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4.実験

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「なにごとだぁぁぁ!」


「大爆発よっ!?」




事件は起こった。




そう、俺は自分が10歳程でどれだけ魔法が使えるか試してみたかった。


そのために森の中へと行き弱い魔法から強い魔法へと順番に使用していこう思っていたのだが…。
考えは甘かった様だ。





───数十分前…。





さすがに母さんに魔力の気配や、音なんかで気付かれたら厄介なものだ。

なので〈無音空間サイレントルーム〉を使用し、中の音の一切を外に漏らさないよにした。

それに〈魔力遮断〉をして、魔法を行使した際に周辺に漂う筈の魔力を漏らさないようにした。

これさえしておけば大丈夫。



俺はそう軽く考えていた。



「ドゴォォォンッ!」



「あ」



3回目の魔法行使でそれは起こった。



まずクラス2の魔法を使ってみようと考えた。

「んーっと、これだな」

魔方陣を展開し、魔法が発動する。
10センチ程の厚く見えない壁が3枚自分の前に展開される。
それを自分を囲うように発動してみた。

「よし、前世に魔力を節約できる燃費のいい魔力障壁の完成だな」

これは常時発動が可能な程に魔力の消費が少ない魔法で、例え24時間発動しても1割程の魔力しか消費しない。

因みに言っておくがこんなに燃費が良いのかは俺が元々の魔力障壁をちょちょいと改良してみた結果がこれだ。

この方法は未公開。

この魔力障壁が使えるのは俺だけの筈だ。

「よし、次は5くらいのを…」

そうして俺が発動してみた魔法はまず適当にゴブリンを引っ捕らえて手刀で瀕死にさせ、右足を切断してやる。

そして自分の魔力を手の平に集めてくる。
そうすると魔力の塊の魔球の様なものをゴブリンに重ねる。
そして切断した切り口を修復するように魔力を操作する。
これにより切断されていた筈の右腕は元通り、別の刺し傷も同様に直していく。

「グギャ?ギャギャ!」とか言って煩かったからもう用事も済んだことなので楽にしてやった。

「完全治癒もできるか」

「んじゃ次は攻撃でもしてみるか」

前世よりも魔力量は高いので何ら問題なく実験することができる、それも連続で。

「んー、これなら良さそうだな」

俺が雑魚処理等にも使用していた様々な効果を付与できる使いきりの魔法槍を生成させる魔法を試してみることにする。

「おぉ、悪くない。形が少し変わったくらい…かな?」

早速その威力を試してみるべく〈無音空間サイレントルーム〉の範囲内にて大岩を狙って投げてみた。

この判断が大きなミスとなってしまったようだ。

「ドゴォォォンッ!」

威力が高すぎるために衝撃が外に漏れてしまいそのせいで範囲外にて爆音が鳴り響いた。

「……やらかしたな、これ」

そう呟いた数秒後、身体強化を最大限にかけて走ってきた父さんと、母さんがこちらに向かってきた。

「ま…不味い」

「何なんだ!いまのは!魔物か!?」

「あんな大きな爆発をさせる魔物…Aレート…いや、Sレート!?」

大きく慌て、俺の顔をめちゃくちゃにしてくる。

「アレンちゃんは無事みたいね」

「おぅ、母さん。そんなに慌てなくてもいいじゃないか」

「なにをいってるのアレンちゃんは。あれを見てみなさい?直径50メートルはある爆発痕があるのよ?しかもあんな爆音でどこかに魔物がいるんだわ!」

気付かずにだとしても自分の子を魔物扱いなんて、酷いなぁ。

確かに調整を間違えたかもしれないがちょっと大袈裟すぎやしないか?

クラス5ならまだセーフな筈…だろ?
クラス6は使わなかったが。

ここはバレないように通すしかないか。

「ん?アレン急にどうしたんだ?変な顔して」

「確かにそうね、急によそよそしいわよ?」

ギクッ。

「い、いや。怖い魔物がいるもんだなぁってさ!」

2人の目線は俺から全く離れそうにない。

それどころか更に俺にたいしての疑いの念が増している気が…。



「もしかしてだけど、アレンちゃんじゃないわよね?」



「………どうだろ」



「「…………」」




2人の口は閉じる気配がなく、目は途方を見つめているようだった。
口が漸く動いたのは5分程してやっとだった。



「アレン、お前…剣も出来て魔法もできるとか言わないよな?」



「母さんアレンちゃんに魔法で自慢できそうにないわ…」


「それは──」


「実は剣より…魔法の方が合うんだ」


「なんだとぉぉ!!」


俺に約2年も前に虚を突かれたと言っても敗北してしまった父さんは剣が本職でない、たかが8歳の子供に負けてしまったのだという絶望と、まさか自分の子供がこんなにも化け物染みた才能を持っていることに思わず叫ばざるを得なかった状態だった。

「父さん、落ち着いてよ」

「お、落ち着いていられるものかっ!」

「流石の私でも混乱しているわぁ…」

母さんを頭を抱えてしまっている。
これまた厄介なことになってしまったようです。
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