異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
98 / 98
第四章 森の精霊

第98話 怨念のティターンズ神

しおりを挟む
アマト、ルダル、ルノア、そしてエメルダが、森の中央広場へ入ってきた魔獣の元へ辿り着いていた。

その魔獣は、不思議と攻撃も破壊行為もせずに、ただ立ち尽くしている。

「やっぱり、これまでの魔獣やつらと威圧感が違いすぎない?」

ルノアが、魔獣を見上げながら呟いた。

「確かに……妙な不気味さがあるな」

エメルダもルノアの言葉に同意した。

「気を抜くなよ。二人とも。これまでのようには行かない感じだ」

ルダルが、二人に声をかけた。

アマトは、ただ魔獣を見上げている。

巨大な体躯。

だが筋肉の盛り上がりよりも目を引くのは、その“目”だった。

赤く濁っているはずの瞳が、妙に澄んでいる。

「……こいつ、見てるぞ」

アマトが低く呟いた。

「オレたちを?」

ルノアが眉をひそめる。

「俺たちを、じゃない……」

アマトが魔獣の眼を睨めつける。

「俺を見てる」

その瞬間だった。

ゴォォォォ……

地面が震えた。

魔獣の喉の奥から、低く、重い音が響く。

それは咆哮というより――言葉になり損ねた怨念だった。

「……に……く……い……」

空気が凍る。

「「「「!?」」」」

魔獣の発声に四人が驚く。

「こいつ……今、喋った!?」

ルノアが目を見開いた。

再び、魔獣の声が漏れる。

「ゼウス……憎い……」

アマトの表情も変わった。

「ゼウスだと!?」

魔獣の瞳が、ぎらりと光る。

そして――

「異端……異端の者……許さぬ……」

その視線が、真っ直ぐアマトへ突き刺さった。

ドンッ!

魔獣が一歩踏み出しただけで、衝撃が走る。

グオォォォーーー?

魔獣は咆哮をあげると、右手を高く掲げ、次の瞬間には、その手をアマトに振り下ろしていた。

ドカーン!

魔獣の鋭い爪がアマトのいた場所の地面一帯を吹き飛ばした。

しかし、アマトはその前に上空へ飛び上がってた。

「こいつ、明らかに俺を狙ってるな」

思わず呟くアマト。

『それに……ゼウスって言ってたよな。前の世界の神話に出てくる神の名前だぞ』

自分の精神世界で呟くアマト。

『あぁ、古の全能の神、ゼウスだ』

アマトの精神空間で大の字に囚われているゼルヴァスが答えた。

『そして、こいつはティターンズだ』

『ティターンズ?』

アマトが反射的に問い直す。

『太古からオリンポス神に敵対していた神々だ。今は、異空間のタルタロスに生息しているはずだが……』

ゼルヴァスが話している間にも、魔獣の爪が、アマトに向かって振り下ろされ続けていた。

それをアマトは、ギリギリで交わしている。

『今までの奴らもタルタロスから来ていると言っていたよな。何か違うのか?』

『今までは、ティターンズ神の細胞から分離した複製体がタルタロスとの回廊を通ってきた、いわば出涸らしだ。だが、こいつは違う。神そのものだ。もっとも、回廊を通ってくる段階でかなり力は削ぎ落とされているはずだがな。それでも油断するな。今までの出涸らしとは次元が違う』

ゼルヴァスが、アマトの眼を介して映し出されるモニターに映る魔獣を凝視しながら言った。

『神か……俺の知っている神は碌なやつじゃないからな』

そうアマトが呟くと、ゼルヴァスの横に座っていたティアマトが頬を膨らませて言った。

『アマトちゃん!今、聞きづてならないこと言わなかった?』

『ふっ。お前のこととは言って……』

アマトが、一瞬気を抜いた時だった。



ボコォォォーン!



