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第37話
しおりを挟む「これは……、レジードさん、ボードのお答えは?」
「はい。『魔力侵食地の拡充』です」
「左様、お見事です。魔王個々にも理由こそあれど、おおもとはこれだとされておりますな。そも、人間同士の戦争とて、古より土地の奪い合いが目的……魔族も同じということです」
うむ。
醜い、などと言えた義理ではないが、せめて人間のほうを見ないでほしいものだ。
「次です。魔王に対する重要な戦力として、今も昔も勇者がいちばんに考えられる理由は……?」
これは簡単だ。
うむ、あのボードだな。
<リカーニードル>。
「<リカーニードルドルドル>」
「アビエッテさん、3連射はお見事ですが、いけませんぞ。すべて1枚に当てては、意味もございません。ボードのお答えは?」
「なに、これ……『魔力という言葉が悪い』、どういう意味……?」
「私にもわかりません。わかるのは、正解ではないということだけです」
「そう。わたしには答え、わかる」
「ほお! アビエッテさん!」
「勇者だから」
「貴女は本当に我が校3年目の生徒ですか?」
「<リカーニードル>ッ……ど、どる、どる……!」
「シーキーさん、貴女はいい子ですねえ、でもアビエッテさんにお付き合いしなくて良いのですよ。1発は当たりました、はいお答えは?」
「ゆ……『勇者がいちばん強いから』……?」
「うーむなるほど、これはもうこんなボードを作ってしまった、私が悪いということになりましょうな」
それはだいぶ最初からそうだと思うが。
しかし、とモーデンはなぜか微笑み、俺のほうを見たようだった。
「ご勘弁ください。ボードの動きを一定に保つだけでも、老人にはひと仕事でしてな」
ちょうど、俺の放ったスキルが、ボードの1枚に当たって光を散らす。
まさか、とかたくなに教室掃除の手は止めないまま、セシエがつばを飲みこんだ。
「レジード殿、ボードの軌道を見切って……!? 問題が出ると同時に正解を把握、ボードを見つけて、自分のスキル速度とボードの移動間隔を推し測って撃っているでありますか!?」
もちろんだ。
そうするしかないだろう?
勇者の適応度の上げ方、ましてスキルの速度の上げ方など、俺は知らないわけだからな。
「やはりですか……格闘士のスキル、<リングリングテレパス>ですな?」
直立不動を崩さないモーデンが、右手で自分のあごひげをなでた。
「魔力の動きに連なる空間把握能力を、飛躍的に向上させておられますな。ここでそのスキルを選ばれるとは、お見事!」
「恐縮です」
「狙い通りに勇者スキルのタイミングを合わせる腕前もすばらしい。普通に生きては身につきますまい。レジードさん、もしや貴方、前職は格闘士を……?」
「いえ。村人です」
「はあ」
「今も昔も、村人1本です」
すごおい、とシーキーが感心してくれている。
ほめられるのはなんでもうれしいが、これはいまいちピンとこないな。
さっきから、スキルも使わないまま、飛び回るボードをひょいひょい避けながら掃除を続けているやつもここにはいるんだぞ?
「セシエっち。なんか言ったほうがいいと思うですう」
「えっ? な、なんかって、なんですかパルちゃん?」
「お師匠さまのあの目、あれは『やればこいつらにもできる』とか考えてる目ですう。ひとつビシッと言ってやっちゃってください」
「な、なんと! それは違うでありますよ、レジード殿!」
「そうそう」
「2時間ほどはいただかねば、対応できないであります!」
「あ、セシエっちもたいがいヤベエやつだったですう。パルルにはぜったい無理ですう」
そうか? できると思うが……また修行でもするか?
いや。
パルルは俺の前だと、なにかと謙遜しがちだからな。
「狙い撃たれたということで、レジード殿、ボードのお答えは?」
「はい。『スキルが魔力を変質させる』、です」
「左様。これは、正解ですな?」
「はい。さっきは、魔族が魔力に偏っているという話でしたが、人間とて、生きるために微量ながら魔力を必要とします。……そうだな、パルル?」
はえ、とパルルが両目をぱちぱちさせた。
何を求められているのか、数秒把握できずにいたようだが……
見つめるモーデンに、慌てた様子もなくこくこくとうなずく。
「人間界の空中にも、魔力は漂ってますう。魔界や縁魔界に比べればすごく薄いですけど、人間もそれを呼吸して生きてるですから、体内に魔力があるわけですう」
「左様ですな。ことにエルフ族は、魔力を多く体にたくわえることができますが」
「人間の魔法使いさんも、わずかな魔力をすごい技術で補って、強いスキルを使えてとってもすごいですう。ただ勇者はそれに輪を掛けて、魔力がスキルを経由することで『人間の魔力でも魔族の魔力でもない何か』に変化しちゃいますう」
「ええ。その魔力の特徴は?」
「対魔族特効ですう。勇者は人間と戦っても強いけど、魔族と戦うともういろいろとヤベエんですう」
トレビアン、とモーデンが笑顔でうなずいた。
うむ。本当によくできたぞ、パルルよ。
おまえはもっと、自信を持っていいはずなんだ。
たとえハイエルフになっていなかったとしても、F組に似つかわしくない、もっと優秀な勇者候補だと俺は思っているぞ。
「さすがは特A組のパルルさんですね」
その通り。パルルなら特A組にだって、きっと入れる。
そう考えると、確かにあの試験は…………、
なんだと?
副校長、今……特A組と?
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