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俊太と白井先輩
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叶羽と憂の元を離れた俊太は、すぐ立ち止まって後ろを振り返った。少し離れた所で、また何かを話しながら見つめ合う2人の姿がある。
幸せそうに微笑む2人を見て、「ふぅ」と息を吐いて胸を下ろす。
「俊ちゃーん?」
「うわわ!!!し、白井先輩…!びっくりした」
「ちょっとちょっと、見てたよ?あの2人上手くいったんだ?」
「あ、はい…お陰様で。色々世話かけました」
「いえいえー?可愛い後輩の頼みなら、何でも聞いちゃう♪ねー俊ちゃん!」
ニヤニヤしながらついてくる白井先輩を横目に歩き進める俊太。正直、この変人でチャラい先輩にはたまに引くこともある俊太だが、いい人だというのは知っているから信用していた。
それに、行きつけのクラブの件も、そこに憂が通っていることも事情も聞いていた。
でも2人の問題に出来るだけ手出しはしないようにしていたから、叶羽が憂を探しに行った日、俊太は白井先輩にお願いをしていたのだ。
2人が危険な目に遭いそうなら助けてほしいと。
案の定、個室で数人に絡まれていたらしく、白井先輩がそこを助けてくれたようだ。
「でもさー、俊ちゃんすごいよね」
「何がですか?」
「叶ちゃんのことになると、嗅覚が鋭くなるっていうか?俺なんて俊ちゃんに頼まれた通りに動いただけだし?」
「別に…ただ心配なだけです」
「それにー、自分の気持ちをバレないようにひた隠しにして、相手の恋が実るように手助けするなんて中々できることじゃないよ?」
「…何のことっスかねー」
鋭いのは白井先輩もだろう、と突っ込みたくなったが何も言わないことにした。
「大丈夫だよー!俺は口固い方だから♪」
「ありがとうございます」
「だからさー、まあ俺に言ってごらんよ?吐き出したい時があったらさ」
「間に合ってますね」
「もーーー!ケチ!」
俊太は、大学で叶羽に出会った時のことを思い出した。いつからかと言われたら分からない。泣いた時も楽しい時も一緒にいるうちに、特別な感情があると気付いた。
でも、自分にできることは分かっていたから何も言わない。
「…今度は末永く幸せになってくれそうでよかったって感じですね。よく振られてましたけど、今までの彼氏とは違う感じがするんで」
「ふーん?」
「まあ、俺はずっと言うつもりはないですけどね。いつか吹っ切れると思うんで」
「そっかそっか」
「だから、叶羽の友達以上にはなれないって分かってるから、せめて幸せになってほしいんです。そのために俺はあいつの友達でいたい」
「俊ちゃん、いい子すぎて心配だよ?先輩の胸で泣く?」
「いらないッスよ!!」
「でも、ほら」
気持ちの区切りをつけたことによるものか、安心したことによるものか分からないが、俊太の片目からぽと…っと涙が一筋流れた。
「あー…まじで悲しいとかないです、これは違います。上手くいって嬉しいのは本当なんで」
「うんうん、でもさ、気持ちって色々入り交じるものだからさ。今泣きたくなったのも俊ちゃんの本心だよ?」
「……」
「泣きたかったら泣いていいんだよ。そして!そんな俊ちゃんにはいつかいい人が現れるさ」
「…白井先輩って、変人なのかマトモなのか分かんないですね」
「失礼な!!!」
自然と俊太の顔には笑みが零れた。
焦がれていた日々に終わりを告げるかのように、涙は流れた。
「…先輩。一瞬、胸貸してください」
-end-
幸せそうに微笑む2人を見て、「ふぅ」と息を吐いて胸を下ろす。
「俊ちゃーん?」
「うわわ!!!し、白井先輩…!びっくりした」
「ちょっとちょっと、見てたよ?あの2人上手くいったんだ?」
「あ、はい…お陰様で。色々世話かけました」
「いえいえー?可愛い後輩の頼みなら、何でも聞いちゃう♪ねー俊ちゃん!」
ニヤニヤしながらついてくる白井先輩を横目に歩き進める俊太。正直、この変人でチャラい先輩にはたまに引くこともある俊太だが、いい人だというのは知っているから信用していた。
それに、行きつけのクラブの件も、そこに憂が通っていることも事情も聞いていた。
でも2人の問題に出来るだけ手出しはしないようにしていたから、叶羽が憂を探しに行った日、俊太は白井先輩にお願いをしていたのだ。
2人が危険な目に遭いそうなら助けてほしいと。
案の定、個室で数人に絡まれていたらしく、白井先輩がそこを助けてくれたようだ。
「でもさー、俊ちゃんすごいよね」
「何がですか?」
「叶ちゃんのことになると、嗅覚が鋭くなるっていうか?俺なんて俊ちゃんに頼まれた通りに動いただけだし?」
「別に…ただ心配なだけです」
「それにー、自分の気持ちをバレないようにひた隠しにして、相手の恋が実るように手助けするなんて中々できることじゃないよ?」
「…何のことっスかねー」
鋭いのは白井先輩もだろう、と突っ込みたくなったが何も言わないことにした。
「大丈夫だよー!俺は口固い方だから♪」
「ありがとうございます」
「だからさー、まあ俺に言ってごらんよ?吐き出したい時があったらさ」
「間に合ってますね」
「もーーー!ケチ!」
俊太は、大学で叶羽に出会った時のことを思い出した。いつからかと言われたら分からない。泣いた時も楽しい時も一緒にいるうちに、特別な感情があると気付いた。
でも、自分にできることは分かっていたから何も言わない。
「…今度は末永く幸せになってくれそうでよかったって感じですね。よく振られてましたけど、今までの彼氏とは違う感じがするんで」
「ふーん?」
「まあ、俺はずっと言うつもりはないですけどね。いつか吹っ切れると思うんで」
「そっかそっか」
「だから、叶羽の友達以上にはなれないって分かってるから、せめて幸せになってほしいんです。そのために俺はあいつの友達でいたい」
「俊ちゃん、いい子すぎて心配だよ?先輩の胸で泣く?」
「いらないッスよ!!」
「でも、ほら」
気持ちの区切りをつけたことによるものか、安心したことによるものか分からないが、俊太の片目からぽと…っと涙が一筋流れた。
「あー…まじで悲しいとかないです、これは違います。上手くいって嬉しいのは本当なんで」
「うんうん、でもさ、気持ちって色々入り交じるものだからさ。今泣きたくなったのも俊ちゃんの本心だよ?」
「……」
「泣きたかったら泣いていいんだよ。そして!そんな俊ちゃんにはいつかいい人が現れるさ」
「…白井先輩って、変人なのかマトモなのか分かんないですね」
「失礼な!!!」
自然と俊太の顔には笑みが零れた。
焦がれていた日々に終わりを告げるかのように、涙は流れた。
「…先輩。一瞬、胸貸してください」
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