異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第二章 粗野な者たち ※ギャグ多めです

第22話 和平交渉の裏で語られる二体の魔獣と異世界人

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ポタ村の入り口。その前に、粗野な者たちが、無言で立ちふさがっていた。

――ゴブリン族である。

数日前の記憶を呼び覚ますように、彼らはふたたび村の門前に姿を現したのだ。

農作業の手を止めたスライム族の若者たちが、ざわめきとともに口を開く。

「……また来やがったか」

「今度は、何の用だ……?」

数日前の動揺と騒動――“決闘”の記憶が、村人たちの脳裏をよぎる。

だが今回は、叫び声もなければ、名乗りもない。

ただ無言のまま、彼らはそこに立ち尽くしていた。

その静けさが、むしろ重く――予測のつかぬ、不穏な気配をまとっていた。

一団の中央。棍棒を肩に担いだ長身の女――エメルダが、一歩、前へ出る。

その眼差しは鋭く、沈黙のまま村をじっと見据えていた。

――そこへ。

村の奥から、ゆっくりとゼルミスが姿を現す。

彼は足を止め、エメルダの正面に立つと、まるで旧友にでも語りかけるような柔らかさで言葉を投げかけた。

「これはこれは、エメルダ殿。今日は、何のご用で?……先日のつづき、ですかな?」

その声音には、探りも敵意も一切なかった。

あるのはただ、相手の真意を受け入れる覚悟と、揺るがぬ自信。

エメルダは、ほんのわずかに目を細めると、肩から棍棒を下ろし、足元に静かに立てかけた。

「話がある。今日は……真面目なやつだ」

ゼルミスは頷き、背を向けながら言う。

「そうか。では――話を聞かせてもらおう。こっちじゃ」

エメルダは静かに頷き、そのあとを追って、一歩を踏み出した。

その足取りは、ゆるやかだが確かな重みを帯びていた。

背後には、無言で付き従うゴブリン族の側近たち。誰一人として冗談を口にせず、ただ静かに村の奥へと進んでいく。


――


エメルダたちは、村の中心部にある村役場の会議室に通された。

室内には、中央に重厚な木製の大テーブルが据えられ、片側にはゼルミスをはじめとするスライム族の主要者たちがすでに着席していた。

向かい側には、エメルダと数名のゴブリンたちが並ぶ。その後方の壁際には、ビーノとゴッチの姿もあった。

そして、会議室の扉の外――

そこには、心配そうに立ち尽くすミィナの姿があった。

双方の視線が、静かに交差する。

やがて、場の緊張をやわらげるように、軽いやりとりが交わされた後――

ゼルミスが、改まった口調で本題を切り出した。

「では、エメルダ殿。……お話というのは?」

その問いに、エメルダは静かにうなずき、棍棒を脇に立てかけると、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「……今日は、俺たちゴブリン族と、お前たちスライム族の――和平を結びに来た」

その言葉が会議室に響いた瞬間、空気がわずかに揺れた。

「和平……?」

「本気か……」

「ついこの前まで、魔素を搾りに来てたくせに……」

スライム族側の者たちがざわめく。低く、静かに、しかし疑念と警戒を含んだ声。

だが、その空気を断ち切るように、ゼルミスが穏やかに言い放つ。

「……それは、願ってもない申し出じゃ」

その言葉に、今度はゴブリン側がわずかにざわついた。

思いのほかあっさりと受け入れられたことに、拍子抜けしたような空気が漂う。

エメルダは少しだけ眉をひそめたが、すぐに言葉を継いだ。

「……前回の一件で、あんたらがどういう連中か、少しはわかった。

お前たちは、ただのスライムじゃねぇ。今や、力ある存在だ。

だからこそ、筋を通す必要があると思った」

ゼルミスがうなずきながら、静かに返す。

「ふむ。それでも、わざわざここまで来て、その口で語るというのは……並大抵の決断ではなかったじゃろう」

「まあな。俺も、一応は族長だからな」

そう言ってエメルダがふっと笑みを浮かべたとき、周囲のゴブリンたちにもわずかに安堵の色が差す。

緊張の糸が、ほんの一筋、緩んだ。

そしてゼルミスが席を正し、静かに宣言するように言った。

「では――双方の合意のもと、和平協定に向けて意見のすり合わせを始めるとしようか」

会議室の空気が、ほんの少し柔らかくなった。

かつて火花を散らしたこの村の中心に、今――確かに“対話”の空間が生まれようとしていた。


――


やがて、協定文の草案が一通りまとまり、ゼルミスが口を開いた。

「では、和平協定の調印式は、後日、あらためて行うとしよう。

そのときは、わしらがフィリアの森の恵みでも用意しておくとしようか」

エメルダが、ふっと笑みを浮かべて応じた。

「……それは、楽しみだな。期待してるぜ」

会議室には、一息つくような空気が流れかけたその時、

ゼルミスが、軽く口元に手を添えながら、ふと視線を上げる。

「ところで――もうひとつ、気がかりなことがあってな」

会議室の空気が、わずかに引き締まる。

「魔獣の出現についてじゃ。……実は、先日ポタ村に現れた個体は、二体目だったのじゃ」

「二体目……?」

エメルダが眉を寄せて聞き返す。

ゼルミスはうなずき、静かに言葉を継ぐ。

「最初の一体は、フィリアの森に出現した」

その場の空気が、さらに張り詰める。

「……そもそも、魔獣が魔族界に現れるなど、これまで聞いたことがない。

それが短期間に二体も現れたとなると――これは、明らかに異常な事態じゃ」

エメルダが腕を組み直し、低く尋ねる。

「……一体目は、結局どうなった?」

ゼルミスは頷き、落ち着いた声で答えた。

「我が孫娘が偶然森で遭遇したのじゃが、どこからともなく現れた異世界人の青年が、その魔獣を倒し、孫娘を救ってくれたのじゃ」

「異世界人の青年……?」

エメルダが怪訝な顔を浮かべ、ふと何かを思い出したように目を細めた。

そして――次の瞬間。

「……あの時の、あの男かっ!?」

エメルダが席から勢いよく立ち上がり、興奮した様子で叫んだ。
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