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第21話
しおりを挟む「やはり、か……」
きょとんとするパルルたちを横目に、俺は右手を下ろした。
今日ならば。
時間をおけば。
昨日のは何かの間違いだったのでは。
そういう期待が、少しもなかったわけではないが……
しかし、予想通りの結果ではある。
「お……お師匠さま? いったい……!?」
「勇者スキルが使えない。ステータスにはあるが、発動しないようだ」
「そんな!? ウソでしょう!?」
「見ただろう、今。昨日も同じだった。俺には原因がわからんが……魂色視鏡《ステータスミラー》で確認できる俺の情報が村人であることと、無関係とは思えない」
これはまた前代未聞、とセシエが細い眉をひそめた。
「外から知れるステータスと内面ステータスが違う、というだけならば……万がいち億がいち、ギルドの魂色視鏡《ステータスミラー》とパルル殿の魂色視鏡《ステータスミラー》、どちらにも異状があったという可能性が考えられないでもないでありますが……」
「ああ。スキル発動不能、となれば間違いなく、俺自身の問題だ」
「う~~~む……、いえ! 事はもう少し、複雑であるやもしれません!」
「うん?」
「ご存じでしょうか? あ、いえ、ご存じなわけはありませんでありました。ありませんのにありましたとたまに自分の口調で舌を噛みそうになってしまうでありますが、それはいいとして」
「1人で楽しそうだな、セシエ」
「レジード殿、実はここ何十年も、勇者適性を持った人間の出生が減り続けているのであります」
なんだと?
それは……確かに知らなかった。
いやしかし、
「昔から、滅多にいないぞ? イルケシス家を含め、ごくごく少数の血統以外からは、ほとんど生まれてこない」
「ええ、そう聞いてはいるであります」
「たまにいても、やはり勇者になるために、イルケシスで教育を受けるから……ほとんどはそのとき、イルケシスの名を受けることになる。俺には、それもうらやましかったが」
「お察しするであります……。しかし現状は、そんなレベルではありません」
「なに?」
「自分は正直、天然の勇者を見たのは、レジード殿が初めてであります」
天然の、勇者。
またずいぶんと、こう、なんともいえない表現だが。言いたいことは、まあわかる。
「今の名のある勇者は、誰もが適性戦士や、適性魔法使いのまま、勇者免許を得て勇者と名乗っているであります。もちろん、みな本当の勇気にあふれ、献身的に人間界を支える方々ばかりでありますが……」
「それ、本当ですかあ? セシエさんちゃんさま」
「う……。な、なにを」
「やりたい放題しでかしてる『勇者さま』も多いって、パルルは聞いてますう。お師匠さまにはほんとのことを教えてあげてほしいですう」
「そ、それは……! というか、なんでありますか? さんちゃんさま?」
「あ……、だ、だって。な、なんて呼んだらいいか、わかんなくってえ」
問いつめるかもじもじするか、どっちかにしなさい、パルル。
「さまはないでありましょう……。ま、まあ、パルル殿のおっしゃる通り、現行の勇者制度はとても1枚岩とは言えないであります。しかし、その点が最大の問題というわけでもなく……」
「同感だな。イルケシスの時代にも問題はあった、いいや問題だらけだった。俺はあの家が大嫌いだったしな、はは」
「れ、レジード殿……」
「問題は、なぜ勇者適性の持ち主が生まれなくなっているか、だな。今、何人くらいいるんだ?」
「わからないであります。自分、専門ではありませんので……知っているのはおそらく、勇者学校の関係者……」
なるほど。
イルケシス家にかわり、現在の勇者育成を1手に引き受けている機関ならば、当然か。
「しかし彼らにしても、原因究明には手をこまねいていると思うであります。本当に、まったく人知の及ばぬ現象としか思えないのであります」
「そうだろうな……」
「あとまあ、今はその、平和が長く続いておりますから……。勇者もどきどもの跳梁跋扈もあって、あまり勇者を深く研究しようという世の流れには、なっていないのであります」
よくわかった。
平和なのはなによりだ。
それこそ先人たちが流し続けてきた、血と汗と涙のたまものだろう。
……それがずっと続いていくならば、今のままでも何も問題はないが……
もしも再び、魔界からの侵攻があったならば。『勇者免許』で防ぎきれるのか?
今の俺にはまだ、冷静に判断できない。
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