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獣
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その国では、獣が裁きを下す。
獣といっても、二本の足で立ち、見た目も人に近く、衣を纏い、言葉を話す。
しかし――
その目は、白い布に覆われていた。
裁判のたびに獣は、天秤を手に現れる。
片方には、証拠。
もう片方には、反証。
正義や悪といった言葉は、一切、口にしない。
ただ、重さだけを見て、淡々と判決を言い渡す。
「何故、奴を放免するのですか!」
ある日、一人の男が訴え出た。
「私は娘を殺された。だが、奴は無罪となった。証拠が足りないからと……」
獣は、瞳のない顔で、静かに答える。
「証拠は軽かった。それだけだ」
「正義はどこにある! この国に、正義はないのか!」
獣は、しばらく沈黙した後、こう言った。
「この天秤は、正義のためにあるのではない。法律のためにあるのだ」
その声は冷たく、何の感情の色も見えない。
「……そんなものは、間違っている……!」
男は、怒りに満ちた顔で、振り絞るように言った。
だが獣は、その言葉にも動じず、ゆっくりと背を向けた。
「では、君が正義を担えばいい。私は、法律を担う」
そう言って、天秤の獣は消えた。
正義を語るには、裁く力が要る――
その事実が、男の怒りを形に変えた。
以来、男は、裁判所に立ち続けている。
左手には、天秤。
右手には、血に濡れた剣。
そして、目隠し。
多くの民に支持された、その姿は、獣そのものだった。
獣といっても、二本の足で立ち、見た目も人に近く、衣を纏い、言葉を話す。
しかし――
その目は、白い布に覆われていた。
裁判のたびに獣は、天秤を手に現れる。
片方には、証拠。
もう片方には、反証。
正義や悪といった言葉は、一切、口にしない。
ただ、重さだけを見て、淡々と判決を言い渡す。
「何故、奴を放免するのですか!」
ある日、一人の男が訴え出た。
「私は娘を殺された。だが、奴は無罪となった。証拠が足りないからと……」
獣は、瞳のない顔で、静かに答える。
「証拠は軽かった。それだけだ」
「正義はどこにある! この国に、正義はないのか!」
獣は、しばらく沈黙した後、こう言った。
「この天秤は、正義のためにあるのではない。法律のためにあるのだ」
その声は冷たく、何の感情の色も見えない。
「……そんなものは、間違っている……!」
男は、怒りに満ちた顔で、振り絞るように言った。
だが獣は、その言葉にも動じず、ゆっくりと背を向けた。
「では、君が正義を担えばいい。私は、法律を担う」
そう言って、天秤の獣は消えた。
正義を語るには、裁く力が要る――
その事実が、男の怒りを形に変えた。
以来、男は、裁判所に立ち続けている。
左手には、天秤。
右手には、血に濡れた剣。
そして、目隠し。
多くの民に支持された、その姿は、獣そのものだった。
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