皇太子の溺愛

にゃこにゃこ

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 私は気付けば、街にいた。
 確かにカルに部屋に運んでもらって、リムと一緒に寝てたはず。それに街は暗くて、夜になっていた。
──会いたい。どこにいるのだ。
 誰の声? と思ってたら、どうやら目の前の人が発した声のようだった。真っ黒なマントで全身を身に包み、フードを深く被っていて顔が見えない。
 ・・・・・・ん? 真っ黒で顔が見えない?
 「不審者!?」
──許さぬ。奴らだけは・・・・・・!
 途端、景色はパッと切り替わって、漆黒の竜が空を飛んでいる様子が映し出された。食べれる! と思って、思わず叫んでしまった。
「きゃぁぁ!?」
 飛び起きると・・・・・・目の前には、突然のことに腰を抜かしている皇帝陛下、固まっているシアンとカル、そして隣には心配そうに見つめているリムがいた。
 ごめんなさい、皇帝陛下。ビックリ系に弱いんでしたね。
「あ、え、あの、皇帝陛下、大丈夫ですか?」
「いや、少しびっくりしただけだ。それよりも具合が悪いと聞いて来てみたんだけど・・・・・・」
 運悪く、私が叫んで飛び起きてしまったと。
「悪夢でも見たのか?」
「まぁ、うん・・・・・・」
 夢に驚いて起きてしまう私って・・・・・・。
 シアンはマントを私にかけてくれて、カルに医者を連れてくるように命じた。
「大袈裟じゃない?」
「シェリねぇ、め!」
 リムにまで心配されてるのは、ちょっと申し訳ない。
「ごめんね、リム。心配してくれありがとう。・・・・・・え、もう夜!?」
 リムを抱き上げる時に見えた窓の景色は、星空が広がり月明かりで街が照らされていた。
「よく寝てたから起こさなかったよ。カルが無理して人型を保ってるから、医者を呼んだあとは竜体に戻るように言ってある」
 そうなんだ。基本カルは緊急事態のために無理をすることがないから、相当心配かけちゃってたんだな。
 でも、カルに少し聞きたいことがあったから、後でカルの小屋に行ってみよう。
「ご心配おかけしました」
「疲れてたんだろう。仕方ないさ」
 皇帝陛下が私の頭を優しく撫でると、扉がノックされ、医者が入ってきた。しかし呼びに行ったはずのカルは既に戻ったのか、その姿は見えない。
 医者の簡単な診察が終わり、お次は侍従さんが持ってきた夜ご飯を頂くことにした。
 皇帝陛下はまだお仕事が残っているそうで、侍従さんと共に部屋を後にした。
「シアン、公務は?」
「終わらせてきたが」
 え!? あのシアンが!?
「き、切り上げてきたの間違いじゃない?」
「シェリーがいないとやる気がなくてな。公務に八つ当たりしてきた」
 なんというやる気、皇帝陛下私はいない方がいいかもしれません。あ、でも公務に八つ当たりって、まさか側近さんにも八つ当たりしてないよね?
 やってそうで怖い。
「シェリねぇ、リムも! ちょとだけ!」
 ご飯を見ていたらお腹が空いたのか、まだまだ食べ盛りのリムがご飯をねだってきた。このおねだりがまた可愛いことこの上ないの。
 本当はカルに許可とか取った方がいいんだろうけど、内緒でご飯を分けてあげた。
「おい幼竜、シェリーのだぞ」
「へんたい、べー!」
 私の手から食べているのが気に食わなかったらしいシアンが文句を言うものの、リムは舌を出してシアンを煽り、対抗する。シアンも大人気ないなぁ。
「はいはい、喧嘩しないの。リムもシアンや皇帝陛下が美味しいご飯を用意してくれてるんだよ?」
「あい、シェリねぇごめなさい」
「うん、いい子」
 シアンと違って、素直すぎて、純粋すぎて泣けてくる。
 私は少し遅めの夜ご飯を食べ終わった頃、執事長さんが慌てたように部屋の中に、しかもノックなしに入ってきた。執事長さんは真面目だから、ノックなしに入ってくるなんてことは普通ない。
 シアンもそれをわかっているからこそ、身構えた。
「どうした?」
「キグリフ国の国王が何者かに殺害、その王子も重症を負いました!」
「護衛兵は何をしている!?」
「申し訳ございません。原因は、未だに分かっておりません!」
 突然の報告に、私たちは唖然とした。
 今日逃げ延びて来たばかりなのに、一体誰が? あまりにも早すぎる。
「カルを呼べ、城の周りの警備を任せろ
「わ、私、カルに伝えてくる!」
「待てシェリー!」
 部屋を飛び出そうとした私を、シアンが抱きとめた。
「お前に何かあったら俺は・・・・・・」
「ならシアンも付いてきて。ね、それならいいでしょう?」
 カルには、聞きたいことがある。だから、伝言も兼ねてカルの所へどうしても行きたい。それにリムだって、カルを心配しているようでソワソワしている。
「本当に、お前は勇敢だな。分かった、ただ俺の傍から離れるなよ?」
「大丈夫、約束するから。リムもおいで」
「あい!」
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