっていたから何も言わない。

「…今度は末永く幸せになってくれそうでよかったって感じですね。よく振られてましたけど、今までの彼氏とは違う感じがするんで」

「ふーん?」

「まあ、俺はずっと言うつもりはないですけどね。いつか吹っ切れると思うんで」

「そっかそっか」

「だから、叶羽の友達以上にはなれないって分かってるから、せめて幸せになってほしいんです。そのために俺はあいつの友達でいたい」

「俊ちゃん、いい子すぎて心配だよ?先輩の胸で泣く?」

「いらないッスよ!!」

「でも、ほら」

気持ちの区切りをつけたことによるものか、安心したことによるものか分からないが、俊太の片目からぽと…っと涙が一筋流れた。

「あー…まじで悲しいとかないです、これは違います。上手くいって嬉しいのは本当なんで」

「うんうん、でもさ、気持ちって色々入り交じるものだからさ。今泣きたくなったのも俊ちゃんの本心だよ?」

「……」

「泣きたかったら泣いていいんだよ。そして!そんな俊ちゃんにはいつかいい人が現れるさ」

「…白井先輩って、変人なのかマトモなのか分かんないですね」

「失礼な!!!」

自然と俊太の顔には笑みが零れた。

焦がれていた日々に終わりを告げるかのように、涙は流れた。

「…先輩。一瞬、胸貸してください」

-end-
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...