Never Say Hello

結局は俗物( ◠‿◠ )

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Side W 27

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Side W

 ウサギ小屋ホント好きだな。茶色のウサギを抱き上げてアイツは笑ってる。なんだかな。声を掛けたらあのカオを見られない気がしてとっとと帰ろうかなって思ってところだったのにさ。
「重恋に何かご用ですか」
 背中から腹立つ声。朝だか昼だかのことが嘘みたいに落ち着いてた。顔は相変わらずとんでもなくイケメンだけどフツーのツラしてた。
「いや、別にねぇケドさ」
 面拝んで帰ろうとしただけだったのはマジ。泣いてねぇかなって思ったらオレやさし~先輩だから面目潰れんじゃん?でもまぁこういう小さい騎士ナイトがいるみてぇだから。
「もう諦めてください、彼のコト」
 お、出たかな本性。いつもの声より低い。っていうよりはいつもの声が少し変だったんだけど、もしかしてそれが地声?見た目のきらっきらした少女漫画みたいな顔の割りに声は低いのな。挑発的なものは感じないけど、なんでお前の口からそんな言葉出るワケ、おかしくない?
「他に好きな人いるみたいなんで。僕でも先輩でもなくて」
「は?」
「フラれたも同然なんです、僕ら」
「アイツに好きなやついようがいなかろうがカンケーなくね?」
 なんで?やつに好きな人がいようが関係ないよな?逆になんで関係あんのさ。オレが唾つけたんだから。そこにアイツの意思とか許可とか要らねぇんだけど。
「…何言ってるんですか?」
 何そのカオ。小松ならブサイクになるからやめろって言うやつ。
「そのままのイミだけど」
 頭抱えてる。おもしれぇリアクション。
「どういうことですか、重恋くんに自由はないって解釈でよろしいですか」
 さっすが。話が早くて助かるよ、説明する気なかったし。
「最悪ですね」
「最悪なのはどっちだよ。アイツのファーストキス、お前だろ」
 なんだよ、好きでもないやつとキスきたワケかよ。大概アイツも薄汚れてんじゃん。おキレイぶりやがった。
「は?なんで知ってるんスか」
「だってアイツ言ってたし」
「いつ?」
「この前」
 お前タメ口になってんぞ、オレ先輩よ?イケメンの顔面が険しくなておもしろい。この前?って訊き返されて昨日って言ったらそれ僕じゃないっスって言われてお前言葉遣いマジでどうにかしろし。オレやさし~からそんな小さいコト別にいいケドさ。ってか待って、お前じゃないの?じゃあ何、このガキの他にもガチでアイツ狙っててしかもキスまでする変わりもんいるワケ?誰。そいつがコイツの好きな人ってワケ?オレ何も聞かされてないんだけど。
「詰め寄る気ですか」
「知るかよ。どうでもいいわ、アイツの好きなやつなんて」
 誰かなんてどうでもいいや。オレじゃねぇんだろ。でもオレに隠してたのかよ。バカにしてたのか?お前見た目と違ってイヤなヤツなんだな。熱ぃよ。どうしたらいいんだ、熱い。分かってるよな?お前に唾つけたのはオレ。分かってるよな?お前に意思とか要らねェんだって。
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