衝撃が森を揺らした。

「「アマト様ぁーーー!」」

ルノアとエメルダが絶叫する。



その様子を離れた場所でルーインの治療にあたっていたミィナが静かに見つめていた。

「アマト様……」

彼女の片手に力が入る。



魔獣は、アマトが叩きつけられた穴の前まで歩んでいた。

「クソ!」

ルダルが魔獣を睨む。

「お前たち!あいつはアマト様を狙っている!私たちであいつをアマト様から引き離すぞ!」

「でも、アマト様が!」

泣きそうな顔でルノアが叫ぶ。

「大丈夫だ。アマト様はこんな事でやられるわけねぇ」

エメルダが歯を食いしばり、絞り出すように言った。

「あぁ、その通りだ。だから私たちは今できることをやる」

そう言うと、ルダルは魔獣の背後の空中へ飛んだ。

ルノアは、不安そうに地面の穴を一瞥するも、ルダルと同じように空中へ舞い上がり、魔獣の左前方の位置につけた。

そして、エメルダもまた魔獣の右前方へと飛んだ。

三人は、三方から魔獣を囲むように空中で止まっている。

そんな行動に、魔獣は何の反応も示さず、アマトが沈んでいる穴を見つめ続けていた。

「俺たちは眼中にないってことか……バカにしやがって」

エメルダの声に力が入る。

「お前たち!気を引き締めろ!」

ルダルが叫ぶと、グラントにもらったアイテムの爪を出現させ、空中で構えた。

ルノアとエメルダもそれぞれのアイテムを出して攻撃の態勢をとる。

「行くぞ!」

ルダルの鋭い号令とともに、三人が弾かれたように宙を舞った。

グラントから授かったアイテムが、それぞれの魔力に呼応して輝きを放つ。

ルダルは漆黒の爪で魔獣の首筋を、ルノアは青光りする槍で左脇を、そしてエメルダは赤い光を放つ紋様の棍棒で右肩を攻撃した。

ドカッ、バキィィン!

重い衝撃音が森に響き渡る。

しかし、魔獣の肌にはかすり傷一つ付いていなかった。

それどころか、叩き込んだ感触すら手に伝わってこない。

(……手応えがなさすぎる)

ルダルは攻撃を続けながら、冷徹に観察を続けていた。

肉体に弾かれているのではない。

まるで、攻撃が命中する直前で「何か」に吸い込まれ、霧散しているような感覚。

「ルノア、エメルダ! 一旦引け!」

ルダルが二人に合図を送り、一箇所に集結させる。

「どうしたの!? 攻撃が全然……!」

「あぁ、分かっている。俺が試しにスキルを放つ」

二人が頷き、ルダルの背後に回る。

ルダルは

「狼破《ろうは》」

放たれた狼のごとき青光りの閃光が、一直線に魔獣の背中に穿った――かの様に見えた。

だが、着弾した瞬間、光は火花のように魔獣の体表を滑り、波紋を描きながら全体へと拡散していったのだ。

「……なるほど。身体の周りに、高密度の魔素による防壁を纏っているのか」

ルダルが苦々しく呟いた。

「じゃあ……オレたちの攻撃、届いてすらいなかったっていうこと?」

ルノアの顔から血の気が引く。

「クソッ! どうすればいいんだよ、そんなの!」

エメルダが苛立ちをぶつけるように叫ぶが、ルダルは視線を逸らさない。

「逆を言えば、その魔素の防壁さえ破壊できれば、物理的な攻撃が通る可能性があるということだ。だが……」

ルダルの言葉が途切れた。

これまで石像のように動かなかった魔獣が、ゆっくりと、首を三人のほうへ巡らせたのだ。

「ウ……ル……サ……イ……ハエ……ドモ……」

地響きのような、悍ましい声。

魔獣は鬱陶しそうに右手を高く振りかざした。

「風……破《フウ……ハ》」

短く吐き捨てられた言葉とともに、その手が振り抜かれる。

瞬間、不可視の衝撃波が真空の刃となって大気を断ち切った。

「「「!? 」」」

三人は咄嗟に武器を構え、魔力の盾を展開する。

しかし――

「がはっ……!?」

「きゃああっ!」

魔力の盾ごと吹き飛ばされた三人の体は、そのまま地面にたたきつけられた。

圧倒的な格の違い。

「スキルまで使えるなんて……」
「まじ……で、やべぇな……」

ルノアとエメルダは、朦朧とする意識の中でそれぞれ呟いた。

弱音を吐く二人をよそに、ルダルは魔獣を睨み一人沈黙していた。

そんなルダルの様子を見た魔獣が、不思議と言わんばかりに首をかしげる。

そして――

ドスン、

という地響きと共に、魔獣が彼の方へ歩み始めた。

一歩ごとに死が色濃く、確実に近づく。

だが、その巨躯がルダルを飲み込もうとするほどに、その瞳には鋭い確信が宿り、口角はどこまでも深く、吊り上がっていった――。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。 ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。 「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」 いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。 魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル? いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。  そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。

処理中です...