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第1章 支援術師
第22話
しおりを挟む「無粋なゴブリンどもめ!」
すらりと剣を抜き放ち、ファレンスがマントを翻して構えた。
「タテノスは私の後ろに! いつでも前へ出れるよう準備を!」
「おう!」
「ユミーナは敵の後方を警戒、新手の気配があれば教えろ!」
「わかったよ!」
「ゼルスン、私に支援スキルを! 肉体強化型だ!」
おお。
……おお?
肉体強化型か。
俺の見たところ、このゴブリン相手には……、
いや。
勇者のすることだからな。
なにか考えがあるんだろう。
「わかった」
さて。
ここが重要だぞ。
なにせいちばんの目的は、ダクテムの追放理由を突き止めて、今後の勇者育成に活かすこと。
となれば俺は、ステータス登録会で行った通り……
ダクテムよりも、わずかに上の能力。
そのくらいを示すのがいいだろう。
ファレンスの認識との差が出すぎてもいけない。
慎重に力を調節して……
「<グランド・【タイタン】・アロスメデッサ>」
という、人間の支援職が用いるスキルがある。
声に出して唱えたのはそのスキルだが、本当に発動させてはいない。
前と同じく、そもそも使えん。
効果がそっくりの魔族スキルを、裏で発動させている。
強さもなにもかも同等だが、さて。
お気に召すかどうか?
「うおおおおおおおおっ!!」
剣を振りかざし、ファレンスはゴブリンの群れに突っこんでいった。
手当たり次第に倒してのけている。
相手も棍棒やら短剣やらで武装しているが、まるで問題にしていないようだ。
「ほぼほぼ、1匹1撃で倒していますね」
「ああ」
小声でささやくアリーシャに、彼女のほうは見ないまま答える。
「剣に自信がある、と言うだけのことはあるようだな」
「左様ですね」
「なんてドヤってみたけどごめんなさい、剣は専門外なのでぶっちゃけわかりません」
「謝られましても……。それにゼルスン様にとっては、武具の腕前など些末なことでは」
「そんなことはないぞ? 使えるにこしたことはない。うまいにこしたことはない。そうでなければ、魔王は倒せんからな」
素直な意味でな。
「しかし正直、どうだ? アリーシャ、おまえの目から見て、ファレンスの腕前は?」
「悪くはありません」
「ほん? 手厳しいな」
「さすが勇者、と評するにやぶさかではありませんが、正直これだけで魔王をどうこうできるようなレベルではないかと」
「なるほどなるほど……、って待てよ、それは逆説的にアレか? 世の中、剣技だけで魔王を倒せるような勇者もいる、ってことか?」
「それは…………。いる、とわたしは伝え聞いております」
っほお~~~~~!!
それは知らなかった!
俺もまだまだ勉強不足だなあ。
いかんぞ。ニヤニヤしてしまう。
「ふふふ。なるほどそうか。ふふふふ」
「ゼルスン様……?」
俺が楽しそうなのが不思議なのだろうか。
いぶかしげに眉をひそめるアリーシャに、
『隠してる力が楽しみだ、ってことでしょ~』
マロネの声がアドバイスした。
まあ、うん。
もちろんそれもあるな。
『ダクっちを追放するくらいだから、よっぽどハイレベルな魔王と戦うことも視野に入れてるってことでしょ? そんな勇者が剣技を売りにしてないなら、他になにかあるんでしょーよ』
「まあ……なにかというか、例の必殺パターンでしょうか」
『たぶんね。楽しみだね』
「楽しみ……?」
『そりゃーファレンス氏にも、どんどんばりばり魔王を倒していってもらわなくちゃいけないわけだしさ』
アリーシャが口をつぐんだ。
なにか続けたそうにしているのは明らかだが、じっとこらえている。
ふふ……また口元がゆるんでしまいそうだな。
本当に賢い子だ……
――なぜそうまでして、魔王?
――勇者を育ててまで、闇を弱める意味は?
――この世に闇が多すぎるとて、それで魔王ゼルスに何の不都合が?
そう聞きたいだろうに。
答えが返ってこないのがわかっているから、無駄口は叩かない……
すばらしい自制心だ。
本能ばかりを行動理由にしない。
これもまた、人間のすばらしさのひとつだな。
**********
お読みくださり、ありがとうございます。
次は11/23、19時ごろの更新です。
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