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本当なら昨日夕食を摂っている筈だった学食は広かった。窓が多く、海と山を見渡せる。綺麗な風景だ。そして人が多い。お弁当やお菓子の持ち込みも許可されている。
衣澄がかけうどん、高宮が醤油ラーメンをトレイに乗せて、席を決めていた。どの席も団体でいる。その中で一番隅で1人で窓に背を向けハンバーグ定食を食べている小柄な少年が目に入る。見覚えが曖昧だ。高宮はその少年をじっと見つめた。
「俺は、あの席が好きなんでな」
衣澄がすすーっとその小柄な少年の前の席の隣に座った。
「ここ、いいかな?」
高宮は訊くだけ訊いて返事を待たず、小柄な少年の反対に座った。この席は真正面に山が見える。緑色がコントラストになっていて美しかった。横の窓は海が広がっている。
「・・・・・・あの・・・・あ・・・・いいですよ・・・・」
もくもくと食べている少年は箸を止め、控えめにそう言った。
「ありがとう」
高宮は笑いかける。少年は嬉しそうに微笑んで、俯いた。
暫く黙々と3人で食べていたが、小柄な少年が高宮をじっと見つめていたのに気が付くと、口を開いた。
「オレ、一昨日転校してきた、高宮敬太。よろしく」
「・・・・・樋口・・・・侑・・・・・」
きょろきょろと周りを見渡してから小さく縮こまって小動物のように高宮を見つめた。
「あ・・・・えっと・・・・・」
衣澄と高宮の顔を交互に見遣り、戸惑う樋口に高宮は笑いかける。
「転校してきてばっかりでさ、知り合い、全然いないから」
衣澄は横でかけうどんを啜っている。
「ぼ、ぼく・・・・も・・・・・。友達・・・・少なくて・・・・・」
真っ黒い艶のある髪。大きな黒い瞳。幼い綺麗な肌。あどけない顔立ち。大きめの制服。
「オレ、2年C組。樋口くんは・・・・?」
「ぼ、ぼくは、2年F組です」
樋口の返答を聞いた瞬間、高宮の顔が強張った。高宮の反応を見た衣澄も眉根を寄せる。
「F組・・・・?」
こくりと樋口は頷いた。
「どうか・・・・・・しました・・・・?」
怯えるように樋口は訊ねる。
「ううん。何でもないよ」
衣澄の視線が怪しげに樋口と高宮を射る。
「桐生は、元気か」
衣澄の声に樋口の肩がびくりと震えてから、恐ろしげに高宮のほうを気にするように見てから、衣澄に顔を向ける。
「・・・・・・はい・・・・・・」
「そうか」
かけうどんを食べ終わったようで、衣澄は席を立つ。高宮はそれを見て、焦るように残り少ない醤油ラーメンを啜って、急いで片付ける。
「ごめん、じゃぁねっ!樋口君!」
高宮は席を立ち、どんぶりの乗ったトレイを持ち上げる。
「あ・・・・・ぼくのこと、ユウって呼んでください」
樋口もつられて立ち上がり、そう言った。意志のある声。高宮はまた笑って大きく頷いた。
「行くぞ」
衣澄は苛々した口調だった。
衣澄がかけうどん、高宮が醤油ラーメンをトレイに乗せて、席を決めていた。どの席も団体でいる。その中で一番隅で1人で窓に背を向けハンバーグ定食を食べている小柄な少年が目に入る。見覚えが曖昧だ。高宮はその少年をじっと見つめた。
「俺は、あの席が好きなんでな」
衣澄がすすーっとその小柄な少年の前の席の隣に座った。
「ここ、いいかな?」
高宮は訊くだけ訊いて返事を待たず、小柄な少年の反対に座った。この席は真正面に山が見える。緑色がコントラストになっていて美しかった。横の窓は海が広がっている。
「・・・・・・あの・・・・あ・・・・いいですよ・・・・」
もくもくと食べている少年は箸を止め、控えめにそう言った。
「ありがとう」
高宮は笑いかける。少年は嬉しそうに微笑んで、俯いた。
暫く黙々と3人で食べていたが、小柄な少年が高宮をじっと見つめていたのに気が付くと、口を開いた。
「オレ、一昨日転校してきた、高宮敬太。よろしく」
「・・・・・樋口・・・・侑・・・・・」
きょろきょろと周りを見渡してから小さく縮こまって小動物のように高宮を見つめた。
「あ・・・・えっと・・・・・」
衣澄と高宮の顔を交互に見遣り、戸惑う樋口に高宮は笑いかける。
「転校してきてばっかりでさ、知り合い、全然いないから」
衣澄は横でかけうどんを啜っている。
「ぼ、ぼく・・・・も・・・・・。友達・・・・少なくて・・・・・」
真っ黒い艶のある髪。大きな黒い瞳。幼い綺麗な肌。あどけない顔立ち。大きめの制服。
「オレ、2年C組。樋口くんは・・・・?」
「ぼ、ぼくは、2年F組です」
樋口の返答を聞いた瞬間、高宮の顔が強張った。高宮の反応を見た衣澄も眉根を寄せる。
「F組・・・・?」
こくりと樋口は頷いた。
「どうか・・・・・・しました・・・・?」
怯えるように樋口は訊ねる。
「ううん。何でもないよ」
衣澄の視線が怪しげに樋口と高宮を射る。
「桐生は、元気か」
衣澄の声に樋口の肩がびくりと震えてから、恐ろしげに高宮のほうを気にするように見てから、衣澄に顔を向ける。
「・・・・・・はい・・・・・・」
「そうか」
かけうどんを食べ終わったようで、衣澄は席を立つ。高宮はそれを見て、焦るように残り少ない醤油ラーメンを啜って、急いで片付ける。
「ごめん、じゃぁねっ!樋口君!」
高宮は席を立ち、どんぶりの乗ったトレイを持ち上げる。
「あ・・・・・ぼくのこと、ユウって呼んでください」
樋口もつられて立ち上がり、そう言った。意志のある声。高宮はまた笑って大きく頷いた。
「行くぞ」
衣澄は苛々した口調だった。
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